無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

10月19日無名会

2008-10-27 22:13:35 | Weblog


今回は趣向を変えまして、10月19日に巻いた連句を2巻お届けしてみますね。
場所は聖蹟桜ヶ丘のヴィータの7階ワークショップで行われました。
出席は7人。
当日は日曜日で、人形劇の催し物や路上ライブの若者達、
お買い物などの人出が多く町はお祭のようでした。
何か心が浮き立ちましたがみなさんはいかがでしたか?

さて禎子さんは猫がお好きなようですね。
会員の中にも何匹か飼ってらっしゃるようですがあなたは猫派?犬派?


二句表 「猫のいる」                  

  猫のいる暮しがしたし鰯雲      自  秋    古谷禎子
    籬の菊をのぞく月影        場 晩秋    藤尾 薫

  青蜜柑どこにもゆけぬやまいにて   他 三秋    玉木 祐
    担任教師は丸坊主なり       他       梅田 實
  寄席通ひかけ声いつも悪い癖     自他      峯田政志
    頬かむりして小銭かぞえる     自 三冬    星 明子
  初夢は呼吸合い餅を搗ける父母    自 新年    坂本統一
    王子の城は白くはるかに      場         禎子
ナオ
  幽閉の美女は嘆きて糸紡ぐ      場           薫
    パパラッチから追われすり抜け   自他         裕
  メガネかけ裸が浜を埋めつくし    他           實
    月登りくる遠き夏富士       場   三夏     政志
  株式は米国発の乱高下        場          明子
    私はひとり流れ流れて       自          禎子
ナウ
  平穏を三世の諸仏に花の陰      自 晩春       統一
    揚げ雲雀鳴く棚田山里       場 三春       執筆


           
                          

   「穭田」 膝送り

  穭田の空青くして匂いあり        藤尾 薫
   兼業農家冬を待つ月          玉木 祐

  秋なすび同期の友と語らいて       梅田 實
   地酒呑みすぎみんなうとうと      峯田政志
  携帯のメロディ聞いて靴探す       星 明子
   のっそり起きる灰だらけ猫       坂本統一
  翻訳の絵本は並び北下風         古谷禎子
   仕事にするは実入りなさすぎ         薫
ナオ
  わが家にも結婚話持ち込まれ          祐
   忘れられない初恋の人            實
  海水浴浮気の虫に悩まされ           志
   月明るくて簾かかげる            明
  粛然と百鬼夜行の過ぎる音           一
   山道遠く負いし胡簶             禎
ナウ
  埠頭へと急ぐポルシェに花吹雪         祐
   土産にもらう鰆粕漬け            執筆


今回も俳名が揃わなくて見苦しいことをおわびいたします。
下書きの段階では揃っているのですがねぇ。何ででこぼこするのかしら???
「猫のいる」の巻ではご参考までに自 他 場をいれてみました。
ご感想をお聞かせ下さ~い。


連句通信127号

2008-10-18 22:29:59 | Weblog
連句通信127号
2008年10月19日発行

『連句的<筋書き>』     おおた六魚

『連句的<筋書き>』
 編集という仕事は面白いと思う。例えば和歌のアンソロジーで、どんな部立てをして、全体に春のどの歌をトップにし、どの歌で(最後の部は勅撰集でも一定していないが)しめるかには編者の思いがこもっていることだろう。
 それは『万葉集』の巻頭では、雄略天皇と云われる「籠もよ み籠持ちち・・」の長歌で、〆は家持の「新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事」。
『古今集』では「年の内に春はきにけりひととせをこぞとやいはんことしとやいはん」の在原元方にはじまり「道しらば摘みにもゆかむ住江のきしに生ふてふ恋忘れぐさ」の貫之で〆。
『後撰集』は藤原敏行「降る雪のみのしろ衣うち着つつ春来にけりとおどれかれぬる」ではじまり「恋ふるまに年のくれなばなき人の別やいとどとほくなりなむ」の貫之で終わる。『拾遺集』ではーとやっていくとキリがない、実は近年の私撰詞花集としての詩人大岡信の『折々のうた』について少し。
 これは週刊誌に連載した山本健吉の『句歌歳時記』と同じく約30年近く、1979年1月25日から連載し2007年3月31日までの足かけ29年、朝日新聞朝刊の第1面に連載していた詞花集であることは有名。新聞連載では塚本邦雄の詞花集もあったが、『折々のうた』は、朝日新聞創刊100周年記念の一つとして企画された。トップページにこのようなコラムが載るのは初めて、それは日本人が詩情に満ちた短い文芸を愛してきた、という歴史もあるが。幾度か休載したが、最終回は6,762回目に達し、約4,600首を集めた「万葉集」をも凌いだ。
 『折々のうた』は、内容としても、俳句・現代詩から漢詩・歌謡まで、ジャンルの枠を越え、詩歌の広場と評価されていたとのこと。わたしはそれを毎朝読むことはほとんどなく、ただ毎年岩波新書にまとめられたものをその都度楽しんで来た。 その新書版『折々のうた』はすべて春夏秋冬の四季に部立てされているが、巻頭は志貴皇子「石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも」で『折々のうた』第十の「僕が雪夜犬を枕のはし寝哉」杉山杉風で〆。続いて新書版『新折々のうた1』は
「橋一つ越す間を春の寒さ哉」夏目成美に始まり
『新折々のうた9』長谷川櫂「水の色すいと裂いたるさよりかな」に終わる。
一方講談社『ORIORINOUTA』の巻頭は「真木ふかき谷よりいづる山水の常あたらしき生命あらしめ」今井邦子で、〆は式子内親王「山ふかみ春とも知らぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水」となっている。(岩波でも、この他にハードカバーをだしているが、その首尾は見ていない)
 さて、大岡はこのアンソロジーについて「”折々のうた”と連句の骨法」という裏話を書いている。それを要約すればこうなるだろうか。
1・数えきれない日本の詩歌のなかから、何を採り何を省くかということは難しいし、毎回すぐれたものを選んだとしても、回数が限られている以上、どうしても割愛するものが出てくるのは避け難い。
2・そこでいろいろな人たちの短い詩句によって長い詩の一つの織物をつくる、と考えて見る
3・その織り方にはゆるやかであるけれどもある種の筋書きが出て来る。その筋書きに沿わない詩句はやむなく割愛することにしたい。
4・その筋書きには<連句>の方法を取り入れて見たい。予定調和にならない、図り難い面白さを作品配列に応用したい。
 つまり勅撰集のような四季別に並べる編集にしても、全体を貫く連句的<筋書き>を考えつつ詩句を選んで行きたい,と考えたのでしょう。この連載が始まって,直ちに此の<筋書き>を看破したのは、大岡信の連句仲間でもある井上ひさしだったそうです。
 さてその<筋書き>の編者が挙げているサンプルは以下の通りです。解説抜きで一部の詩句そのものを掲載順に列挙すると。
 <しみじみと田打ち疲れしこの夕べ
      畦をわたれば足ふるひけり>結城哀草果
  <ものの種子にぎればいのちひしめける>日野草城
  <相触れて帰りきたりし日のまひる天の怒りの春雷ふるふ>川田順
  <しら露も夢もこのよもまぼろしもたとへていへば久しかりけり>和泉式部

 最後に大岡信の一言。「楽しみとか遊びというのが人生ではいちばん大事です。(中略)詩というのはそう云う場合に、まぁ遊びであると同時に、おそろしく真剣なものです。


               

二句表「禿頭」   膝送り

 とんぼ来て吾が禿頭に挿頭しけり      坂本統一
  公達群れて映える初萩           古谷禎子

 博物館扉を閉ざす秋月に         おおた六魚
  記念切手を高値落札            古賀直子
 屋久島の世界遺産を探検す         玉木 祐
  なくしたものはジャケットの中        藤尾 薫
 新婚のモノクロ写真餅の花           統一
  選んだはずがどんとはずれた          禎子
ナオ
 消費税また上げようとお殿様          六魚
  この世のことは夢のまた夢          直子
 蝉時雨何処へさらわれいったやら         祐
  方丈の部屋じゅん菜の膳            薫
 賜わりし銀の猫をば童んべに          統一
  ずっしり重いからくりの箱           禎子
 太鼓打ち花見車に花飾り             祐
  盃に受く春の淡雪                薫

 二○○八年九月六日 首尾
    関戸公民館ワークショップルーム  


二句表「浮き世の夢」

 未ださめぬ浮き世の夢や西鶴忌         六魚
   目玉ギロリと蟷螂の斧             薫

 色変えぬ松伐る話月の座に           直子
   童の将棋またも引き分け           六魚
 胡同にも常の生業甦る             明子
   日々持ち歩く狼の護符             祐
 呑むばかり隠し砦の燗の酒           政志
   あの娘この娘と品定めして          直子
ナオ
 幾山河旧き写真も懐かしく           六魚
   政治家となる歌人の孫            明子
 蚰蜒を水槽に飼ふ十三歳           祐
   夏の露踏み独り逍遥             政志
 暗号にのの字のの字とある不思議        直子
   軌道に乗せたスパイ衛星           六魚
ナウ
 再会の話尽きない花の宿            明子
   ベレーの翁帰るうららか           政志

    2008年9月21日 ヴィータ第三会議室
  


二句表「秋燕」 

  いづくをかふるさとにせん秋燕        星  明子
   狗尾草の庭に出る月            玉木  祐 
ウラ                                           
  衣被剥きつ語らう幸せに           峯田 政志
 世界一周二百万とか            古賀 直子
  ガリガリと船底噛ぞる鱶の牙         おおた六魚
   蓬莱山に雲巻き起る                明
  産土に想いを祈る百度石               祐
   実直男にぶら下る癖                志
ナオ
 主夫業はお手のものです妻キャリア          直
   閨のうちまで準備万端               六
 納涼床紫式部千年紀                 明
   ビール乾杯月の楽殿                志
 笛の影媼の面うす笑う                祐
   尻餅ついて落す札入れ               直
ナウ
  花の雨幾夜変わらぬ風の音              六
  しゃぼん玉追う瞳輝く               明

    平成20年 9月21日 於 関戸公民館 

          



二句表「鯉の鼻」の巻   膝送り

 鯉の鼻曲りくっきり水澄むや          坂本統一
   草むらひそむ南蛮煙管            藤尾 薫

 月眺め浮れてめぐる四阿に           梅田 實
   下たなヴィオロンきりもなく弾く      おおた六魚
 手をつなぎ幼稚園児は賑々し          宮澤佳子
   大きな蕪を煮るは大鍋            古賀直子
 帰郷して餅花飾る嬉しさよ           峯田政志
   出来ちゃった婚親にゆるされ         玉木 祐
ナオ
 当世はおさん茂兵衛も死刑なし            薫
   夢と知りつつ覚めざらましを           統一
 夜も更けて無言に詣る祇園際            六魚
   氷の上の鱧に射す月               佳子
 骨太で安心しているメタボ腹            直子
   週に一回医者通いする               實
ナウ
 東には薄墨桜花万朶                 祐
   鄙の駅にもうららかな風             政志

2008年10月4日 首尾 
関戸公民館ワークショップルーム