てんちゃんのビックリ箱

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愛知県美術館 2024年度第3期コレクション展 訪問

2024-11-17 00:13:02 | 美術館・博物館 等
 特別展の相国寺展を訪問したが、それと同時開催のコレクション展、特に木村コレクションも見に行った。
 とてもよかったので、特別展の前にコレクション展について記載する。

  展覧会名:愛知県美術館第3期コレクション展
  期間:2024年10月11日(金)-11月27日(水)
  訪問日:2024年11月12日
  内容:
   ・西洋近代美術の名品
   ・みんなの文化会館美術館
   ・木村定三の古美術蒐集

 内容のうち、西洋美術の名品については、いつもの展示とほぼ同様であった。一番書きたいのが木村コレクションなので、この順番を逆にして述べる。

1.木村定三の古美術蒐集
 相国寺展にライバル心を燃やしたのか、木村コレクションの中でも、素敵な茶器2点に伊藤若冲を5点、そして与謝野蕪村2点と浦上玉堂の作品を1点展示していた。蕪村と玉堂の各1点の作品は重要文化財。
 ここは特記以外はすべて撮影可能。ただし茶器の撮影は失敗したので、若冲と蕪村そして玉堂の絵画のみを紹介する。

(1)伊藤若冲
 相国寺展では伊藤若冲は襖絵など大作がほとんどだが、こっちでは掛け軸ばかりである。そして、茶人好みのじわっとした愉しみのある作品だとおもう。
 
①六歌仙図
 木村さん自身が非常に気に入って、茶会でよく掛けていたとのこと。むしろ宴会でお酒を飲みながら、「やあ 仲間たち」と掛け軸に声を掛けたくなる。




②菊に双鶴図
 鶴がお尻をくっつけて2羽いる。嘴で顔の位置がわかる。見方のクイズみたいで面白い。




⓷伏見人形図
 伏見地域のお土産の土人形。相国寺展でも類似品が展示されているが、こちらのほうが集団の描き方が面白い。 




④若竹雄鶏・梅花雌鶏
 若冲の十八番の鶏の絵の雌雄2枚セット。雄と雌の描き分け,背景のあっさりした描き方と、全体としてのダイナミックな外形線の流れがいい。




(2)与謝野蕪村
 文人画の巨匠とされている人。いわゆる絵をちゃんと描く画家の流れではなく、精神に働き掛ける絵を描き、茶人の人気が高い。名古屋の茶人の代表の木村さんだからいいものを持っている。

①若竹図
 竹の葉の乱れ描きや、竹の節でぶつぶつ切って破線状に稈を描いていくなど、なるほどと思ってしまう。また竹林の向こうの建物が渋い。




②富嶽列松図 (重要文化財)
 これまで混雑している会場で2度鑑賞したが、今回は余裕ある会場でじっくり見させていただいた。
 背景のきれいな富士に対して、前景の松の幹がバランスを越えて太く描かれている。このバランスの悪さは画家の絵じゃない。でも面白い。その幹にわずかに茶が塗られている。木の高さもうまく不揃いになっている。樹々全体が人間の群衆のようにがやがやと集まっている感じで、とても楽しい。左側の雲や樹々がぼけていくのもいい。




(3)浦上玉堂
 ブルーノ・タウトが日本のゴッホと呼んだ、その時代の絵の流れから孤立した新しい表現を生み出したとされている人
・山紅於染図 (重要文化財)
 玉堂は別に国宝指定されているものがあるが、それならこれも国宝だといったほど惚れ込んだ絵。
 かすれるような墨筆で柔らかな山肌を描き、ところどころに茶系の色をあしらっている。それが離れて見るほど色鮮やかに浮き出てきて、いいなあと思う。写真撮影品ではその魅力は伝わりにくい。 




2.みんなの文化会館美術館
 愛知県美術館の前には、その前身の愛知県文化会館美術館が1955年から92年まで名古屋・栄の地に存在していたとのこと。その90周年を記念して、建物の概要や初期の頃のコレクション内容が展示されていた。
 気を引いたのは、創立に活躍した地元画家の作品、女性作家の作品、初期から集めていた海外画家の作品である。

(1)創立に活躍した地元画家の作品
 愛知県出身で帝展審査員など活躍していた洋画家太田三郎を中心として、杉本健吉などが協力して、創立およびその後の展示企画を進めた。両者の作品を示す。
 太田三郎は画家、挿絵画家の他に文筆家、評論家、教育者、組織の取りまとめ者などのオールラウンダー。その絵は1955年という戦後の暫くたった作品だが、日本国旗を持って昇天を見送るような絵画で、戦争と関係あるかも。
 杉本健吉の絵は自由闊達、楽しんで絵を描いているのがわかりうれしくなる。
 


太田三郎作 「人物(昇天)」



杉本健吉作 「邪鬼」

(2)女性作家の作品
 創立初期段階から、女性作家の作品を積極的にコレクションしていったとのこと。
眼をひいた2枚。
 正木公の作品は、文化会館美術館からの夜景を描いていて、右上に美術館のマークが入っている。
 松田文子は当時天才女性日本画家の評判高く、アサヒグラフ表紙を描くなど一世を風靡していたとのこと。



正木公作 「美術館の窓」
 



松田文子作 「哀歌」

(3)海外作家の作品
 設立当時の現代海外作家の蒐集も がんばってやっていたとのこと。その中で目を引いた幻想的なフランス人の1点を紹介する。
 なおこのクートーは、1950年台はわりと日本では人気で、個人の展覧会も行われていたようである。



リュシアン・クートー作 「干潮の帽子」
        
3.西洋近代美術の名品
 ここは、馬、窓、風景をキーエレメントとする絵画の展示、および近年の欧州絵画の流れの展示と説明されているが、まとめ方でほぼいつもの展示に近いので略。


おわりに

 今回のコレクション展、特に木村コレクションの部屋はとてもよかった。相国寺展にいかれる人は、そちらでグロッキーになってしまって見落とさないように。





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