京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

日曜美術館『円空 』

2013-10-18 07:02:46 | 美術・博物館

私は以前より、円空の仏像に大変興味があり、梅原猛の『歓喜する円空』(2006)を読み、円空の仏教による衆生救済に感銘をうけました。
定年退職を機に、今年5月よりブログをはじめましたが、円空についていつか書いてみようと思っていました。

以前、日曜美術館で、『円空 飛騨巡礼の旅』が放送されました。梅原猛氏も出演し、円空について語っていましたので、仏像とあわせて、紹介します。

【番組案内】
円空は350年前、旅に生き、天災や飢饉などに苦しむ人びとのために、仏像を彫り続けた遊行僧です。生涯に12万体もの仏像を彫ったと伝えられ、現在5千体以上が確認されています。断ち 割った木の肌合いを生かし、ノミ跡を大胆に残した荒々しい造形と、慈愛に満ちた微笑み、仏像の常識を覆す傑出した独創性を持つ仏像は、円空仏と呼ばれ、各地で大切に守り継がれてきました。
円空は現在の岐阜県に生まれ、30歳を過ぎてから仏像を彫り始めます。その後、東北、北海道 へと修行を続けながら仏像を作った円空が、旅の中で繰り返し訪れたのが岐阜県飛騨地方です。高山市を中心に飛騨には円空と人々との結びつきを伝える仏像が数多く残されています。
番組は、型破りな造形はいかにして生み出されたのか?。なぜ12万体もの像を造ろうとしたのか?。円空 に強く心惹かれている東洋文化研究家のアレックス・カーさんが初冬の飛騨に円空と地域の 人々との結びつきを訪ねるというものです。



アレックス・カーさん(東洋文化研究家)




円空(実際の円空はボロボロの衣をまとっていたはずです)




初期の頃の作品 八面荒神像



千光寺の三十三観音立像







観音座像



哲学者梅原猛氏
私はこの人の円空の著作を読み、深く円空にひかれました。







円空が書いた膨大な和歌1600首







和歌を読みといた梅原氏は、人は全部仏になれるというのが円空の思想だと、そして、
ボロボロの衣を着て、日本にあちこちにいる救われぬ人間に対する供養で仏像を作り歩いたと言います。名も知れぬ人に仏教の思想を教えるという一念で作られたものだと。
円空は本当の仏教のあり方を示したとも梅原氏は言います。
あとは、語るより、円空の慈愛にあふれた仏像を御覧いただきたいと思います。



































































いかがでしたでしょうか。慈愛の微笑みの仏像は、他にもたくさんありますが、円空の仏像は独特のやさしい表情をしています。災害や飢饉、病に苦しむ多くの救われぬ衆生にとって、円空仏像は大きな救いになったのではないでしょうか。

円空が亡くなって300年以上経った現在でも、災害や、病といった基本的な状況は変わりありません。たしかに医療は格段に進歩し、昔よりは災害に強い住環境にもなりました。しかし、東日本大震災のように、なすすべがないような巨大地震を経験しました。
医療は進歩しましたが、死を避けることはできません。
現代はあきらめきれない時代だと、誰か言っていました。しかし、あきらめざるを得ないとき、円空仏のような救いは、現在では何なのでしょうか。