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フォロン展 ポスター
展覧会名:特別展 空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
会場:名古屋市美術館
会期:2025年1月11日(土)~3月23日(日)
展示内容:
プロローグ 旅のはじまり
第1章 あっち・こっち・どっち?
第2章 なにが聴こえる?
第3章 なにを話そう?
エピローグ つぎはどこへ行こう
惹句:「空想旅行案内人」というのが、そのまま惹句
訪問日:2月7日
1.初めに
フォロンは、芸術家の履歴としては変わっている。
先ず建築学科を卒業後、ルネマグリットの壁画を見て画家になろうとした。ただしそれで始めたのはドローイングで、それでアメリカの雑誌の表紙で認められ、次にオリベッテイのコマーシャルフォトで認められた。普通の画家の様に、おおきな油絵を量産して認められたわけではない。その後、ドローイングからそれほど大きくないサイズの水彩画、彫刻、版画と仕事を広げていっている。暫く前までのドカンドカンと油絵の大作を作って著名画家になっていくのとは違ったルートをとっている。
実は、この人に対しては日本語版WIKIの著述がないが、変わった経歴で短期間で著名人となったために日本人社会としての評価が遅れているのかな?
2.プロローグ
フォロンは、名刺 “FOLON: AGENCE DE VOYAGE IMAGINAIRE(フォロン:空想旅行エージェンシー)を使っていた。全般として、彼は軽やかに表現手段や表現対象を変化させている。でも後半は、重い現実を感じつつそれにとらわれずに浮遊して、美しいものを見つけたいという2つの立場がせめぎあっているようである。
彼の名刺は、美しいものだけを見たいという願望のようだ。
作品としては、登場のきっかけになったオリベッテイのタイプライターの絵、そして自分の道連れというリトルハットマンが早くから登場し、絵画の中で彷徨っていること、そして初期段階のドローイングが展示されている。
またリトルハットマンはどこにでもいるよということを示すためか、丸い目のような孔が2つ並び、真ん中に鼻のような突起のある物体を街中で見つけて、写真を撮っている。
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いつもとちがう (リトルハットマンの描かれた絵)
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すべての人にオリベッティを
(タイプライターのボタンが人間で、とても面白い)
3.第1章 あっち・こっち・どっち?
矢印は他者が行き先を指示しているものだがそれにこだわっていて、社会には人を操ろうとする矢印ばっかりということを描いている。そしてその存在に影響を受けない案内人になろうとしている。
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都市のジャングル
4.第2章 なにが聴こえる?
案内途中、案内先でいろいろなものが聴こえ、そして見えてくる。それは見たいものばかりではない。むしろ嫌なものが多い。そんなものを描いている。
なぜペシミスティックなものばかり掬い取るように描いているのだろう。彼の抗議のささやきが聴こえてくる。
彼のそういった方向に行った背景は説明されていない。彼の繊細な苦しみへの同調性からなのだろうか。
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深い深い問題
(海の底に住んでいるのは、魚ではなくミサイル)
5.第3章 なにを話そう?
彼の抗議のささやきを、アムネスティや平和、環境保護の国際団体がマイクで大きく響かせるようにポスターとして採用し、世界中に広がった。多くの人がその声を聞きそして彼に話しかけようとする。
積極的に活動に参加しようとしいているが、もしかすると有名人になりすぎた苦痛を感じていたのかもしれない。
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世界人権宣言のうち 「勉強したい」
(軍隊のように、ペンを描いている。その他の絵も明るく書けそうな対象でも妙にくらい。
6.エピローグ つぎはどこへ行こう?
彼が愛してやまなかった海と水平線を描いた水彩画や、旅先でのスケッチブック、メール・アートなどで締めくくられている。
空洞のハットマンの彫刻もある。これは何を意味しているのだろう。
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秘密
おわりに
フォロンのシンプルで流麗な線や、虹のような配色は美しい。そして描かれる内省的なメッセージもよくわかる。しかしそのメッセージがスピーカーで世の中に響き渡った時、かれはどうおもっただろうか。そして彼の絵の中の暗さが気になる。彼が国際機関などから依頼されて描いたメッセージは彼しか描けないけれども、ほんとうに描きたかった対象なのかなと思ってしまう。
彼は作品の優しさと反響の大きさのギャップに、以下の言葉を呟きながら彷徨ったのではないだろうか。
「ここはどこ、わたしは誰?」
なお図中の絵画は下記のフォロン展関連URLから引用
https://ourfolon.jp/
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