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楽園のカンヴァス(原田マハ)

2016-01-03 | コミック&Book

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、この三が日は久々に読書三昧。昨日は読み始めた「楽園のカンヴァス」(原田マハ)に引きずり込まれ、興奮しながら深夜までかかって一気読み。

最近読んだ本の中では断トツの面白さでした。

こんなブログを書いているのにまだ読んでなかったのか!と言われそうですがお恥ずかしい。本当にもっと早く読めば良かった。

アンリ・ルソーとパヴロ・ピカソの秘密、真贋鑑定の行方、凝った構成に伏線と謎、そして作者のキュレーターの経験を生かした細部のリアルな表現。終盤の鑑定シーンでの、「この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが。・・・・それだけです。」という言葉にはやたら感動して思わず目が霞みそうに。

欲を言えばもう少し人間関係や謎解きについて掘り下げてもらいたかったのと、モノクロでもいいので物語に登場する絵画の図版があればよかったのですが、それはほんの些細なこと。傑作だと思います!

(※作中に登場する絵画についてまとめてくれたページはこちら)

 

そういえば、ルソーの作品として本編に出てくる「詩人に霊感を与えるミューズ」は以前プーシキン美術館展に行った時に見ていましたし、ルソーの「密林モノ(?)」の絵は昔からけっこう好きでした。若いころにマゼールの「春の祭典」のLPジャケットを見たのがきっかけだったと思います。

◆マゼール指揮ウィーン・フィルの「春の祭典」 第2部「いけにえ」のティンパニの連打の異常な遅さが衝撃でした。

 

あらためてルソーを見に行きたくなってしまいました。MoMa(ニューヨーク近代美術館)や大原美術館にはおいそれと行けないので、国立近代美術館か世田谷美術館、まだ行ったことのないポーラ美術館かな?

(2016.01.03)

 

 

 

 

 

 

 

 


星野之宣「ヤマタイカ」

2014-08-18 | コミック&Book

いつもこの季節になると本棚から取り出して読み返してしまうのがこの「ヤマタイカ」。そのたびにスケールの大きさ、大胆な構成、ストーリー展開、登場人物、知識、そして圧倒的な「画力」に引き込まれてしまいます。

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◆星野之宣「ヤマタイカ」全6巻(1986-1991)

卑弥呼、邪馬台国、神話といった古代史の謎をめぐる物語がしだいに発展し、仏教の四天王たちと対峙しながら東大寺大仏殿での壮絶な戦いに致る第1部「東遷編」。

超巨大銅鐸「オモイカネ」による戦艦大和復活、日本各地の火山の噴火、大和とアメリカ軍の対決、日本中の民衆を巻き込みながらの「火の民族」の「マツリ」が燃え上がるまでの怒涛の第2部「東征編」。

こうして書くと荒唐無稽に思えるかもしれませんが、むしろリアルにさえ感じるのは、諸学説をもとにした綿密な取材と作画のなせるわざでしょう(これは星野さんの他の作品にも言えることですが)。

伝奇、古代史、SF、そして邪馬台国好きの方には一読をお勧めします。

なお邪馬台国、卑弥呼などについてはすでに江戸時代から多くの学説があり、新たな発掘調査や発見も報じられているので、興味のある方はこちらをご覧ください

→http://yamatai.cside.com/index.htm

さて今回はストーリーや登場人物ではなく、自分が特に好きな場面(画)についていくつか紹介しておきます。

まずは随所に登場する「火山噴火」。これが素晴らしい。

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◆この噴煙の描き方!

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◆富士山(!)の噴火

自分は中学生のころ浅間山の麓の町で実際に轟音と立ち上る噴火を経験しました。ですからこれらの噴火シーンには血が騒ぎます(まさに火の民族?)

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◆昭和48年の浅間山噴火

続いては第1部のクライマックス、東大寺での卑弥呼(神子)と広目の二人による空中戦の場面。

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◆東大寺の鴟尾を見降ろし瓦が舞い散る

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◆屋根から回廊を駆け巡る空中戦

あの世界遺産東大寺の上空で卑弥呼と広目(天)がサイキックバトルをやるわけです。しかもこのあと大仏が動き出し東大寺は火に包まれて崩れ落ちるというとんでもない場面が。。。やはりこの卓越した画力あってでしょう。大友克洋氏の「童夢」に出てくる高層住宅での空中戦を思い出します。

そして物語の最後、東京湾ですべてのエネルギーが放出される場面。

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◆東京湾に巨大な火(水)柱が

このあと数ページに渡って東京が崩壊していく様が描かれるのですが、初めて読んだ時はこのページでしばらく手が止まって唸ってしまいました(この辺も大友さんのAKIRAを思わせますが)。

とにかく全編通して星野さんのこの作品にかける思いが伝わってくる傑作です。この作品の前身となる「ヤマトの火」(未完)も最近復刻されていますので合わせて読んでみるのもいいでしょう。

「ヤマタイカ」の流れをひく「宗像教授伝奇考」や星野さんのSFもの、恐竜ものも大好きなのですが、それはまたのちほど。