樹齢700年と推定される大クスノキ。胸高直径はほぼ3m、高さは18mにも及ぶという。日本の気候風土に適していてしかも病虫害に強いクスノキは、国内に巨樹、大樹がいくらでもあるが、此処のものは古さといい姿といい、他に抜きん出ているように思う。
この地点の海抜は8.5m。古代には、海に面する台地の先端部であったこの辺り、中泉という地名から推測すると、湧水に恵まれた場所だったのかもしれない。水はけがよくて水が豊かという、滅多にない条件に恵まれた場所が、この街に貴重な自然のシンボルをもたらしたのだろうか。
今日、全国至るところの都市には似たかよったかのシンボルタワーが乱立している。なかには景観破壊と言ってもよさそうな建築物も多々見受けられる。建物は高ければ良いというものではない。
樹木は、それが風土に適うものなら、景観を損なわない。シンボルが樹木であって、しかもそれがJR東海道線の駅前に鎮座し、半径10mもの枝葉をひろげているのは、他所に例がなさそうだ。
もともとこの場所は善導寺というお寺の境内地の一角だったという。土地区画整理事業の施行にともなって寺院は他所へ移転し、楠だけがそのまま残った。
少年の頃、私は知り合いの家を訪ねるため、当時の国鉄磐田駅に降りることがしばしばあったが、この樹の存在をまったく知らなかった。寺院内にあったからだろう。
葉の茂り具合や枝の張り具合を見ると、まだこれから数百年は生命を永らえそうだし、そうあって欲しいと切に願っている。
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