道々の枝折

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熱中症より怖いもの

2018年08月01日 | 健康管理
熱中症が怖いといっても発症のピー
クは7月末から8月初め、長くても9月までの3ヶ月の間だけのこと。
それに対して、老人(特に男性)が年中怖れなければならないのは、その名もおぞましい加齢性サルコペニアだ。加齢に伴う諸々の疾病の引き金になる身体の状態らしい。

詳しくはスマホでググっていただくとして、要は性ホルモンの減少に伴う、筋肉の衰えた状態である。男性は女性より筋肉の絶対量が多いから、衰えの落差も大きくなるらしい。

60歳を過ぎた老人は、普通の生活を
しているだけでは、筋肉量の減少を免れないという。ウォーキング程度では筋肉の減少を止められないようだ。
加齢性サルコペニアは筋肉の絶対量の少ないインナーマッスルに始まり、アウターマッスルに及ぶといわれている。緩慢に進行するから、自覚は難しいとされる。
 
下肢、上肢、体幹のアウターマッスルと体幹のインナーマッスルに満遍なく負荷をかけるトレーニングを続けることで、筋肉量の低下を防ぐことができるという。今や老人は、積極的に筋トレを続けなければ、身体の健常を保てないらしい。
 
アルコールは筋トレの効果を30%
減少させるという。筋肉の分解を促進する作用があるようだ。
左党の老人は、節酒日を増やすしかないだろう。毎晩晩酌という生活習慣は、今日では即アウトである。間違いなくサルコペニアを助長する。
 
加齢性サルコペニア対策は、考えようでは、老人男性の健康増進に好い効果をもたらすかもしれない。
テレビでは、夏の間中毎日、老人に「小まめに水を摂って」と呼びかけているが、年中「小まめに筋トレをして」と呼びかける方が、国民の保健にはより効果が高く、国の医療費抑制の目的にも適うのではないか。
 
戦後のある時期から糖尿病罹患者が激増したのは、国民がそれまで日常的に担ってきた肉体労働の量が、全体的に減り始めた時期と一致しているように見える。肉体労働が減って、それに伴う弊害や疾病は減ったが、筋肉の活動の減少が新たな疾病を招き、その現象が現れたのではないかと素人考えしている。何事も、好いこと一辺倒というものはない。
 
敗戦の主因を知った日本の産業は、平和になるや否やアメリカの産業に倣って機械化・自動化を推し進め、作業者の肉体労働は戦前と比べ軽減の一途を辿った。最も重労働の職場だった土木・建設の現場で重機の導入が進み、主作業はオペレーターの操る建設機械が担うようになった。
 
農業でも機械化は進み、水田耕作に付随する重労働は飛躍的に減った。漁業でも、機械化は著しく進んだ。
また、テレビが普及し始めて以降、家庭には電気洗濯機・電気冷蔵庫・掃除機が普及し、主婦の家事労働は劇的に減った。自家用車も生活に伴う労働を減らすことに大きく寄与している。
  
職場でも家庭でも、肉体労働は戦前の時代と比べると極端に減少した。戦後の日本人は、長い間の肉体労働から解放されたのだ。
 
筋肉は負荷労働の量と直結している。肉体労働が減った結果筋肉量が減り、それが糖の代謝に影響し、糖尿病患者の増加につながったと見るのは素人考えだが、加齢性サルコペニアも、日常生活で肉体労働が減ったことと無関係ではなさそうだ。
 
童謡の「船頭さん」の時代は、60歳の船頭が櫓で渡し舟を漕いでいた。船外機が櫓櫂船から肉体労働を駆逐してしまい、更に交通機関と橋の整備が渡し舟を無用のものにした結果、筋肉隆々の櫓櫂船の船頭さんはこの国から姿を消した。
 
今や老人は、積極的に肉体労働をしなければならず、筋トレという肉体労働に励まなくてはならなくなった。
文明生活のお手本のアメリカ人たちは、ジムへ通い死に物狂いでワークアウトに励んでいる。我が同胞もそれを模倣する。因果なことに、筋トレは始めたら止められないらしい。リバウンドの弊害は、ダイエットの比ではないという。
 
軽くする事だけをひたすら願って今日に至った肉体労働を、まさか日課にしなければいけない老後があろうとは、ついぞ予想もしなかった。
かつて知り合いの老翁が嘆じていた。「老いると、想像を絶することが次々と起こる」と・・・

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