てんちゃんのビックリ箱

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愛知県陶磁美術館 「特別展 YAYOI・モダンデザイン」 感想

2020-12-20 21:14:37 | 美術館・博物館 等

展覧会名:特別展 YAYOI・モダンデザイン
場所:愛知県陶磁美術館
訪問日:12月1日
期間:2020年10月10日(土)~ 12月13日(日)
惹句:ニッポンの美、ここに始まる
内容
 (1) 弥生デザインの精髄
 (2)素材の転換・かたちの強調
 (3) 弥生の色彩
 (4) 弥生絵画と造形のデザイン
 (5)首長から王へ 権威の象徴
 (6)新発見の縄文/弥生資料



1.初めに
 縄文式土器に象徴される縄文時代の遺物は呪術的だったのに対して、この展示会では「弥生の文化は、縄文とは対照的に機能性や普遍性を志向し、プロダクトの形や紋様は端正な造形をとることに特徴があります。こうした造形は、日本の伝統的な美の源流になると同時に、現在の私たちにとってもモダンと感じられます。」と位置付けている。

 それを示すために、「本展では、弥生時代の土器、石器、木器、骨角器、金属器の、かたち、色彩、絵画・紋様に焦点をあて、そのデザインや美を紹介します。」というのが目的である。特に最近発掘調査で出土した代表的な重要遺物を一堂に集めて「弥生時代を美とデザインの観点からとらえる、過去に類を見ない展覧会」としている。

 会期が終わった後に掲載するのは申し訳ないが、縄文式土器に比べてあっさりした弥生式土器のデザイン面の面白さ、また土器だけではない各種材料の遺物、特に木器それから推定された衣服を見て、かなり弥生時代のイメージが変わった。
ここでは特に興味を持ったことについて記載する。


2.土器の機能的な形状とデザイン(そして技術)
 縄文式土器はいかにも土を紐にしてそれを積み上げていることがありありと見え、それを低温度で焼いたための黒っぽさが逞しくかつ呪術的だった。それに対して弥生土器は形がするっとしている。轆轤か回転式の台で作られたのか不明確だが、軸対象のものは非常に均整がとれたものが作られている。上のポスターの中にある取手を付けたもの(水差し形土器:奈良県田原本町/唐古・鍵遺跡出土)など、ほとんど現代のおしゃれな花瓶に近い。
 
 それに加えて色。焼成温度があがって黒っぽさが消え、その上にベンガラ(酸化鉄)で赤の塗装をしたものが現れている。また人や動物、抽象的パターンなどの文様が刻まれていることがある。さすがに柚は存在しないようだが、確かに現代の焼き物へとつながる美がそこにある。



<一宮市博物館収蔵品>
(この中から、後ろの下が赤く塗られた壺などが展示されていた)



<鳥取県 青谷上寺地遺跡の出土品>
(この中から展示されていた。)



<シンプルなパターンの文様のある土器>
(パレススタイル壺、愛知県一宮市/八王子遺跡出土)



<弥生初期の縄文でない文様>
(条痕紋土器壺 名古屋市内)  



<ユニークな文様の壺>
(愛知県出土品)


 また人間を弔うために、それを入れる大きな棺が焼成されていた。上記の意匠に関わる技術向上に加えて大型化も可能となっている。

棺用の大型壺 (愛知県出土品)


3.各種材料の使用
 この展示会では、弥生時代のいろいろな材料でできた出土品が出ていた。そこでは土器使用だと思っていたものが木器だったり、青銅器使用と思っていたのが木器や石器だったりとだいぶこれまでの歴史感覚を変えなければと思った。特に木器の使用がおもしろかった。ちゃんと漆の使用もなされていた。確かに
日本はその頃はきっと森の世界だから、木がもっとも入手しやすく、よく使われていたのだろう。



<小松市 八日市地方遺跡出土品>
(この中の中段のものが木製のもの。)
 木製のひしゃく、少し手前に木製の矛がある。本来なら銅製だがその形を木で写している。その他ジョッキの形状の木器があった。



<装飾木製品 2種のパターンが複合化している。>
石川県小松市/千代・能美遺跡出土



<木製の漆を塗った装飾壺>
上)装飾壺(木製) 
鳥取県鳥取市/青谷上寺地遺跡出土
鳥取県所蔵
(下)装飾壺の想定復原図



4.ファッションについて
 陶磁美術館のスタッフが、発掘した遺品からその頃の衣服とアクセサリーの再現に取り組んでいた。男女の服を以下に示す。その頃の集落でこんな服を着ることができた人がどれくらいいるか、それもどういった時間来ていたのかは別として、現代の人が着てもおかしくはない。なお弥生時代の平均身長は、調べると男性160cm、女性150cmとのことである。

 

<弥生時代男性の衣服と胸飾り>

 

<弥生時代女性の衣服と胸飾り>



5.終わりに
 (5)で社会体制の変化を示すものとして、スタンプが示された。このスタンプの広がりで首長から王へと権力の拡大が表されるとしているが、弥生時代は日本という国の形が見えてきたということで重要な時代だったのだろう。そういった時に使用しているものが一気に機能化するのは非常に興味がある・・・・というか、こういった機能化する考え方が生まれたからこそ、生活の機能化ということで、国を生み出そうとしたのだろう。
 なおこの展示会は、あいち朝日遺跡ミュージアムの開館と関連して、愛知県埋蔵文化財センターと愛知県陶磁美術館が共同で開催したものである。
 また最近の重要な弥生時代の発掘場所として下記を挙げている。
・愛知県 朝日遺跡
・福岡県 比恵・那珂遺跡群
・岡山県 南方遺跡
・鳥取県 青谷上寺遺跡
・奈良県 唐古・鍵遺跡
・石川県 八日市地方遺跡
コメント (1)
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