2016年8月25日にワシントンナショナルギャラリーの本館(西棟)、その次の日に、スミソニアン博物館群を回った途中で、彫刻庭園と現代美術の展示がなされている東棟に立ち寄った。
今回は、私が興味を持っている後者について示す。
彫刻庭園は西棟に連なった広い庭園で、国会議事堂とリンカーン記念館を結ぶ広い芝生のワールドモールを歩き疲れた人には良い休息の場である。中央には立派な噴水があり、その周りの芝生や樹木の中に現代美術の彫刻が並んでいる。
樹木といえば、こんなステンレス製の樹木がそびえている。クリスマスにカラフルなLEDを巻き付ければ さぞかしきれいだろう。
Roxy Paine 作 「移植」
(なお、作品名の日本語は、私が適当につけている。)
ワハハとびっくりなのは、大きなタイプライター用消しゴム。最初の直観は、むしろ飛行機の脚がちょん切れたものかと思った。
CLAES OLDENBURG and COOSJE VAN BRUGGEN 作 「タイプライター 消しゴム スケールX」
でも将来こういったタイプの消しゴムは消滅する可能性がある。その時 これはどういった意味を持つのだろうか。
そんな感じで、考えているのか ウサギさん。
BARRY FLANAGAN 作 「岩の上の考える人(ウサギ)」
この人のウサギは 時々見ます。このウサギは寝ないかもしれないが、考えすぎてやはりカメに不覚をとるでしょう。
続いて、ここで2つメジャーな作品を紹介しましょう。
まず ホアン・ミロの作品。
ホアン・ミロ 作 「ゴシックな人物と鳥の閃光
うーん どう見るのか。と・・・じっと見ていくと、あっ 鳥がいる。箱の中も鳥かも。
すると下半分は耳かな?
閃光というよりも、鳥の鋭い声が空間を切ったのかもしれない。
続いて リキテンシュタインの作品 「家 1」 画家の彫刻というのがユニークなのかも。
目の錯覚を利用したもの。絵で使っている枠取りの強い線がこちらでも印象的。
3方向から見て、4枚目が種明かし。 ある意味この程度の錯覚の使い方を、大々的にまじめにやって、鑑賞者がなるほどってやっていることが面白い。
批評家っぽく見ている人は、私がかたづけるとばかりに、大きな蜘蛛が闊歩している。
これは、もしかして六本木にもいたかも。
LOUISE BOURGEOIS作 「蜘蛛」
芝生の上に枯山水の石のように、彫刻群が置かれている。
TONY SMITH 作 「さまよう岩々」
明日は、違う位置に動いているのかな。
これは なんだ。
SOL LEWITT 作 「四方に向けられたピラミッド」
ルーブルのガラスによるピラミッドパワーに、コンクリート製で対抗しようとしているのか?
全エネルギーで「愛してる」って表現したいと思ったら、こんなのができてしまったというのが、ROBERT INDIANA 作 「愛」 ポルトガル語である。
とても力強すぎる。そして言葉が理解できない人にはかなり伝えるものが変わってくる。すべての人への共感は期待していない。でも工業製品としてアルミの塊でここまでのものは出来ず、こだわりは感じられる。
そして、TONY SMITH 作 「月の犬」 アルミのバカでかい代物。接合部を感じさせず、どうやって作ったのか興味がある。
1/6Gの月では、こんな大きな犬も元気に走り回るかもしれない。
犬が、向かおうとしている先が東棟
その天井には、カルダー製作の世界最大級(最大はメキシコオリンピックのもの)のモビールが浮かんでいる。題目は「無題」。展示品が入れ物を要求している。ナショナルギャラリーのお土産品にも多量に使われている。
天井にこの空間を作るためには大工事だったのだろう。そしてこのバランスを作るための設計も、そして製作工程も大掛かりなプロジェクトだったのだろう。
モビールはもともと天体の動きから啓発されたものだから、もし莫大なお金があったとしたら、宇宙空間に新しい惑星系を作ろうと考えるところまでいくのだろうか。
またここにも画家の彫刻があった。シュールレアリズムのMAX ERNST 作 「山羊座」 である。この題目で何作か作っているようである。
私のエルンストのこれまでのイメージは、とても攻撃的だったが、この作品は静けさ、忍耐、優しさを感じるもので、もっとこの作者をお知ってみたいと思った。
もう一つ私の興味を持ったのは、ボロボロの飛行機をイメージした作品。
ANSELM KIEFER 作 「歴史の天使」
一部拡大写真とともに示しているが鉛と藁くずでこの作品を作っている。この作家はドイツ人で、古代からナチス時代のことも含めたドイツの歴史を主題に、作品を作っているとのこと。
これは草生した爆撃機をイメージしているのだなと思った。そしてこういった芸術家が足りないのが日本の弱点なんだなって思った。
ともかくここは現代彫刻のいろんな方向性の中で、重要とされる彫刻家の作品を網羅していることは確かだ。
この現代美術の東棟とクラシックな西棟は、地下で下の写真のようなタイムトンネルでつながれている。西棟についてはまた別の機会に。