号外06)「水土流失」と砂漠化

 黄土丘陵や山間の急斜面の畑は「三逃(さんとう)の畑」と呼ばれます。雨のたびに水が逃げ、土が逃げ、肥料が逃げるという意味です。収穫が少ないうえに作業が困難で、こういう村が貧しいのは言うまでもありません。毛沢東時代の1960年代、人海戦術で改造に挑みましたが、十分な成果はありませんでした。
 年間降水量は400ミリほどですが、3分の2が夏の一時期に集中し、局地的に短時間、豪雨が降ります。1時間70ミリの雨を、私も何度か体験しました。植生の乏しい土地を雨がたたくと、表土が流されます。中国では「水土流失」と呼びます。
 黄土には水にもろい性質があり、乾くと固くてスコップの刃も役に立たないのに、少しでも水が混じると、軟らかい糊のようになって流れるのです。
 「水土流失」が続くと、土壌が劣化して、作物や植物が育たなくなります。これが黄土高原における砂漠化です。砂漠化というと普通は雨のないことで、それも事実なのですが、黄土高原では雨が砂漠化を加速するという皮肉な現象があります。
 そんな話を聞いても「雨で流れる土なんて…」といって、みなさんは笑うことでしょう。でも中国政府の発表によると、黄河に流れ込む土は年間16億トンで、その80パーセント以上が黄土高原の土だそうです。16億トンの土で幅1メートル高さ1メートルの堤防を築くと、延長は100万キロを超え、赤道を27周する計算になります。それが毎年のこと! 大陸の環境問題は島国の私たちの想像を超えています。
【写真】夏の一時期に集中する雨が「水土流失」を引き起こす。土がやせ、砂漠化の原因となる。
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