連句通信110号
2006年9月17日発行
思いつくままに 梅田 實
約十年前会社の先輩から、奥さんが連句の宗匠になったから弟子入りしないかと誘われたのが始りで、先ず文韻をぼちぼち三回程やった時、「やる気があるなら新宿の朝日カルチャーセンターの講座に行ったらどう」。と言われ、その気になって四年通いそれから連句を止められなくなって、今以って連句を続けている次第です。
私の場合連句は人との交流の大切な時間と思い、通っていますので、前もって準備などした事は無く、出勝ちの場合はその場で考えて句が出来たら良し、その句をお捌きが採ってくれたら更に良し、(稀にしか採られませんが)、皆上手いなあと感心して次は増しな句をと、考えているうちに時間が経ち一日が過ぎます。膝送りの場合は更に気楽です。順番が来たら、思いつくままに付けたらいい。連句は老いに追いつかれないように前を向いて暮らすのに合っています。こんな積りで平均月に7乃至8回連句に通っています。
私は妻を亡くし、年金の一人暮し、自分の事だけしていれば良い気楽な境遇です。先の事は予測が付きませんので考えても仕方の無い事、毎日を健康で元気にその日その日が楽しければよいと思って暮らしています。連句の功徳か何でも言える友達も出来て今の所毎日を楽しく、過ごさせて貰っています。
まだ余白がありますので、思いつくままにその他二三身辺雑事を書きます。私は四十才台から自己流徒手体操を始め十年前から太極拳に週一回通っています。体を動かすことの楽しさを弱虫の私が知ったのは大変幸運でした。余り頭が働かぬので代りに天が恵んで呉れたのでしょう。最近断食の本を読みました。朝飯抜きがよいとの事なので、始めてみました。長年続けていた晩酌をやめた事もあり、二食になってから、体も軽くなり、調子が良いように思います。
ボケを防ぐには、やりたいと思うことをするに如かずと、この間新内を始めましたが、又近近尺八を始めるつもりです。小人閑居して不善を為す、何時まで続きますか。近頃の心境です。 (2006年9月)
二句表「歩こじゃないか」
颯爽と歩こじゃないか新樹光 杉浦和子
雲の切れ間に啼く時鳥 坂本統一
路線バスひとりも乗らず発車して おおた六魚
紅葉の山をめぐりゆく旅 藤尾 薫
ひょうたんを振れば七味の出る月夜 古賀直子
啜る新蕎麦鼻を押さえて 梅田 實
ジャンケンで負けて下校の子の遊び 玉木 祐
広き縁側うたた寝の猫 峯田政志
あの人の地下足袋姿頼もしく 和子
鮟鱇鍋をつっつく二人 統一
月昇る銀杏落ち葉をすぎる風 六魚
芝居の余韻雑踏にあり 薫
乗っとりのホテルの株でヒルズ族 直子
三億籤に列を作りて 實
泡沫の花の宴を数寄屋橋 祐
ちょっと舌だす大き蛤 政志
二〇〇六年五月二一日 於 関戸第三学習室
二句表「夏薊」
我武者羅に走り続けて夏薊 玉木 祐
静けさのなか薄羽蜉蝣 峯田 政志
交響曲五番運命たけなわに 坂本 統一
啄木鳥眺むバードウオッチ 古谷 禎子
団子もり里芋盛りて月を待つ 藤尾 薫
無人の駅は初紅葉して 杉浦 和子
ハイカーは路傍の石に腰おろし 梅田 實
栃木に生まれ蔵の町ゆく 祐
別嬪に頂戴したる和三盆 政志
名残の朝の月と雪像 統一
冬港ゆっくりと出る連絡線 禎子
条例行使物資とだえる 薫
古書店のにおい懐かし漫画売る 和子
のらくろの真似うまい弟 祐
連兵場嘶き高し花万朶 實
グローバル化の進む麗らか 政志
二〇〇六年七月十六日 於関戸ワークショップ室
二句表「風神雷神」
駆け抜けし風神雷神坂の町 杉浦和子
高くからげる甚平の裾 梅田 實
母からのにぎり鋏の錆びついて 玉木 祐
菊膾の香ふわり漂ふ 峯田政志
縁先の月見飾に笑ふ月 坂本統一
赤い羽根付け友の来たりて 古谷禎子
誕生日コース料理に舌鼓 藤尾 薫
おけさ節しか歌えない祖父 和子
別宅を人力車にて訪ね行き 實
くちづけのぞく月と雪つり 祐
茶柱を喜んでおり漱石忌 政志
熱田津の浜よさこい踊り 統一
従軍の歌詠み人の臈たけて 禎子
賑はいて居り松園展は 和子
村里は水車ゆっくり花の雨 薫
老酒含みて惜しむ春宵 實
2006年7月16日首尾 於 関戸ワークショップルーム
表合せ八句「那由多の刻」
君まさぬ那由多の刻の暑さかな 峯田政志
はらはらと散る紫式部 玉木 祐
自家煎のコーヒーの香にくつろぎて 坂本統一
しめじの味噌漬け夫のみやげ 藤尾 薫
逃れ来て国の境で眺む月 梅田 實
遠くに走る赤軍戦車 古谷禎子
いつもより帯ゆったりと花衣 杉浦和子
はぐれ蝶々とまる肩先 執筆
2006年7月16日 於 関戸ワークショップルーム
二句表「七十の恋」
七十の恋など語り西瓜食ぶ 古賀直子
共に黙して仰ぐ夕焼 坂本統一
有元の「空のカーテン」表紙にて 玉木 祐
心静かに硯を洗ふ 杉浦和子
竹林の葉影に見たる望の月 藤尾 薫
今年の酒の出来は上々 直子
絹豆腐肴に振った花鰹 統一
紅裏ちらりのぞかせた孫 祐
あの人をふと思い出す切り通し 和子
凍れる月に別れを泣いた 薫
クリスマスツリー点灯六本木 直子
街角に弾く老音楽師 統一
影を踏み目深に帽子かぶり来る 祐
トレンチコートはクリーニング中 薫
御佛は甘茶に濡れて花御堂 和子
遅日の町を急ぎ港へ 祐
2006年8月5日 於関戸公民館第二学習室
二句表 「さあ夏だ」
さあ夏だここを先途と蝉時雨 杉浦和子
松林裏臨海学校 藤尾 薫
カレー鍋インド仕込みが自慢にて 古賀直子
隠し味には猿の腰掛け 坂本統一
寝ながらのお伽話に月が出て 玉木 祐
頭揃えて曼珠沙華咲く 和子
優勝旗かかげて行進球児達 薫
トランペットで吹くラブソング 直子
フィアンセは眉秀でたる元騎兵 統一
繊月を背に雪だるま立つ 祐
初釜はおゝぶりの菓子はんなりと 和子
黒羽二重の京舞きりり 薫
縄のれん掛けて止まり木磨き上げ 祐
翼よあれが巴里の街の灯 統一
花吹雪洋の東西平和がいいね 直子
朝のジョギング囀りの中 和子
2006年8月5日 於関戸公民館第二学習室
2006年9月17日発行
思いつくままに 梅田 實
約十年前会社の先輩から、奥さんが連句の宗匠になったから弟子入りしないかと誘われたのが始りで、先ず文韻をぼちぼち三回程やった時、「やる気があるなら新宿の朝日カルチャーセンターの講座に行ったらどう」。と言われ、その気になって四年通いそれから連句を止められなくなって、今以って連句を続けている次第です。
私の場合連句は人との交流の大切な時間と思い、通っていますので、前もって準備などした事は無く、出勝ちの場合はその場で考えて句が出来たら良し、その句をお捌きが採ってくれたら更に良し、(稀にしか採られませんが)、皆上手いなあと感心して次は増しな句をと、考えているうちに時間が経ち一日が過ぎます。膝送りの場合は更に気楽です。順番が来たら、思いつくままに付けたらいい。連句は老いに追いつかれないように前を向いて暮らすのに合っています。こんな積りで平均月に7乃至8回連句に通っています。
私は妻を亡くし、年金の一人暮し、自分の事だけしていれば良い気楽な境遇です。先の事は予測が付きませんので考えても仕方の無い事、毎日を健康で元気にその日その日が楽しければよいと思って暮らしています。連句の功徳か何でも言える友達も出来て今の所毎日を楽しく、過ごさせて貰っています。
まだ余白がありますので、思いつくままにその他二三身辺雑事を書きます。私は四十才台から自己流徒手体操を始め十年前から太極拳に週一回通っています。体を動かすことの楽しさを弱虫の私が知ったのは大変幸運でした。余り頭が働かぬので代りに天が恵んで呉れたのでしょう。最近断食の本を読みました。朝飯抜きがよいとの事なので、始めてみました。長年続けていた晩酌をやめた事もあり、二食になってから、体も軽くなり、調子が良いように思います。
ボケを防ぐには、やりたいと思うことをするに如かずと、この間新内を始めましたが、又近近尺八を始めるつもりです。小人閑居して不善を為す、何時まで続きますか。近頃の心境です。 (2006年9月)
二句表「歩こじゃないか」
颯爽と歩こじゃないか新樹光 杉浦和子
雲の切れ間に啼く時鳥 坂本統一
路線バスひとりも乗らず発車して おおた六魚
紅葉の山をめぐりゆく旅 藤尾 薫
ひょうたんを振れば七味の出る月夜 古賀直子
啜る新蕎麦鼻を押さえて 梅田 實
ジャンケンで負けて下校の子の遊び 玉木 祐
広き縁側うたた寝の猫 峯田政志
あの人の地下足袋姿頼もしく 和子
鮟鱇鍋をつっつく二人 統一
月昇る銀杏落ち葉をすぎる風 六魚
芝居の余韻雑踏にあり 薫
乗っとりのホテルの株でヒルズ族 直子
三億籤に列を作りて 實
泡沫の花の宴を数寄屋橋 祐
ちょっと舌だす大き蛤 政志
二〇〇六年五月二一日 於 関戸第三学習室
二句表「夏薊」
我武者羅に走り続けて夏薊 玉木 祐
静けさのなか薄羽蜉蝣 峯田 政志
交響曲五番運命たけなわに 坂本 統一
啄木鳥眺むバードウオッチ 古谷 禎子
団子もり里芋盛りて月を待つ 藤尾 薫
無人の駅は初紅葉して 杉浦 和子
ハイカーは路傍の石に腰おろし 梅田 實
栃木に生まれ蔵の町ゆく 祐
別嬪に頂戴したる和三盆 政志
名残の朝の月と雪像 統一
冬港ゆっくりと出る連絡線 禎子
条例行使物資とだえる 薫
古書店のにおい懐かし漫画売る 和子
のらくろの真似うまい弟 祐
連兵場嘶き高し花万朶 實
グローバル化の進む麗らか 政志
二〇〇六年七月十六日 於関戸ワークショップ室
二句表「風神雷神」
駆け抜けし風神雷神坂の町 杉浦和子
高くからげる甚平の裾 梅田 實
母からのにぎり鋏の錆びついて 玉木 祐
菊膾の香ふわり漂ふ 峯田政志
縁先の月見飾に笑ふ月 坂本統一
赤い羽根付け友の来たりて 古谷禎子
誕生日コース料理に舌鼓 藤尾 薫
おけさ節しか歌えない祖父 和子
別宅を人力車にて訪ね行き 實
くちづけのぞく月と雪つり 祐
茶柱を喜んでおり漱石忌 政志
熱田津の浜よさこい踊り 統一
従軍の歌詠み人の臈たけて 禎子
賑はいて居り松園展は 和子
村里は水車ゆっくり花の雨 薫
老酒含みて惜しむ春宵 實
2006年7月16日首尾 於 関戸ワークショップルーム
表合せ八句「那由多の刻」
君まさぬ那由多の刻の暑さかな 峯田政志
はらはらと散る紫式部 玉木 祐
自家煎のコーヒーの香にくつろぎて 坂本統一
しめじの味噌漬け夫のみやげ 藤尾 薫
逃れ来て国の境で眺む月 梅田 實
遠くに走る赤軍戦車 古谷禎子
いつもより帯ゆったりと花衣 杉浦和子
はぐれ蝶々とまる肩先 執筆
2006年7月16日 於 関戸ワークショップルーム
二句表「七十の恋」
七十の恋など語り西瓜食ぶ 古賀直子
共に黙して仰ぐ夕焼 坂本統一
有元の「空のカーテン」表紙にて 玉木 祐
心静かに硯を洗ふ 杉浦和子
竹林の葉影に見たる望の月 藤尾 薫
今年の酒の出来は上々 直子
絹豆腐肴に振った花鰹 統一
紅裏ちらりのぞかせた孫 祐
あの人をふと思い出す切り通し 和子
凍れる月に別れを泣いた 薫
クリスマスツリー点灯六本木 直子
街角に弾く老音楽師 統一
影を踏み目深に帽子かぶり来る 祐
トレンチコートはクリーニング中 薫
御佛は甘茶に濡れて花御堂 和子
遅日の町を急ぎ港へ 祐
2006年8月5日 於関戸公民館第二学習室
二句表 「さあ夏だ」
さあ夏だここを先途と蝉時雨 杉浦和子
松林裏臨海学校 藤尾 薫
カレー鍋インド仕込みが自慢にて 古賀直子
隠し味には猿の腰掛け 坂本統一
寝ながらのお伽話に月が出て 玉木 祐
頭揃えて曼珠沙華咲く 和子
優勝旗かかげて行進球児達 薫
トランペットで吹くラブソング 直子
フィアンセは眉秀でたる元騎兵 統一
繊月を背に雪だるま立つ 祐
初釜はおゝぶりの菓子はんなりと 和子
黒羽二重の京舞きりり 薫
縄のれん掛けて止まり木磨き上げ 祐
翼よあれが巴里の街の灯 統一
花吹雪洋の東西平和がいいね 直子
朝のジョギング囀りの中 和子
2006年8月5日 於関戸公民館第二学習室