テレビの生番組で、わが目を疑うまさかの出来事に出くわした。私が中学生の頃から知っている時代劇スター里見浩太郎が、舞台の上で悪役に斬られた(ように見えた)。それもギャグでなく。
NHK総合テレビ土曜日(4月14日放映)の「歌謡小劇場」視聴中のこと。里見浩太郎扮する松平長七郎が、松井直美扮する悪徳金貸しの手下共を相手に颯爽と立ち回りする場面。まさに見せ場だった。
里見御大、左右の悪漢達をバッタバッタと斬り伏せ、客席に向かって大小の刀を振りかざして見得を切ったその転瞬、背後に残って居たひとりの悪漢(斬られ役で有名な福本清三師)が、 大上段に振りかぶった刀を振り下ろした。ところが御大それを避けない。身をかわして彼を斬り伏せ、見得を切る手順がワンテンポ跳んでしまったのだ。刀は巧みにご本人に触れないよう振り下ろされたものの、位置とタイミングは明らかに里見長七郎が悪漢にバッサリ斬られている。あってはならないことだ・・・
斬った方は動揺を隠せなかったが、御大はまったく気づかず堂々としている。見間違いかと思って一緒に観ていた妻に確かめたが、彼女もしつかり観ていて、唖然としていた。生番組で悪漢のひとりを斬り残し、御大が切られてしまった。
主役は東映時代劇以来、映画・テレビの時代劇ドラマで数え切れないほどの立ち回りをこなしてきた大スター。対する悪漢役の俳優達は殺陣のプロ、とりわけ斬った人は、時代劇になくてはならぬ殺陣の達人福本清三。斬られ役では名人と言われる俳優さん。
里見御大は76歳。立ち回りの動きに往年のキレが見られないのは致し方ない。一方の斬られ役の福本氏は60歳台で東映出身、16歳から殺陣人生一筋の名人。日頃殺陣の練習を怠らず、動きに年齢を感じさせないことで定評あったという。たまたま生じた主役の殺陣の手順忘れ、生番組ゆえに隠しようがなかったのだろう。
歌手とかお笑い芸人を交えた演芸番組の舞台、セリフのとちりもご愛敬になっている。それが観客や視聴者の笑いを誘っているのだから、主役が斬られたように見えてもどうということはない。ただ、珍事ということでしかない。
これとちがって、録画の録り直しがきく大河ドラマ「平清盛」が、脚本・考証・演出・演技の全てにわたってお粗末なのはどうしたことだろう。制作の分野で、何かが起こっているとしか思えない。昔日のNHK大河ドラマを知る者にとっては、年々質と内容が低下しているのは残念なことだ。
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