連句通信114号2007年3月18日発行
「記憶のかけらを探す」 古谷禎子
ずい分前から、心の端に残っていて、時々思い出しては「あれは何なのだろう?、、、」と思う子供の頃の本がありました。晩年になって、何とか解決しないと成仏(大げさ!!)出来ない、とインターネットなどで調べて見ましたが、何しろ記憶に残っているのが、本当に少ししかなくて、しかも歴史的な年月がたっています。
私の子供時代はテレビもなく、今のように娯楽がありませんでしたので、読書は本当に最大の楽しみでした。私は本の虫みたいに読みあさっていました。当時の私は自分の生活、つまり境遇がかなり不満で、物語の中に没入して、現実から逃避したかったのです。
例えば「小公女」のヒロインが(セイラでしたっけ?)住んでいる屋根裏部屋で、空想の中に入り込み、いろいろ空想遊びをして、自分の惨めな境遇を忘れて楽しいものにしていたようにするのが、私の癖でした。それで毎日小説ばかり読んで過ごしました。私は、今考えると惨めどころか、大変恵まれていたのですが。
第一読む本が沢山ありました。父が沢山の小説を持っていたのです。ルパンから坪内逍遥のシェークスピアものまで。昔は、どの本も漢字にルビが振ってあって、子供でも読めたのです。
さがしていたのは、叔母がお土産にくれた二冊の本です。「シャビンシン」の本だということは憶えていました。中国の女流作家のものです。一冊は児童書で、一冊の本で挿絵が時々あって、粗末な紙の本。もう一つはハードカバーの本で表紙がグリーンでした。大人の本のような感じで難かしかったし、面白くありませんでした。別荘にいる女性の「日記」でした。
結論から言うと、「謝冰心」女史が作者でした。シャヒョウシンとかシャビンシンとか読むようです。(当時は女史が付いていたように覚えています)。
中国の1900年生まれの作家でブルジョア出身で、下放されたりして苦労されたのではなかったでしょうか。そのせいか、何か、経歴や作品について書いてあることが何処か修正されている印象がします。
私が憶えていたのは「ツイアル」という少女が養母にいじめられ、別荘のお嬢さんに親切にしてもらい、初めて人間らしい交流があり、とうとう虐待死しますが最後の時に、そのお嬢さんの事を思いながら亡くなる、というもので私は泣きながら読んだ記憶があります。「ツイアル」を「二児」と憶えていましたが「翠児(ツイアル)」でした。
図書館の方に相談しましたら、とうとう探し出して下さったのです。謝冰心著「最後のいこい」原題は「最後的安息」です。中国語の「的」は日本語では違う
使い方をされていますが、「~の」という意味です。だから「最後の安息」ということになります。都立図書館の児童文学集の中にあり、たった20ページでした。それが一冊の本になっていたのだから、きっと字も大きく挿絵も幾つかあって、子供向けの本だったのでしょう。記憶ではツイアルは養女で養母にいじめ殺されたのです。この本では「童養媳」となっています。「トウンヤンシー」幼い時もらって、大きくなったら息子の嫁にする女。
という意味だそうです。女編に息、という字です。
昔、ヴェトナム戦争の頃私はサイゴン(今のホーチミン市)とカンボジャのプノンペンを行ったり来たりで八年四ヶ月過ごしました。その間「広東語」を習って日常では使っていましたので、中国人、華僑の方達との交流もありました。その頃、福建系華僑の女性に聞いた事ですが、日本人は婿養子のことを「養子」と云うし、書くけれど中国語では「養子」というのはお金で買った子供のことを云うので、日本人が「養子」というとそう思うから、変だ、と。婿養子は別の言い方をする、と教えてもらいましたが、忘れてしまいました。自分にも「養子、お金で買った弟がいた」と聞きました。彼女は一人娘さんでした。〈中国語の「養子」は苗字が養家のものになるが、婿養子は実家の苗字をそのまま名乗る〉と。そう云えば女性も中国では「蒋介石」の夫人は「宋美齢」です。蒋夫人とは云うでしょうが蒋美齢とは云いません。結婚しても、そのまま実家の姓を名乗ります。それを聞いた時に「ツイアル」のお話を思い出しました。あれは「養女」だから買われた子供だったので、あんなにいじめられたのだ。日本の養女は大事にされているが、ツイアルはこき使われ、ろくに食事もさせてもらえず、殴られ、人間扱いをされていませんで、殺されてしまいます。別荘のお嬢さん「恵姑(ホウイクー)」だけが初めて人間扱いをしてくれたのです。それだけが救いで、彼女は死ぬのです。本当に泣きました。今読んでみると、簡単なお話なのですが、小さかった私には大変なお話でした。
もう一冊の本は解りませんでした。年表を見てもそれに相当する作品は見付かりません。削除されている可能性もあります。図書館はとても親切で、いろんな事の手助けをしてくださいます。
アホみたいな話を書いてしまったと思いますが、私にとっては「ツイアル」の事は、とても気になるものでしたので、この事が解って(ごく最近)本当にホッとしました。小さな事で、何かの時に「あれは何なのだろう?」と思うことがあると、気になります。これは解決して、少し拍子抜けしたのも事実ですが、安心して嬉しく幸せな気持ちになれました。そして、このお話は現代の中国の事ではなく、昔の中国のお話だ、と言うことを断わっておきます。
二句表「雨の中」
雨の中よきどち集ふ初懐紙 梅田 實
衣桁にかけし正月小袖 星 明子
ウ
夕まぐれ猫を抱きて散策に 玉木 祐
葉柳くぐり寄席の定連 古賀直子
下駄の音からんころんと木下闇 坂本統一
アイドリングストップまずはそこそこ 峯田政志
光る海月見をせんと漕ぎ出し 藤尾 薫
菊人形のお染久松 杉浦和子
ナオ
ピストルは枕の下に色葉散る 明子
パブでホームズぐいと一杯 實
髭面の揃ふ町内除夜詣 直子
冬氷輪へのび太飛び立つ 祐
山人にあの世で逢ったらなんとせう 政志
米寿の翁金の斧打つ 統一
ナウ
楊貴妃といふ桜あり花の里 和子
壬生狂言の仮面いろいろ 薫
平成19年1月6日 首尾 聖跡桜ヶ丘 関戸公民館
二句表「はつ夢の中」 膝送り
初懐紙まだはつ夢の中にゐる 杉浦和子
卓を囲みて祝う七草 藤尾 薫
ウ
良寛の愛語の書体なぞるらん 峯田政志
庭の池には水鳥遊ぶ 坂本統一
宿題は後でいゝやと夏休 古賀直子
おみやげワイン免税店で 玉木 祐
広々と月のみ残る飛行場 星 明子
寄添ヘる影のびる虫の音 梅田 實
ナオ
古井戸の脇女郎花あなた見た? 薫
恋の傷跡猫になめさせ 和子
冬木立富田流秘剣水鏡 統一
いつのまにやら雪吊りの月 政志
碧眼の裃を履いてお茶の会 祐
雛市をめぐる足も軽やか 直子
ナウ
花蔭にジャズの流れる光堂 實
縁側ぬくし午後の静寂 明子
平成19年1月6日 首尾於 関戸公民館第三学習室
二句表「絵手紙」
絵手紙の笑顔大きく寒見舞 古賀直子
月あざやかに里の暖冬 玉木 祐
ウ
公民館パソコン講座空もなし 坂本統一
化粧室ではおしゃべり夢中 藤尾 薫
風車富山から来た薬売り 杉浦和子
足投げ出して菜種梅雨見る 星 明子
海千の女が宿に酒を酌む 祐
残り香ほのかパリの香水 直子
ナオ
羅をまとうマリアとシャンゼリゼ 薫
紅顔令色常にもてもて 統一
急流に月影割れて定まらず 明子
お裾分けよと湿地茸どっさり 和子
参道を子等の駆け行く秋祭 直子
アセチレンガス匂う綿飴 祐
ナウ
花砂漠パン食い競争キリンさん 統一
ひとならびしてかいやぐら見る 薫
首尾 平成19年1月21日関戸第三学習室
二句表「一も二もなし」
人生に一も二もなし寒昴 坂本統一
玉輪あおぐ北風の街 藤尾 薫
ウ
産直の野菜あれこれよく売れて 杉浦和子
いつも厨に割烹着立つ 星 明子
若鮎の鰭形よき焼き加減 古賀直子
お伊勢参りの笠ははな柄 玉木 祐
飼育士が闘牛ショーを取り仕切り 薫
アロハの胸のカルメン踊る 統一
ナオ
誘蛾灯君に蠱惑の網をかけ 明子
やらずの雨となれよこの雨 和子
翼端に有明月の雲白し 祐
野山の錦うつすカクテル 直子
紅葉狩妖刀村正研ぎに出す 統一
灰の中から金剛石が 薫
ナウ
花を惜しみ春を惜しみて花衣 和子
さざえ並べる海の売店 明子
首尾 平成19年1月21日 関戸公民館第三学習室
歌仙「お福」 膝送り
鬼達もお福もおいでここは春 杉浦和子
庭の紅梅今や満開 梅田 實
肩車青きを踏みて雲もなし 星 明子
貰う寄せ書き躍る崩し字 峯田政志
夕月をうつす縁先秋蛍 玉木 祐
栗羊羹を厚く切り分け 古賀直子
ウラ
雁渡る連句の席は気付かずに 太田六魚
淋しがりやという噂立ち 和子
熱烈な想いひそかに抱きいて 實
夫を替えたし韓流かぶれ 明子
嫁ぎ場もグローバル化の新世紀 政志
産む機械とはいわれたくなし 祐
山車を引く法被鉢巻豆しぼり 直子
河童忌の月ぬる燗の酒 六魚
古書店に上目遣いの主いて 和子
机の上には大きなそろばん 實
花の下ライトアップのコンサート 明子
うらら渋谷にピンヒール履き 政志
ナオ
みどりの日良く働きし空気入れ 祐
われら団塊胸つき八丁 直子
セール電話金融商品あれこれと 六魚
すり切れジーンズ捨てられもせず 和子
今晩は鮟鱇鍋で客招き 實
寒灯たより戻り駕籠とめ 明子
増女そっくりさんが淑やかに 政志
ヴェニスの広場アバンチュールを 祐
紛れなし愛の結晶ギリシャ鼻 直子
石膏像に移りゆく翳 六魚
のら猫とまんまる月が付けて来る 和子
紅葉を歌う子供らの列 實
ナウ
知事になる夢が叶いて霧もはれ 明子
何時頃のるか我名過去帳 政志
円形の天井壁画天使舞う 祐
ジャンケンポンでチョキを出す癖 直子
当今もきこし召したる花朧 六魚
風船飛ばす四海平穏 實
2007年2月節分 首尾 於関戸ワークショップ
二句表 「武蔵野婦人」
草朧武蔵野婦人とすれ違う 玉木 祐
くぬぎの林余寒一入 星 明子
ウ
ポケットにキャラメルの箱忍ばせて 古賀 直子
迎えの車園児手を振り 梅田 實
算うれば百足虫の足は百足か? 太田 六魚
木曜ドラマいつも楽しみ 古谷 禎子
星条旗どのあたりかと仰ぐ月 峯田 政志
開高健秋味を釣る 藤尾 薫
ナオ
ウイスキー仲良く酌んで芸術祭 祐
空中に見る恋の幻想 明
丹頂の飛び立つさまを撮る旅に 直
春待月が湖に浮かびて 實
天明の狂歌を貼った腰襖 六
何を夢見て悶え居る老 政
ナウ
みどり児のにっこり微笑う花吹雪 薫
無理が通ればうらら日が過ぎ 執筆
2007年2月18日 於関戸公民館第三学習室
二句表 「お前もいたか」
東風吹いてお前もいたか蕗の薹 藤尾 薫
亀の子たわし転げ春雨 玉木 祐
ウ
曲芸はトランポリンが目玉にて 星 明子
ラムネの栓をぽんとうちぬく 古賀 直子
ぞろぞろと五人の児連れ浜日傘 梅田 實
少子化対策金一封を 太田 六魚
昇り月赤く大きく森の上 古谷 禎子
仲の町へと急ぐ爽涼 峯田 政志
ナオ
秋時雨狂女が舞える笛の音 薫
鼓の革に息吹きかける 祐
裘(かわごろも)昔火鼠今グッチ 明
月も煙たき秩父夜祭 直
声高のお国訛りに首かしげ 實
むむむむむむむ杯を重ねて 六
ナウ
咲けば散る定めと知りて咲く花か 志
オタマジャクシはやがて蛙に 執筆
2007年2月18日 首尾 於関戸学習室
二句表『かの子忌』
悲しみや深く華やぐかの子の忌 六魚
雨のマラソン春寒き朝 直子
ウ
外遊の都知事家族を伴いて 祐
腹掛けの下隠す札束 政志
ゆりかごに枇杷の実ゆれて子守歌 薫
泣いたおせんに木馬参らそ 直子
これがかのトロイの月に棹さして 明子
想いめぐらす秋の七草 實
ナオ
金木犀君の香りが恋しくて 薫
縒りを戻すもはや幾たびぞ 政志
この冬は新車売れ行き好調で 實
月光の滝凍てゝ耳だす 祐
東大の法学部出てニートです 直子
核の保有を感謝する民 明子
ナウ
温暖化もうちらほらと花便り 實
李白の一斗春の百扁 執筆
2007年2月18日 ヴィータ第三集会室
二十韻「古雛」
旧友の俤うかぶ古雛 峯田 政志
姫辛夷活ける部屋の一隅 藤尾 薫
春泥に犬の足跡ちりぢりに 古賀 直子
風のこどもがゆする吊り橋 杉浦 和子
ウ
鴨川の踊りの月を見においで おおた六魚
そろいの浴衣手に手をとって 梅田 實
草の戸に百夜通ひし轍あと 星 明子
フォルクスワーゲンローマ進出 玉木 祐
客人とエルアラメイン語りつつ 政志
まっかり酒あり馬乳酒もあり 薫
ナオ
高尾には天狗おわして冬銀河 和子
聖樹点灯あがる歓声 直子
燃えあがる思いに我が身焼きつくし 實
Wベッドに聞ける虫の音 六魚
眼前は湯の香たっぷり二十日月 祐
浅漬け大根旅の土産に 明子
ナウ
談合も必要悪さうそぶいて 薫
嫗の膝にうたたねの猫 政志
遠近の花はけぶりて濃く薄く 和子
磯の遊びに誘うつれづれ 直子
平成19年3月3日 永山集会室
「記憶のかけらを探す」 古谷禎子
ずい分前から、心の端に残っていて、時々思い出しては「あれは何なのだろう?、、、」と思う子供の頃の本がありました。晩年になって、何とか解決しないと成仏(大げさ!!)出来ない、とインターネットなどで調べて見ましたが、何しろ記憶に残っているのが、本当に少ししかなくて、しかも歴史的な年月がたっています。
私の子供時代はテレビもなく、今のように娯楽がありませんでしたので、読書は本当に最大の楽しみでした。私は本の虫みたいに読みあさっていました。当時の私は自分の生活、つまり境遇がかなり不満で、物語の中に没入して、現実から逃避したかったのです。
例えば「小公女」のヒロインが(セイラでしたっけ?)住んでいる屋根裏部屋で、空想の中に入り込み、いろいろ空想遊びをして、自分の惨めな境遇を忘れて楽しいものにしていたようにするのが、私の癖でした。それで毎日小説ばかり読んで過ごしました。私は、今考えると惨めどころか、大変恵まれていたのですが。
第一読む本が沢山ありました。父が沢山の小説を持っていたのです。ルパンから坪内逍遥のシェークスピアものまで。昔は、どの本も漢字にルビが振ってあって、子供でも読めたのです。
さがしていたのは、叔母がお土産にくれた二冊の本です。「シャビンシン」の本だということは憶えていました。中国の女流作家のものです。一冊は児童書で、一冊の本で挿絵が時々あって、粗末な紙の本。もう一つはハードカバーの本で表紙がグリーンでした。大人の本のような感じで難かしかったし、面白くありませんでした。別荘にいる女性の「日記」でした。
結論から言うと、「謝冰心」女史が作者でした。シャヒョウシンとかシャビンシンとか読むようです。(当時は女史が付いていたように覚えています)。
中国の1900年生まれの作家でブルジョア出身で、下放されたりして苦労されたのではなかったでしょうか。そのせいか、何か、経歴や作品について書いてあることが何処か修正されている印象がします。
私が憶えていたのは「ツイアル」という少女が養母にいじめられ、別荘のお嬢さんに親切にしてもらい、初めて人間らしい交流があり、とうとう虐待死しますが最後の時に、そのお嬢さんの事を思いながら亡くなる、というもので私は泣きながら読んだ記憶があります。「ツイアル」を「二児」と憶えていましたが「翠児(ツイアル)」でした。
図書館の方に相談しましたら、とうとう探し出して下さったのです。謝冰心著「最後のいこい」原題は「最後的安息」です。中国語の「的」は日本語では違う
使い方をされていますが、「~の」という意味です。だから「最後の安息」ということになります。都立図書館の児童文学集の中にあり、たった20ページでした。それが一冊の本になっていたのだから、きっと字も大きく挿絵も幾つかあって、子供向けの本だったのでしょう。記憶ではツイアルは養女で養母にいじめ殺されたのです。この本では「童養媳」となっています。「トウンヤンシー」幼い時もらって、大きくなったら息子の嫁にする女。
という意味だそうです。女編に息、という字です。
昔、ヴェトナム戦争の頃私はサイゴン(今のホーチミン市)とカンボジャのプノンペンを行ったり来たりで八年四ヶ月過ごしました。その間「広東語」を習って日常では使っていましたので、中国人、華僑の方達との交流もありました。その頃、福建系華僑の女性に聞いた事ですが、日本人は婿養子のことを「養子」と云うし、書くけれど中国語では「養子」というのはお金で買った子供のことを云うので、日本人が「養子」というとそう思うから、変だ、と。婿養子は別の言い方をする、と教えてもらいましたが、忘れてしまいました。自分にも「養子、お金で買った弟がいた」と聞きました。彼女は一人娘さんでした。〈中国語の「養子」は苗字が養家のものになるが、婿養子は実家の苗字をそのまま名乗る〉と。そう云えば女性も中国では「蒋介石」の夫人は「宋美齢」です。蒋夫人とは云うでしょうが蒋美齢とは云いません。結婚しても、そのまま実家の姓を名乗ります。それを聞いた時に「ツイアル」のお話を思い出しました。あれは「養女」だから買われた子供だったので、あんなにいじめられたのだ。日本の養女は大事にされているが、ツイアルはこき使われ、ろくに食事もさせてもらえず、殴られ、人間扱いをされていませんで、殺されてしまいます。別荘のお嬢さん「恵姑(ホウイクー)」だけが初めて人間扱いをしてくれたのです。それだけが救いで、彼女は死ぬのです。本当に泣きました。今読んでみると、簡単なお話なのですが、小さかった私には大変なお話でした。
もう一冊の本は解りませんでした。年表を見てもそれに相当する作品は見付かりません。削除されている可能性もあります。図書館はとても親切で、いろんな事の手助けをしてくださいます。
アホみたいな話を書いてしまったと思いますが、私にとっては「ツイアル」の事は、とても気になるものでしたので、この事が解って(ごく最近)本当にホッとしました。小さな事で、何かの時に「あれは何なのだろう?」と思うことがあると、気になります。これは解決して、少し拍子抜けしたのも事実ですが、安心して嬉しく幸せな気持ちになれました。そして、このお話は現代の中国の事ではなく、昔の中国のお話だ、と言うことを断わっておきます。
二句表「雨の中」
雨の中よきどち集ふ初懐紙 梅田 實
衣桁にかけし正月小袖 星 明子
ウ
夕まぐれ猫を抱きて散策に 玉木 祐
葉柳くぐり寄席の定連 古賀直子
下駄の音からんころんと木下闇 坂本統一
アイドリングストップまずはそこそこ 峯田政志
光る海月見をせんと漕ぎ出し 藤尾 薫
菊人形のお染久松 杉浦和子
ナオ
ピストルは枕の下に色葉散る 明子
パブでホームズぐいと一杯 實
髭面の揃ふ町内除夜詣 直子
冬氷輪へのび太飛び立つ 祐
山人にあの世で逢ったらなんとせう 政志
米寿の翁金の斧打つ 統一
ナウ
楊貴妃といふ桜あり花の里 和子
壬生狂言の仮面いろいろ 薫
平成19年1月6日 首尾 聖跡桜ヶ丘 関戸公民館
二句表「はつ夢の中」 膝送り
初懐紙まだはつ夢の中にゐる 杉浦和子
卓を囲みて祝う七草 藤尾 薫
ウ
良寛の愛語の書体なぞるらん 峯田政志
庭の池には水鳥遊ぶ 坂本統一
宿題は後でいゝやと夏休 古賀直子
おみやげワイン免税店で 玉木 祐
広々と月のみ残る飛行場 星 明子
寄添ヘる影のびる虫の音 梅田 實
ナオ
古井戸の脇女郎花あなた見た? 薫
恋の傷跡猫になめさせ 和子
冬木立富田流秘剣水鏡 統一
いつのまにやら雪吊りの月 政志
碧眼の裃を履いてお茶の会 祐
雛市をめぐる足も軽やか 直子
ナウ
花蔭にジャズの流れる光堂 實
縁側ぬくし午後の静寂 明子
平成19年1月6日 首尾於 関戸公民館第三学習室
二句表「絵手紙」
絵手紙の笑顔大きく寒見舞 古賀直子
月あざやかに里の暖冬 玉木 祐
ウ
公民館パソコン講座空もなし 坂本統一
化粧室ではおしゃべり夢中 藤尾 薫
風車富山から来た薬売り 杉浦和子
足投げ出して菜種梅雨見る 星 明子
海千の女が宿に酒を酌む 祐
残り香ほのかパリの香水 直子
ナオ
羅をまとうマリアとシャンゼリゼ 薫
紅顔令色常にもてもて 統一
急流に月影割れて定まらず 明子
お裾分けよと湿地茸どっさり 和子
参道を子等の駆け行く秋祭 直子
アセチレンガス匂う綿飴 祐
ナウ
花砂漠パン食い競争キリンさん 統一
ひとならびしてかいやぐら見る 薫
首尾 平成19年1月21日関戸第三学習室
二句表「一も二もなし」
人生に一も二もなし寒昴 坂本統一
玉輪あおぐ北風の街 藤尾 薫
ウ
産直の野菜あれこれよく売れて 杉浦和子
いつも厨に割烹着立つ 星 明子
若鮎の鰭形よき焼き加減 古賀直子
お伊勢参りの笠ははな柄 玉木 祐
飼育士が闘牛ショーを取り仕切り 薫
アロハの胸のカルメン踊る 統一
ナオ
誘蛾灯君に蠱惑の網をかけ 明子
やらずの雨となれよこの雨 和子
翼端に有明月の雲白し 祐
野山の錦うつすカクテル 直子
紅葉狩妖刀村正研ぎに出す 統一
灰の中から金剛石が 薫
ナウ
花を惜しみ春を惜しみて花衣 和子
さざえ並べる海の売店 明子
首尾 平成19年1月21日 関戸公民館第三学習室
歌仙「お福」 膝送り
鬼達もお福もおいでここは春 杉浦和子
庭の紅梅今や満開 梅田 實
肩車青きを踏みて雲もなし 星 明子
貰う寄せ書き躍る崩し字 峯田政志
夕月をうつす縁先秋蛍 玉木 祐
栗羊羹を厚く切り分け 古賀直子
ウラ
雁渡る連句の席は気付かずに 太田六魚
淋しがりやという噂立ち 和子
熱烈な想いひそかに抱きいて 實
夫を替えたし韓流かぶれ 明子
嫁ぎ場もグローバル化の新世紀 政志
産む機械とはいわれたくなし 祐
山車を引く法被鉢巻豆しぼり 直子
河童忌の月ぬる燗の酒 六魚
古書店に上目遣いの主いて 和子
机の上には大きなそろばん 實
花の下ライトアップのコンサート 明子
うらら渋谷にピンヒール履き 政志
ナオ
みどりの日良く働きし空気入れ 祐
われら団塊胸つき八丁 直子
セール電話金融商品あれこれと 六魚
すり切れジーンズ捨てられもせず 和子
今晩は鮟鱇鍋で客招き 實
寒灯たより戻り駕籠とめ 明子
増女そっくりさんが淑やかに 政志
ヴェニスの広場アバンチュールを 祐
紛れなし愛の結晶ギリシャ鼻 直子
石膏像に移りゆく翳 六魚
のら猫とまんまる月が付けて来る 和子
紅葉を歌う子供らの列 實
ナウ
知事になる夢が叶いて霧もはれ 明子
何時頃のるか我名過去帳 政志
円形の天井壁画天使舞う 祐
ジャンケンポンでチョキを出す癖 直子
当今もきこし召したる花朧 六魚
風船飛ばす四海平穏 實
2007年2月節分 首尾 於関戸ワークショップ
二句表 「武蔵野婦人」
草朧武蔵野婦人とすれ違う 玉木 祐
くぬぎの林余寒一入 星 明子
ウ
ポケットにキャラメルの箱忍ばせて 古賀 直子
迎えの車園児手を振り 梅田 實
算うれば百足虫の足は百足か? 太田 六魚
木曜ドラマいつも楽しみ 古谷 禎子
星条旗どのあたりかと仰ぐ月 峯田 政志
開高健秋味を釣る 藤尾 薫
ナオ
ウイスキー仲良く酌んで芸術祭 祐
空中に見る恋の幻想 明
丹頂の飛び立つさまを撮る旅に 直
春待月が湖に浮かびて 實
天明の狂歌を貼った腰襖 六
何を夢見て悶え居る老 政
ナウ
みどり児のにっこり微笑う花吹雪 薫
無理が通ればうらら日が過ぎ 執筆
2007年2月18日 於関戸公民館第三学習室
二句表 「お前もいたか」
東風吹いてお前もいたか蕗の薹 藤尾 薫
亀の子たわし転げ春雨 玉木 祐
ウ
曲芸はトランポリンが目玉にて 星 明子
ラムネの栓をぽんとうちぬく 古賀 直子
ぞろぞろと五人の児連れ浜日傘 梅田 實
少子化対策金一封を 太田 六魚
昇り月赤く大きく森の上 古谷 禎子
仲の町へと急ぐ爽涼 峯田 政志
ナオ
秋時雨狂女が舞える笛の音 薫
鼓の革に息吹きかける 祐
裘(かわごろも)昔火鼠今グッチ 明
月も煙たき秩父夜祭 直
声高のお国訛りに首かしげ 實
むむむむむむむ杯を重ねて 六
ナウ
咲けば散る定めと知りて咲く花か 志
オタマジャクシはやがて蛙に 執筆
2007年2月18日 首尾 於関戸学習室
二句表『かの子忌』
悲しみや深く華やぐかの子の忌 六魚
雨のマラソン春寒き朝 直子
ウ
外遊の都知事家族を伴いて 祐
腹掛けの下隠す札束 政志
ゆりかごに枇杷の実ゆれて子守歌 薫
泣いたおせんに木馬参らそ 直子
これがかのトロイの月に棹さして 明子
想いめぐらす秋の七草 實
ナオ
金木犀君の香りが恋しくて 薫
縒りを戻すもはや幾たびぞ 政志
この冬は新車売れ行き好調で 實
月光の滝凍てゝ耳だす 祐
東大の法学部出てニートです 直子
核の保有を感謝する民 明子
ナウ
温暖化もうちらほらと花便り 實
李白の一斗春の百扁 執筆
2007年2月18日 ヴィータ第三集会室
二十韻「古雛」
旧友の俤うかぶ古雛 峯田 政志
姫辛夷活ける部屋の一隅 藤尾 薫
春泥に犬の足跡ちりぢりに 古賀 直子
風のこどもがゆする吊り橋 杉浦 和子
ウ
鴨川の踊りの月を見においで おおた六魚
そろいの浴衣手に手をとって 梅田 實
草の戸に百夜通ひし轍あと 星 明子
フォルクスワーゲンローマ進出 玉木 祐
客人とエルアラメイン語りつつ 政志
まっかり酒あり馬乳酒もあり 薫
ナオ
高尾には天狗おわして冬銀河 和子
聖樹点灯あがる歓声 直子
燃えあがる思いに我が身焼きつくし 實
Wベッドに聞ける虫の音 六魚
眼前は湯の香たっぷり二十日月 祐
浅漬け大根旅の土産に 明子
ナウ
談合も必要悪さうそぶいて 薫
嫗の膝にうたたねの猫 政志
遠近の花はけぶりて濃く薄く 和子
磯の遊びに誘うつれづれ 直子
平成19年3月3日 永山集会室