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連句通信 121号2008年1月5日発行
老いのひとりごと 峯田 政志
今年はおどる国文祭阿波の国でした。連句の吟行会では鳴門海峡に行っても渦潮は見ることが出来ず残念。タイミングが悪かったそうで。でも阿波踊りは参加者みんなで踊り本当にお祭り気分に浸った。個としての気分が溶けて衆の心になりきり、感動を共有できたと感じました。
とりわけ面白かったのは記念講演会の高橋睦郎氏の、擬三吟という試みでした。連句は座の文芸、複数の人間が集まらなければ不成立の筈が、作家の発想では自分が複数の人間になりきれば良しとのことだ。困ったときとか、なかなか都合のつかないときは、脳の中まで他者になりきり、創作ドラマの世界を楽しめ、というのだ。
退屈な行事があった。受賞能力のない私にとって表彰式ほどうんざりする時間はない。でも、賞には賞の役割があるようだ。選者は十二人だったが、それそれ各人に持ち点が配布され、選句に点が与えられたそうだ。何か連想する言葉がありますが、お金と名誉はやはり魅力あるようですなあ。韓国でも格差問題が浮上しているようだが、原油に恵まれたロシアでは、億万長者がぞくぞく輩出しているそうで、所詮は個の優越こそ万人の求めるところのようだ。
その点、連句は座の文芸として喜びの共有という格別な楽しみがある。勿論、連句の座でも自己主張ばかり際立つ連衆が居ないとは言えない。座の喜びに乗り損ねて孤立の寂しさを味わう羽目に陥る場合が皆無とは言えない。しかし、私にとっては、連句での感動の共有と個の一瞬かもしれないが融解して複数化を実感できるのが何よりの楽しみである。
先日、シニア仲間と小田原や三島をうろついたが、三島の楽寿園の小松宮親王の別邸の豪華さには驚いた。徳島の帰りに小豆島で「二十四の瞳」の、お粗末な分教場を見たばかりだったので、しみじみ昔の日本の格差社会に思いをはせた。権力者との関係の持ち方の難しさ、小田原の尊徳記念館では二宮金次郎の苦闘の生涯に痛感させられた。
生きることの奥深さ、今では個としては路上の雑草に過ぎない私ですが、スマップじゃないけど、この世にひとつだけの花には違いないと思って連句を頼りに毎日を過ごしています。
2007年11月 記
二句表「多摩川」
多摩川の曲がる流れや鰯雲 おおた六魚
落ち鮎釣りの開く弁当 古賀直子
ウ
リンゴ狩子らの歓声聞こえ来て 藤尾 薫
ネオンライトを睨む弓張 峯田政志
久し振り昔の仲間と痛飲し 梅田 實
二重回しの祖父の俤 玉木 祐
薩長と云へば明治の雪が降り 六魚
待ちて嬉しい名画座の前 直子
ナオ
忍び逢ひもう止めましょう痩せすぎた 政志
仕事精出す海外出張 薫
バザールにコーラン流れ夏の蝶 祐
通路の椅子で氷水のむ 實
九回目投手直球本塁打 直子
わっと喜ぶBIG当籤 六魚
ナウ
咲く花も雨と風とに育てられ 政志
衣冠はゆれて曲水の宴 薫
2007年10月21日 於関戸公民館
二句表「魔女」
ハロウィンの魔女眠りいる背中かな 直子
月はまんまる流れ行く雲 實
ウ
東京の島に秋来る信号機 祐
止まる児どもの影のゆらゆら 六魚
飲み過ぎの反省をして猿の真似 直子
万歳が来るおひねり用意 薫
其のかみの吉原偲ぶ初衣桁 政志
焼けぼっくいに火がまたついて 實
ナオ
消壷の肌滑らかを賞でている 六魚
カラオケの詞地で行くあなた 薫
夏のスパ八割がたは老人で 政志
騙絵のよう月に赤富士 祐
北斎の絶筆を見る小布施郷 薫
てぐすね引いてオークション待つ 直子
ナウ
神殿の玉楼に散る花の夢 六魚
亀の看経遠くはるかに 實
2007年10月21日於関戸公民館ワークショップルーム
二句表 「燈火の巷」膝送り
晩秋の風に燈火のつく巷 玉木 祐
鯊を何匹揚げる黒鍋 おおた六魚
ウラ
残菊の宴あるじは月詠みて 古賀 直子
昔の映画くりかえし見る 藤尾 薫
ボクサーも国技も品位落ち始め 峯田 政志
日本海にも冬が訪れ 梅田 實
真冬日の拉致の子思い講演会 祐
緯度も軽度も白地図に書く 六魚
ナオ
相愛の北国めざし逃避行 薫
私今夜はシンデレラなの 直子
海亀に月見しながら龍宮へ 實
千の風へと呆け誘いだし 政志
人の世は老いも若きも欲だらけ 六魚
平等と言う仕事させられ 祐
ナウ
拍子とりおかめひょとこ花の舞 薫
ふるさとは今淡雪の頃 直子
2007年10月21日 於 関戸公民館
表合せ「晴れた日」
晴れた日のこの昼下がり秋惜しむ 六魚
渡り鳥ゆく夕月の影 薫
もう誰も弾かぬオルガン拭きあげて 直子
濃き紅を買ひおいらくの恋 和子
そのままにあら失礼と飲み分ける 統一
しらじら明ける夢の浮き橋 六魚
たなびきて笙篳篥の花の舞 薫
一汁一菜目刺こんがり 直子
表合せ「そぞろ歩き」
川岸のそぞろ歩きや秋深し 薫
あきつ群れ飛ぶ山の端に月 直子
縁先にすすきくりいも友待ちて 和子
カレーたっぷりじっくり煮込む 統一
この味と肌に馴染んで過ぎし日々 六魚
馬は人を選ぶというわ 薫
こもかぶり乗せて引き出す花車 直子
春の潮に赤き貝殻 和子
2007年11月3日 永山公民館
表合せ「菊薫る」
昭和もはや遠くなりけり菊薫る 和子
水音かすか柿の実に月 統一
新幹線見るまに故郷消え去りて 六魚
夢でよかった涙止まらず 薫
階段を上る足音きっと彼 直子
振り込め詐欺に騙されたふり 和子
老いらくの来る道閉ざせ花吹雪 統一
鐘の供養じゃ呑む般若湯 六魚
表合せ「母の忌を」
母の忌を忘れていたり木の実落つ 直子
清貧生活炊く零余子飯 薫
月の客パウンドケーキ切り分けて 和子
散歩の犬がふと立ち止まり 統一
断崖に遠き海鳴りこだまする 六魚
チャタレイ夫人の心地して待つ 薫
しっぽりと濡れて行こうか花の山 和子
一筆啓上頬白の啼く 統一
2007年11月3日 於永山公民館学習室
二十韻「しめいわい」膝送り
おめかしの児に青空や七五三祝 和子
駅より続く冬薔薇の列 統一
ジャズ喫茶サンドイッチマンと語りいて 政志
スター並んで初演挨拶 禎子
ウラ
船べりに光るさざ波月賞でる 薫
葡萄酒醸しつける君の名 直子
秋爽やか彼女の愛に酔い痴れて 政志
見知らぬ街を二人さまよう 明子
白地図に書き込む国を赤くぬる 祐
竜飛岬に風は穏やか 和子
ナオ
追いかけて蛍前線今盛り 一
ビール呷りつ仰ぐ三日月 志
引きこもりネットネットのマニアです 禎
電車男の映画とりもち 薫
早々と消した灯りに衣ずれが 直
棚で揺れてる木目込人形 實
ナウ
誕生会ふるさとみやげ披露して 明
ガールスカウト麗らかにゆく 祐
翁さび草原万里花に寝る 一
峠の茶屋で茶飯おかわり 和
2007年11月18日於 関戸公民館学習室
二十韻「炉話」
炉話に友欲し夜や一人酌む 薫
テレビ画面に鶴渡る声 直子
ハイチーズみんなすましてポーズして 實
指輪光らせ変えるよそおい 明子
ウ
時計より姫の出てくる子望月 祐
べったら市はおててつないで 和子
宵の秋出来ちゃった婚も淑やかに 統一
まだ捨て切れぬ俤もあり 政志
ロックかけ追い越し車線ぶっ飛ばし 禎子
湘南海岸波は穏やか 薫
ナオ
腹当てにちょいと挟んだ宝籤 直子
のぼる夕月団扇かざして 實
隅田川清輝の美女のひっそりと 明子
ジュリエット像乳房撫でられ 祐
招き猫にらめっこする四畳半 和子
供に添い寝の起き上がり小坊師 統一
ナウ
老いて尚祖父はヒマラヤめざし居て 政志
おぼろおぼろの夢の世の中 禎子
釣り竿の先に銀鱗花の下 直子
めかぶとろろに打つ舌鼓 執筆
2007年11月18日 於 関戸公民館学習室
二十韻「さざんか」
さざんかの白にひとすじ紅の線 古谷禎子
移ろいの季と思う短日 玉木 祐
気に入りの帽子似合うとほめられて 杉浦和子
カレーライスをたっぷりおごる 坂本統一
ウ
マネキンの見つめいる窓照らす月 古賀直子
吐息のようなつづれさせさせ 梅田 實
新婚の関取またも勝相撲 峯田政志
ゆうべのことば想い出してる 藤尾 薫
今まさに虎穴に入った消費税 統一
ひとの生活議論百出 明子
ナオ
大刀自のちんまり鎮座夏羽織 直子
影踏み遊び月の涼しき 禎子
雀から重い葛籠をもらいうけ 薫
高収入で彼はハンサム 明子
泥酔をしては私を口説きます 實
姐御の鞭は何よりも利く 政志
ナウ
ジュリエット像の佇ちたる古き街 祐
紙飛行機は春風にとぶ 和子
回し呑む花の散りこむ大杯に 政志
九州男児集うどんたく 執筆
2007年11月18日於 於 関戸公民館学習室
二十韻「霰酒」
五年後は千の風かも霰酒 政志
囲炉裏開きに招く宗匠 實
つきあいも用心深く考えて 祐
積んどく本で抜けた床板 直子
ウ
尖塔にぽっかり浮かぶ月今宵 明子
西鶴記には習う付け文 六魚
歌舞伎町追われて遊女そぞろ寒 志
別れられない流連の客 實
ソプラノの吟詠詩人出演(でる)舞台 祐
ワインの眠る樽の数々 直
ナオ
驟雨来て喫水線のゆれる船 明
宝島読むすててこの月 六
もてなしも出てきた腹を気にしつつ 實
ウインクするときいょー口癖 志
気障な奴幼稚園からストーカー 直
とうとう蹴って猫にあたって 祐
ナオ
僧衣脱ぎ鳥獣戯画にもぐりこむ 六
娘集まり針供養する 明
外国の言葉もまじる花衣 實
なよ竹めぐる黄蝶白蝶 執筆
2007年12月1日 於 関戸公民館
二十韻「母の声」
母の忌や母の声とも帰り咲き 古賀直子
庭の枯芝落ちる鳥影 おおた六魚
遠くより謡の渋く流れ来て 星 明子
墨痕淋漓便り難解 玉木 祐
ウ
石投げて千々に砕ける月の形 峯田政志
りんごむきつつ想い打ちあけ 梅田 實
呼び出してうんと言わせて竜田姫 祐
夢より覚めて今塀の中 直子
増刷の「泥棒日記」懐かしき 六魚
ノートルダムは今も華やか 政志
ナオ
夏の夜朴歯で歩くインクライン 明子
復刻麦酒月の屋台で 直子
群れている奇兵隊士のお兄さん 六魚
グレタガルボはヒール脱ぎ捨て 祐
後髪哀愁おびた唄声に 實
あの夜の睦言忘れられない 政志
ナウ
はるかなる南の国の星の数 六魚
白魚漁の舟を漕ぎ出す 直子
花吹雪波にも背にも降り散りぬ 實
農暦繰り種浸す頃 明子
2007年12月1日 於 関戸公民館
老いのひとりごと 峯田 政志
今年はおどる国文祭阿波の国でした。連句の吟行会では鳴門海峡に行っても渦潮は見ることが出来ず残念。タイミングが悪かったそうで。でも阿波踊りは参加者みんなで踊り本当にお祭り気分に浸った。個としての気分が溶けて衆の心になりきり、感動を共有できたと感じました。
とりわけ面白かったのは記念講演会の高橋睦郎氏の、擬三吟という試みでした。連句は座の文芸、複数の人間が集まらなければ不成立の筈が、作家の発想では自分が複数の人間になりきれば良しとのことだ。困ったときとか、なかなか都合のつかないときは、脳の中まで他者になりきり、創作ドラマの世界を楽しめ、というのだ。
退屈な行事があった。受賞能力のない私にとって表彰式ほどうんざりする時間はない。でも、賞には賞の役割があるようだ。選者は十二人だったが、それそれ各人に持ち点が配布され、選句に点が与えられたそうだ。何か連想する言葉がありますが、お金と名誉はやはり魅力あるようですなあ。韓国でも格差問題が浮上しているようだが、原油に恵まれたロシアでは、億万長者がぞくぞく輩出しているそうで、所詮は個の優越こそ万人の求めるところのようだ。
その点、連句は座の文芸として喜びの共有という格別な楽しみがある。勿論、連句の座でも自己主張ばかり際立つ連衆が居ないとは言えない。座の喜びに乗り損ねて孤立の寂しさを味わう羽目に陥る場合が皆無とは言えない。しかし、私にとっては、連句での感動の共有と個の一瞬かもしれないが融解して複数化を実感できるのが何よりの楽しみである。
先日、シニア仲間と小田原や三島をうろついたが、三島の楽寿園の小松宮親王の別邸の豪華さには驚いた。徳島の帰りに小豆島で「二十四の瞳」の、お粗末な分教場を見たばかりだったので、しみじみ昔の日本の格差社会に思いをはせた。権力者との関係の持ち方の難しさ、小田原の尊徳記念館では二宮金次郎の苦闘の生涯に痛感させられた。
生きることの奥深さ、今では個としては路上の雑草に過ぎない私ですが、スマップじゃないけど、この世にひとつだけの花には違いないと思って連句を頼りに毎日を過ごしています。
2007年11月 記
二句表「多摩川」
多摩川の曲がる流れや鰯雲 おおた六魚
落ち鮎釣りの開く弁当 古賀直子
ウ
リンゴ狩子らの歓声聞こえ来て 藤尾 薫
ネオンライトを睨む弓張 峯田政志
久し振り昔の仲間と痛飲し 梅田 實
二重回しの祖父の俤 玉木 祐
薩長と云へば明治の雪が降り 六魚
待ちて嬉しい名画座の前 直子
ナオ
忍び逢ひもう止めましょう痩せすぎた 政志
仕事精出す海外出張 薫
バザールにコーラン流れ夏の蝶 祐
通路の椅子で氷水のむ 實
九回目投手直球本塁打 直子
わっと喜ぶBIG当籤 六魚
ナウ
咲く花も雨と風とに育てられ 政志
衣冠はゆれて曲水の宴 薫
2007年10月21日 於関戸公民館
二句表「魔女」
ハロウィンの魔女眠りいる背中かな 直子
月はまんまる流れ行く雲 實
ウ
東京の島に秋来る信号機 祐
止まる児どもの影のゆらゆら 六魚
飲み過ぎの反省をして猿の真似 直子
万歳が来るおひねり用意 薫
其のかみの吉原偲ぶ初衣桁 政志
焼けぼっくいに火がまたついて 實
ナオ
消壷の肌滑らかを賞でている 六魚
カラオケの詞地で行くあなた 薫
夏のスパ八割がたは老人で 政志
騙絵のよう月に赤富士 祐
北斎の絶筆を見る小布施郷 薫
てぐすね引いてオークション待つ 直子
ナウ
神殿の玉楼に散る花の夢 六魚
亀の看経遠くはるかに 實
2007年10月21日於関戸公民館ワークショップルーム
二句表 「燈火の巷」膝送り
晩秋の風に燈火のつく巷 玉木 祐
鯊を何匹揚げる黒鍋 おおた六魚
ウラ
残菊の宴あるじは月詠みて 古賀 直子
昔の映画くりかえし見る 藤尾 薫
ボクサーも国技も品位落ち始め 峯田 政志
日本海にも冬が訪れ 梅田 實
真冬日の拉致の子思い講演会 祐
緯度も軽度も白地図に書く 六魚
ナオ
相愛の北国めざし逃避行 薫
私今夜はシンデレラなの 直子
海亀に月見しながら龍宮へ 實
千の風へと呆け誘いだし 政志
人の世は老いも若きも欲だらけ 六魚
平等と言う仕事させられ 祐
ナウ
拍子とりおかめひょとこ花の舞 薫
ふるさとは今淡雪の頃 直子
2007年10月21日 於 関戸公民館
表合せ「晴れた日」
晴れた日のこの昼下がり秋惜しむ 六魚
渡り鳥ゆく夕月の影 薫
もう誰も弾かぬオルガン拭きあげて 直子
濃き紅を買ひおいらくの恋 和子
そのままにあら失礼と飲み分ける 統一
しらじら明ける夢の浮き橋 六魚
たなびきて笙篳篥の花の舞 薫
一汁一菜目刺こんがり 直子
表合せ「そぞろ歩き」
川岸のそぞろ歩きや秋深し 薫
あきつ群れ飛ぶ山の端に月 直子
縁先にすすきくりいも友待ちて 和子
カレーたっぷりじっくり煮込む 統一
この味と肌に馴染んで過ぎし日々 六魚
馬は人を選ぶというわ 薫
こもかぶり乗せて引き出す花車 直子
春の潮に赤き貝殻 和子
2007年11月3日 永山公民館
表合せ「菊薫る」
昭和もはや遠くなりけり菊薫る 和子
水音かすか柿の実に月 統一
新幹線見るまに故郷消え去りて 六魚
夢でよかった涙止まらず 薫
階段を上る足音きっと彼 直子
振り込め詐欺に騙されたふり 和子
老いらくの来る道閉ざせ花吹雪 統一
鐘の供養じゃ呑む般若湯 六魚
表合せ「母の忌を」
母の忌を忘れていたり木の実落つ 直子
清貧生活炊く零余子飯 薫
月の客パウンドケーキ切り分けて 和子
散歩の犬がふと立ち止まり 統一
断崖に遠き海鳴りこだまする 六魚
チャタレイ夫人の心地して待つ 薫
しっぽりと濡れて行こうか花の山 和子
一筆啓上頬白の啼く 統一
2007年11月3日 於永山公民館学習室
二十韻「しめいわい」膝送り
おめかしの児に青空や七五三祝 和子
駅より続く冬薔薇の列 統一
ジャズ喫茶サンドイッチマンと語りいて 政志
スター並んで初演挨拶 禎子
ウラ
船べりに光るさざ波月賞でる 薫
葡萄酒醸しつける君の名 直子
秋爽やか彼女の愛に酔い痴れて 政志
見知らぬ街を二人さまよう 明子
白地図に書き込む国を赤くぬる 祐
竜飛岬に風は穏やか 和子
ナオ
追いかけて蛍前線今盛り 一
ビール呷りつ仰ぐ三日月 志
引きこもりネットネットのマニアです 禎
電車男の映画とりもち 薫
早々と消した灯りに衣ずれが 直
棚で揺れてる木目込人形 實
ナウ
誕生会ふるさとみやげ披露して 明
ガールスカウト麗らかにゆく 祐
翁さび草原万里花に寝る 一
峠の茶屋で茶飯おかわり 和
2007年11月18日於 関戸公民館学習室
二十韻「炉話」
炉話に友欲し夜や一人酌む 薫
テレビ画面に鶴渡る声 直子
ハイチーズみんなすましてポーズして 實
指輪光らせ変えるよそおい 明子
ウ
時計より姫の出てくる子望月 祐
べったら市はおててつないで 和子
宵の秋出来ちゃった婚も淑やかに 統一
まだ捨て切れぬ俤もあり 政志
ロックかけ追い越し車線ぶっ飛ばし 禎子
湘南海岸波は穏やか 薫
ナオ
腹当てにちょいと挟んだ宝籤 直子
のぼる夕月団扇かざして 實
隅田川清輝の美女のひっそりと 明子
ジュリエット像乳房撫でられ 祐
招き猫にらめっこする四畳半 和子
供に添い寝の起き上がり小坊師 統一
ナウ
老いて尚祖父はヒマラヤめざし居て 政志
おぼろおぼろの夢の世の中 禎子
釣り竿の先に銀鱗花の下 直子
めかぶとろろに打つ舌鼓 執筆
2007年11月18日 於 関戸公民館学習室
二十韻「さざんか」
さざんかの白にひとすじ紅の線 古谷禎子
移ろいの季と思う短日 玉木 祐
気に入りの帽子似合うとほめられて 杉浦和子
カレーライスをたっぷりおごる 坂本統一
ウ
マネキンの見つめいる窓照らす月 古賀直子
吐息のようなつづれさせさせ 梅田 實
新婚の関取またも勝相撲 峯田政志
ゆうべのことば想い出してる 藤尾 薫
今まさに虎穴に入った消費税 統一
ひとの生活議論百出 明子
ナオ
大刀自のちんまり鎮座夏羽織 直子
影踏み遊び月の涼しき 禎子
雀から重い葛籠をもらいうけ 薫
高収入で彼はハンサム 明子
泥酔をしては私を口説きます 實
姐御の鞭は何よりも利く 政志
ナウ
ジュリエット像の佇ちたる古き街 祐
紙飛行機は春風にとぶ 和子
回し呑む花の散りこむ大杯に 政志
九州男児集うどんたく 執筆
2007年11月18日於 於 関戸公民館学習室
二十韻「霰酒」
五年後は千の風かも霰酒 政志
囲炉裏開きに招く宗匠 實
つきあいも用心深く考えて 祐
積んどく本で抜けた床板 直子
ウ
尖塔にぽっかり浮かぶ月今宵 明子
西鶴記には習う付け文 六魚
歌舞伎町追われて遊女そぞろ寒 志
別れられない流連の客 實
ソプラノの吟詠詩人出演(でる)舞台 祐
ワインの眠る樽の数々 直
ナオ
驟雨来て喫水線のゆれる船 明
宝島読むすててこの月 六
もてなしも出てきた腹を気にしつつ 實
ウインクするときいょー口癖 志
気障な奴幼稚園からストーカー 直
とうとう蹴って猫にあたって 祐
ナオ
僧衣脱ぎ鳥獣戯画にもぐりこむ 六
娘集まり針供養する 明
外国の言葉もまじる花衣 實
なよ竹めぐる黄蝶白蝶 執筆
2007年12月1日 於 関戸公民館
二十韻「母の声」
母の忌や母の声とも帰り咲き 古賀直子
庭の枯芝落ちる鳥影 おおた六魚
遠くより謡の渋く流れ来て 星 明子
墨痕淋漓便り難解 玉木 祐
ウ
石投げて千々に砕ける月の形 峯田政志
りんごむきつつ想い打ちあけ 梅田 實
呼び出してうんと言わせて竜田姫 祐
夢より覚めて今塀の中 直子
増刷の「泥棒日記」懐かしき 六魚
ノートルダムは今も華やか 政志
ナオ
夏の夜朴歯で歩くインクライン 明子
復刻麦酒月の屋台で 直子
群れている奇兵隊士のお兄さん 六魚
グレタガルボはヒール脱ぎ捨て 祐
後髪哀愁おびた唄声に 實
あの夜の睦言忘れられない 政志
ナウ
はるかなる南の国の星の数 六魚
白魚漁の舟を漕ぎ出す 直子
花吹雪波にも背にも降り散りぬ 實
農暦繰り種浸す頃 明子
2007年12月1日 於 関戸公民館