2007年6月にボルチモアに行った際に、マチスの蒐集で有名なボルチモア美術館を28日に訪問した。残っている写真により思い出を書きます。
それまで海外では、ルーブルやメトロポリタン美術館といった超有名なところへ夫婦や集団で行った経験しかなく、一人で思い立っていくのは初めての機会だった。
そしてここでその後の海外の美術館の見方が定まった。
ボルチモア美術館は、寄付と公的資金で運用されているからその地域の人に見てもらおうと頑張っている。展示の構成は以下。
①コーン姉妹の寄贈コレクション(フランス印象派 等)
②歴史的な西欧美術品
③建国以来のアメリカ美術品
④インディアンおよび中米の美術品
⑤アフリカの美術品
⑥現代美術、特に外部の彫刻庭園
その後の経験でわかったのは、アメリカの美術館は②、④、⑤を重視している。それは自分たちのルーツととらえているからである。ヨーロッパでのアフリカの展示は少ないことに比べると、アメリカでのアフリカ美術品の展示は 異常に多い。
③の建国以来のアメリカ美術品を自分たちの成果として大事にしているが、40年ほど前まではやや自信がないのか、その後の現代美術に注力しているようである。でも現代美術は評価がちゃんと定まっていないから大変。
また展示品を自由に撮影できること、充実した説明資料、活動的なボランテアなど活動内容も新鮮だった。
私もボランテアが引率する館内説明に時々紛れ込み、特に現代美術に対する見方の説明を受けた。(下図参照)。なお説明ボランテアの周りは人が集まっていたが、その他のところは高校生の20人ぐらいの集団が、バラバラでレポートを書いている程度で、それほど人は入っていなかった。
インディアンの展示品のところでは下のような素晴らしい頭飾りがあった。
中米とアフリカ美術は、主として彫刻と仮面。感じは似ているが、中米のものはやや暗く、アフリカのものは輝きがある。仮面については、漫画家などは一生懸命創作のネタにするために写真を集めているだろうなって思う。下図は、多分中米のところの展示。
西欧の歴史的美術品の展示では、ルネッサンスの展示もあったが、下記の地中海文明のタイルが印象的だった。
そして、マチス。広い一つの部屋全部がマチスに充てられている。壁にはぎっしりマチスの絵。そして部屋のど真ん中に下図のマチスの彫刻。マチスの絵は、荒いでもつるっとしたタッチ、ナマの色で不思議な光を放っていて、人を引き付ける力と反発させる力の両方を持っている。だからか、真ん中の彫刻は優しいと感じてか、それにかぶりつきで高校生カップルがのんびりとレポートを書いていた。
可愛い女性に間近に寄られながらも注目をされていないので、裸婦がきまり悪そうに身をよじっているようで面白かった。この椅子は美術館が高校生に特別に提供したものであり、若い人向けのサービスは展示品説明とともにとても親切。アメリカはやる気のある若者(若者全員でなく、興味の壁を越えてきたもの)はとても大事に扱っている。
画家の彫刻としては、ドガの踊り子(下図)、レジェの戦士?があり、面白かった。
また、いま日本のどこかでやっているジャコメッテイの彫刻もあった。
現代美術は、各美術館は蒐集コンセプトの競争をやっている。ここは愛知県立美術館と近いコンセプトで集めているようだった。(後で比較して気がついた。)
現代美術は、例えば下図のようにぶら下がって展示されている理由を創造するのが楽しい。
また見ている人と組み合わせて、その人が何お考えているかと想像するのも面白い。下図の写真の時、子供はキャキャと笑っていた。きっと大人よりもわかっていたのだろう。
また外の彫刻庭園は非常に広く、緑とのコラボが素敵だった。このエリアの展示写真はかなりあるので、別に書くかも。
このボルチモア美術館は、市の繁栄している場所(市の中心と書かなかったのは、市中心はこのころゴーストタウン化していた)からかなり離れていて、ポツポツ走っているバスではかなりいの時間がかかり、タクシーで移動するにはお金がかかりすぎるというのが課題。
でもマチスを中心にかなり面白い展示があり、寄贈された多くの有名な画家の絵があって、おすすめ。特に現代彫刻に興味がある人には、彫刻庭園は素晴らしいと思うでしょう。(今後とも、彫刻を中心に写真は載せていきます。2次元の絵は、むしろホームページを参照ください。)