連句通信115号 2007年4月15日発行
真白なるたんぽぽ ぽぽと咲きにけり
聖蹟記念館の公園の隅っこにしろばなたんぽぽが自生しているのをご存じでしょうか。
駐車場入口の左側と右側の道ばたに数株づつ、そして不思議なことにそこから百m位離れた桜ヶ丘駅行きバス停のポールが立っているほんのちょっとの土の上にも2、3株あるのです。それぞれの傍に黄色の蒲公英もありますから、花の咲いている時でないと駄目かも知れませんが一度見てやってください。
5年ほど前のことです。「おまえ、どこから来たの」と絮をつまんで帰り、プランターに播きました。雑草だから難なく育つと思ったのは間違えで雑草は大層自分勝手なもののようです。何度か種播を繰返し、やっと去年頃から真白な花を見せてくれるようになりました。
一七季(P226)に晩春 植物、濃紫の小花 同類‥地獄の釜の蓋 と載っている きらん草もやはりそんな雑草です。道端の石をどけて採って来たことがありました。庭ではだめなのかしらと思っていましたら今年あちこち散らばって濃い紫色の小さな花を咲かせています。石の脇で紫蘇の花のようなかわいいのを。石のそばが好きなんでしょうか
先頃新聞の情報欄に『雑草の話:於国立市立図書館 入場無料』とあったのでとんで行きました。若い県農業試験場技師という男性の話は具体的でおもしろかった。最後に「まだ時間が残っていますが、私が用意して来た話はこれでおしまいです。何か質問でも 皆さんのお話でも」と。すると一人のおばさんが(みんなおばさん、おじさんorおぢいさん、おばあさんばかり) 「私 おおいぬのふぐりが好きで土手から採ってきては庭に植えているのですけれど、なかなか雑草のようにびっしりとは咲いてくれないのです。芝生の代りに一面おおいぬのふぐりにしたいのですがー」
「 雑草ってそういう奴なんです」と講師の一言にみんな笑ってしまいました。それぞれ思い当たることをしてこの歳になったのですから。草花のことばかりでなく。 「ぼく いつも沼津で雑草の研究って言うとばかにされますのに、今日は雑草の好きなみなさんに聞いてもらってとても嬉しい」。そう言って黒い鞄に幾冊も本を詰めてお辞儀なさいました。
そんな訳で私はこのところ下ばかり見て〈多摩の春〉を歩いています。 (杉浦和子)
二句表「節句の川」
風やさし桃の節句の川の色 六魚
おもたせもあり集ふ釣釜 實
ウラ
石蹴って家までつけば蛙ゐて 明子
所在なき日の魚の腸ぬく 祐
月雲に単衣の漢胴間声 政志
夕顔めでる白き面差し 薫
混浴も一寸羞かし超ボイン 直子
ナースキャップはピンとつっぱり 和子
ナオ
ご臨終辞世はつひに未完成 六魚
顔の知らない兄弟がゐる 實
うそはゐてほんとはおらず鷽を買ふ 祐
唇拭ひて冬籠りする 明子
化粧して鏡に語る恨み言 薫
恋の古傷ゑぐる秋霖 政志
ナウ
月光を両手に受けて爽やかに 和子
都庁賑はふ名残狂言 直子
悪童の面影消えず地酒酌む 實
ハグも慣れたる外国暮らし 六魚
濠青く千鳥ケ淵の花筏 祐
田打ちに遠く鍬の光れり 明子
2007年3月3日 関戸公民館
十二調「大福」 膝送り
大福の塩梅よくて彼岸入り 杉浦和子
ポプラの絮の舞って行く道 梅田 實
春の暮眼の痒き今日ならむ 玉木 祐
時代小説半ばで伏せる 星 明子
月天心風林火山の旗なびき 峯田政志
ほうとう肴濁り酒酌む 藤尾 薫
血の色のルビーの指輪うばいとり 古谷禎子
抱きしめられて蛸の吸盤 おおた六魚
割れ壺に大枚はたく蚤の市 古賀直子
息子のお古さりげなく着る 和子
老生の裏声こもる花の宵 實
ラップで終わる春の別れに 祐
十二調「紅の濃くなる」
薔薇の芽の紅の濃くなる日差しかな 古賀直子
かぎろいの中集う人々 杉浦和子
林越し田打の音のひびききて 梅田 實
おにぎり弁当梅干としゃけ 玉木 祐
月上る旅の途中の露天風呂 星 明子
西鶴忌には偲ぶ色街 峯田政志
難波では金がうらみの世話物で 藤尾 薫
撥の乱れに合わす相方 古谷禎子
ともかくもまあまあまあとなだめられ おおた六魚
出世コースを振った酒癖 直子
花の塔黒人霊歌聞こえくる 和子
どこかもの憂げ春のたそがれ 實
十二調「黄水仙」
来し方やうつむきゆれる黄水仙 藤尾 薫
シャボン玉飛ぶ上野公園 古谷禎子
イースター聖書は文語体ならむ おおた六魚
津軽訛の通訳をする 古賀直子
あやとりの梯子で登り月をとる 杉浦和子
あの子想えばひぐらしの鳴く 梅田 實
身に入みて追われるように山降りる 玉木 祐
始めたばかりのロハス生活 星 明子
夏安居で竹馬の友に再会し 政志
人の噂も七十五日 薫
花衣古代縮緬貼り交ぜて 禎子
麝香揚羽の消ゆる夕闇 六魚
十二調「髪に光る」
連翹や少女の髪に光る風 おおた六魚
白蝶を追う軽き足音 古賀直子
浪速場所波乱含みに始まりて 政志
詰まったパズルぱらりと解ける 杉浦和子
ドドドドと波の音する保養先 古谷禎子
林の上にのぞく夕月 梅田 實
鳥兜恋のもつれは紫に 六魚
ザイル切らんとナイフ引き抜く 星 明子
新聞のナイロン談議にぎにぎし 玉木 祐
応募が当たり海外旅行 藤尾 薫
華府の花投手の肩に霏々と降り 直子
門前町は春のにぎわい 和子
以上 十二調 首尾 於 関戸公民館第3学習室
文韻四吟歌仙「都大路」
発句
日雷都大路に轟けり 杉浦和子
群がり咲ける白きどくだみ 杉浦光夫
幼犬のしつけ教室誘われて おおた六魚
袱紗捌きの目にもあざやか 星 明子
秋暑し陽落ち一服月もよし 夫
郷里の姉から届く自然薯 和
ウ
爽涼に隊商の行くカラコラム 明
お釣り手渡す銅貨幾枚 魚
性も別財布も別の夫婦です 和
喧嘩しながら金婚式なり 夫
π計算二千億桁とうに越え 魚
輪廻転生一炊の夢 明
月冴ゆる思いは深し壇之浦 夫
老女語りぬ狐火のこと 和
十年後誰座るやら知事の席 明
トランペットの音は上ずり 魚
ひーよひよ囀りを聞く花梢 和
おぼろの刻を遊び暮らす児 夫
ナオ
多摩川に阿蘭陀下りの帽子影 魚
教会の鐘石の坂道 明
昔から豊かな土地で門構え 夫
皇孫誕生寿ぎまつる 和
標野行き草刈るひとに名を問いし 明
女だてらに名乗る莫連 魚
指先がおどろと触れしぬくき肌 魚
つもの通りチャンポンでやる 夫
訳ありの象の卵を抱く駝鳥 魚
月は黙して下界照らせり 明
懐かしき野原に咲きし赤まんま 夫
木瓜の実の酒呆けにきくとか 和
ナウ
ドクターは秋狂言に堪能し 魚
修学旅行車窓から富士 和
三体の黒き御佛礼拝す 夫
遠回りして覗く古書店 夫
舞台には鬼舞う影の花篝 魚
友と過ごして春は闌 明
起首2006年7月2日
満尾2006年12月10日
真白なるたんぽぽ ぽぽと咲きにけり
聖蹟記念館の公園の隅っこにしろばなたんぽぽが自生しているのをご存じでしょうか。
駐車場入口の左側と右側の道ばたに数株づつ、そして不思議なことにそこから百m位離れた桜ヶ丘駅行きバス停のポールが立っているほんのちょっとの土の上にも2、3株あるのです。それぞれの傍に黄色の蒲公英もありますから、花の咲いている時でないと駄目かも知れませんが一度見てやってください。
5年ほど前のことです。「おまえ、どこから来たの」と絮をつまんで帰り、プランターに播きました。雑草だから難なく育つと思ったのは間違えで雑草は大層自分勝手なもののようです。何度か種播を繰返し、やっと去年頃から真白な花を見せてくれるようになりました。
一七季(P226)に晩春 植物、濃紫の小花 同類‥地獄の釜の蓋 と載っている きらん草もやはりそんな雑草です。道端の石をどけて採って来たことがありました。庭ではだめなのかしらと思っていましたら今年あちこち散らばって濃い紫色の小さな花を咲かせています。石の脇で紫蘇の花のようなかわいいのを。石のそばが好きなんでしょうか
先頃新聞の情報欄に『雑草の話:於国立市立図書館 入場無料』とあったのでとんで行きました。若い県農業試験場技師という男性の話は具体的でおもしろかった。最後に「まだ時間が残っていますが、私が用意して来た話はこれでおしまいです。何か質問でも 皆さんのお話でも」と。すると一人のおばさんが(みんなおばさん、おじさんorおぢいさん、おばあさんばかり) 「私 おおいぬのふぐりが好きで土手から採ってきては庭に植えているのですけれど、なかなか雑草のようにびっしりとは咲いてくれないのです。芝生の代りに一面おおいぬのふぐりにしたいのですがー」
「 雑草ってそういう奴なんです」と講師の一言にみんな笑ってしまいました。それぞれ思い当たることをしてこの歳になったのですから。草花のことばかりでなく。 「ぼく いつも沼津で雑草の研究って言うとばかにされますのに、今日は雑草の好きなみなさんに聞いてもらってとても嬉しい」。そう言って黒い鞄に幾冊も本を詰めてお辞儀なさいました。
そんな訳で私はこのところ下ばかり見て〈多摩の春〉を歩いています。 (杉浦和子)
二句表「節句の川」
風やさし桃の節句の川の色 六魚
おもたせもあり集ふ釣釜 實
ウラ
石蹴って家までつけば蛙ゐて 明子
所在なき日の魚の腸ぬく 祐
月雲に単衣の漢胴間声 政志
夕顔めでる白き面差し 薫
混浴も一寸羞かし超ボイン 直子
ナースキャップはピンとつっぱり 和子
ナオ
ご臨終辞世はつひに未完成 六魚
顔の知らない兄弟がゐる 實
うそはゐてほんとはおらず鷽を買ふ 祐
唇拭ひて冬籠りする 明子
化粧して鏡に語る恨み言 薫
恋の古傷ゑぐる秋霖 政志
ナウ
月光を両手に受けて爽やかに 和子
都庁賑はふ名残狂言 直子
悪童の面影消えず地酒酌む 實
ハグも慣れたる外国暮らし 六魚
濠青く千鳥ケ淵の花筏 祐
田打ちに遠く鍬の光れり 明子
2007年3月3日 関戸公民館
十二調「大福」 膝送り
大福の塩梅よくて彼岸入り 杉浦和子
ポプラの絮の舞って行く道 梅田 實
春の暮眼の痒き今日ならむ 玉木 祐
時代小説半ばで伏せる 星 明子
月天心風林火山の旗なびき 峯田政志
ほうとう肴濁り酒酌む 藤尾 薫
血の色のルビーの指輪うばいとり 古谷禎子
抱きしめられて蛸の吸盤 おおた六魚
割れ壺に大枚はたく蚤の市 古賀直子
息子のお古さりげなく着る 和子
老生の裏声こもる花の宵 實
ラップで終わる春の別れに 祐
十二調「紅の濃くなる」
薔薇の芽の紅の濃くなる日差しかな 古賀直子
かぎろいの中集う人々 杉浦和子
林越し田打の音のひびききて 梅田 實
おにぎり弁当梅干としゃけ 玉木 祐
月上る旅の途中の露天風呂 星 明子
西鶴忌には偲ぶ色街 峯田政志
難波では金がうらみの世話物で 藤尾 薫
撥の乱れに合わす相方 古谷禎子
ともかくもまあまあまあとなだめられ おおた六魚
出世コースを振った酒癖 直子
花の塔黒人霊歌聞こえくる 和子
どこかもの憂げ春のたそがれ 實
十二調「黄水仙」
来し方やうつむきゆれる黄水仙 藤尾 薫
シャボン玉飛ぶ上野公園 古谷禎子
イースター聖書は文語体ならむ おおた六魚
津軽訛の通訳をする 古賀直子
あやとりの梯子で登り月をとる 杉浦和子
あの子想えばひぐらしの鳴く 梅田 實
身に入みて追われるように山降りる 玉木 祐
始めたばかりのロハス生活 星 明子
夏安居で竹馬の友に再会し 政志
人の噂も七十五日 薫
花衣古代縮緬貼り交ぜて 禎子
麝香揚羽の消ゆる夕闇 六魚
十二調「髪に光る」
連翹や少女の髪に光る風 おおた六魚
白蝶を追う軽き足音 古賀直子
浪速場所波乱含みに始まりて 政志
詰まったパズルぱらりと解ける 杉浦和子
ドドドドと波の音する保養先 古谷禎子
林の上にのぞく夕月 梅田 實
鳥兜恋のもつれは紫に 六魚
ザイル切らんとナイフ引き抜く 星 明子
新聞のナイロン談議にぎにぎし 玉木 祐
応募が当たり海外旅行 藤尾 薫
華府の花投手の肩に霏々と降り 直子
門前町は春のにぎわい 和子
以上 十二調 首尾 於 関戸公民館第3学習室
文韻四吟歌仙「都大路」
発句
日雷都大路に轟けり 杉浦和子
群がり咲ける白きどくだみ 杉浦光夫
幼犬のしつけ教室誘われて おおた六魚
袱紗捌きの目にもあざやか 星 明子
秋暑し陽落ち一服月もよし 夫
郷里の姉から届く自然薯 和
ウ
爽涼に隊商の行くカラコラム 明
お釣り手渡す銅貨幾枚 魚
性も別財布も別の夫婦です 和
喧嘩しながら金婚式なり 夫
π計算二千億桁とうに越え 魚
輪廻転生一炊の夢 明
月冴ゆる思いは深し壇之浦 夫
老女語りぬ狐火のこと 和
十年後誰座るやら知事の席 明
トランペットの音は上ずり 魚
ひーよひよ囀りを聞く花梢 和
おぼろの刻を遊び暮らす児 夫
ナオ
多摩川に阿蘭陀下りの帽子影 魚
教会の鐘石の坂道 明
昔から豊かな土地で門構え 夫
皇孫誕生寿ぎまつる 和
標野行き草刈るひとに名を問いし 明
女だてらに名乗る莫連 魚
指先がおどろと触れしぬくき肌 魚
つもの通りチャンポンでやる 夫
訳ありの象の卵を抱く駝鳥 魚
月は黙して下界照らせり 明
懐かしき野原に咲きし赤まんま 夫
木瓜の実の酒呆けにきくとか 和
ナウ
ドクターは秋狂言に堪能し 魚
修学旅行車窓から富士 和
三体の黒き御佛礼拝す 夫
遠回りして覗く古書店 夫
舞台には鬼舞う影の花篝 魚
友と過ごして春は闌 明
起首2006年7月2日
満尾2006年12月10日