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デ・キリコ展

2014-12-20 | アート&クラフト

都内に出かける用事ができたので、その前に「キリコ展」を見てきました。

◆キリコをまとめて見るのは初めて

会場はパナソニック汐留ビルの4階。新橋駅から地下街を通って行けます。夕方だったのでちょうど季節のイルミネーションがきれいでした。

 ◆4階ミュージアムの窓から

うっかりするとミュージアムとは気がつかない(ショールームみたい)ような入口から受け付けを通って入場。展示は大きく5つの部屋に分かれています。

 

最初の部屋は「形而上絵画の発見」。まさに「キリコ」です。

◆謎めいた憂愁

なんでしょうこの妙な感じは。遠近法が普通じゃない(消失点はどうなってるの?)。眼と頭が混乱する絵です。そして奥の石膏像は昔デッサンでよく描いたヘルメス像ですが、こんなに不気味なヘルメスは初めて見ました。31才の時の作品ということですが、そんな若いうちにもうこの画風になっていたのか。。。

 

しかし次の部屋「古典主義への回帰」に入ると、今度は見なれた「キリコ」じゃない作品ばかり。

ルノワール風の「裸婦」やセザンヌ風の「林檎と葡萄」、マグリットみたいな「家具」。黙って見せられたらとてもキリコとは思えません。

 

◆林檎と葡萄のある静物

油彩と一緒に素描が多数展示されていましたが、これがけっこういい感じでした。特にキリコが好きだったという馬、猫、犬の素描は柔らかく味があって生命感があります。

 

続く「ネオ・バロックの時代」に入るとまた画風が変わってきます。

◆「赤と黄色の布をつけた座る裸婦像」

◆田園風景の中の静物

他にもきわめて写実的な風景画や肖像画など、最初に見た「形而上絵画」を描いた人物とは思えません。

 

そして次の「新形而上絵画」へ。何が「新」かというと、自分の作品をもう一度リメイクしたものが一杯あるそうです。

イメージ 10

◆不安を与えるミューズたち(同名のブロンズ像もありました)

◆吟遊詩人

またここに戻ってきたのか、という感じですね。しかしすごい変わりよう。何かが変わる時はけっこうなエネルギーがいると思うのですが、70歳を超えてこの創作意欲はどこからきたのか。

 

最後は「永劫回帰」ということで、う~ん、もはややりたい放題?

◆燃えつきた太陽のあるイタリア広場

◆神秘的な動物の仮面

でも何だか力が抜けて飄々とした感じがします。絵で遊んでいるというか。。。「神秘的な水浴場、散策からの到着」(画像なし)なんか、相原コージのマンガを連想しました。

 

こうしてみるとキリコという画家の画風の変化がよくわかる展覧会でしたが、もうちょっと若いころの代表的な作品が見たかった気がします。ただ意外とよかったのがブロンズ彫刻(こちらも画像なし 残念)。人物だけでなく、キリコの描いた広場や建物、室内を立体にしたら面白そうだな~と思いました。

 

◆先ほど上から見たイルミネーションで1枚

(2014.12.18)

 


チューリッヒ美術館展

2014-12-04 | アート&クラフト

 行こうと思いつつずっと行けなかった「チューリッヒ美術館展」を見てきました。

◆秋空の国立新美術館

 

終了間際なので混雑を覚悟して行きましたが、思いのほか空いていてすんなり入場口へ。

 ◆こういうのを見るとわくわくしてきます

 各ブースの展示は「巨匠の部屋」と「時代の部屋」に分けられて交互に並べられており、わかりやすくすっきりしていました。例えば「モネ」の部屋」の次が「ポスト印象派」の部屋でゴッホ、ゴーギャン、セザンヌが見られるというふうに。

 

さて「モネ」の部屋では今回の目玉作品である巨大な「睡蓮」が目を引きます。

◆モネ「睡蓮の池、夕暮れ」 200×600㎝!

確かにこれは大作!

色調やタッチは今年2月の「モネ、風景を見る目」展(国立西洋美術館)で見たような一連の「睡蓮」とはだいぶ印象が違います。晩年の作(亡くなる4年前)だからでしょうか。やや暗めで睡蓮や水面も曖昧模糊とした感じ。橋もボートも女性もいません。もはや抽象絵画に近いといったら言い過ぎでしょうか?

このころのモネは白内障で視力が低下し、さらに奥さんや子ども亡くしていたそうです。そんな思い出も込めてまさしく「印象」を描きつづったのか?

同じ部屋に展示されていた「積み藁」や「国会議事堂」の方は一目でモネらしい明るい「光」が感じられました。

 

次の「ポスト印象派」の部屋にはゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ルソーの作品。

◆ゴッホ「サント=マリーの白い小屋」

◆ルソー「X氏の肖像」 いつもながらいい味?

 

「ホドラー」の部屋と「ナビ派」の部屋はスイスの作家ホドラーとヴァロットンに重点が置かれた展示でしたが、う~ん、どうもこの二人はあまり好みじゃない。なんだか不安にさせる絵というか、のっぺりしているというか。。。スイスでは国民的作家なんでしょうがどうも。

 

さて「ムンク」の部屋でいちばん魅かれたのはこちら。

◆ムンク「冬の夜」

これって寒くて冬が長い雪国の人ならではの絵だと思います。自分も信州生まれなのですが、しゃべりたくないほど冷たい空気、重苦しい空、音のしない世界、そんな雰囲気が伝わってきます。

 

「フォービズムとキュビズム」の部屋ではピカソがゴヤの「裸のマハ」をもとに描いた「大きな裸婦」が面白かった。ピカソが描くとこうなるのか。

◆ピカソ「大きな裸婦」

 ◆ゴヤ「裸のマハ」(プラド美術館) 

 

自分はこのあとの「クレー」の部屋、「抽象絵画」の部屋、「シャガール」の部屋、「シュルレアリズム」の部屋が気に入りました。

 ◆クレー「深淵の道化師」 どこか切ない。。。

 ◆シャガール「パリの上で」 まさにシャガールの色

◆マグリット「9月16日」 「し~ん」という音が聞えてきそう(?)。今回いちばんじっくり見ていた作品。マグリットは大好きです。

 

最後はスイスの彫刻家「ジャコメッティ」の部屋。独特の細長い人物像はジャコメッティならでは。ずっと絵画を見てきた最後にジャコメッティとは面白い構成。しかしこの垂直方向へのこだわり、すごいな~。

 ◆ジャコメッティ「立つ女」 (!)

 

サブタイトルの「印象派からシュルレアリズムまで」の通り、19~20世紀にかけての近代美術の流れにそった展示で、各部屋のテーマもシンプルでわかりやすい美術展でした。ただどちらかというと小品が多く、キャッチコピーの「すべてが代表作」というのはちょっと大げさのような。。。オルセー美術展を見たあとだからかな?

 

 ◆展示を見たあとはミュージアムショップへ(ここのショップは広くてグッズも幅広く揃えてあり楽しい)

◆「日展」も開催中のためか、ロビーは大勢の人で賑わっていました

 

さて来年の新国立美術館はルーヴルとマグリットで始まるようで、特にマグリットが楽しみです。

(2014.12.03)