展覧会名:富田菜摘 スクラップワールド
場所:ヤマザキマザック美術館
訪問日:12月24日
期間:2020年11月13日(金)~ 2021年3月14日(日)
廃材を使ったユーモアあふれる動物作品、また古新聞などを使った人物造形で活躍している富田菜摘さんの作品が、ヤマザキマザック美術館に展示され、楽しいと評判になっているので訪問した。
そして、マザックの常設展示の高級家具やガラスの美術品と組み合わさって、なかなか楽しい異世界が出現しているのを楽しんだ。その内容について示す。
全体は、以下のようになっている。この順序で示す。
(1)スクラップによる大型の動物作品
(2)古紙等による人物造形
(3)ヤマザキマザック常設展示品とのユニット展示
1.スクラップによる大型の動物作品
ここでは、まず大型の爬虫類、次に大型哺乳類、そしてなんと恐竜が展示されている。
(1)大型爬虫類
大型のウミイグアナが、スクラップで動物を作るきっかけになったそうである。そのあたりのスクラップ品やごみ箱に入っている廃材を集めて作ったそうである。
そしてみんなで動かして楽しんでもらいたいとのことで、カメを作ったとのこと。
これらの動物には、ウミイグアナが鉄平、カメが諭吉と銀蔵というようにちゃんと名前がある。
イグアナの尻尾のクリップ、カメに使われている字を読むことができる板金を見ると楽しい。
<錬金術師>
お立合い
スクラップ置き場は
宝箱
アイデアふりかけ
夢を生み出す
お立合い
スクラップ置き場は
宝箱
アイデアふりかけ
夢を生み出す
(2)大型哺乳類
ここにはライオンやカンガルーなどがいる。
ライオンの扇風機廃材にスプーンやひしゃくなどいろいろなもので作られた鬣、関節部のフライパン、爪のスプーンなど各部が何を使っているか見ていくだけで楽しい。
カンガルーの胴体はギター、そこからちゃんと子供が顔を出している。
(3)恐竜
チラノザウルスやステゴザウルスがいる。
チラノ君はむしろゴジラといってもいい旧式の尻尾を引きずるタイプ。最近の2足歩行は難しいよね。尻尾を使えば3点支持で立たせるのは容易。(むしろヤジロベエのようにした方が面白かったかも。)
<チラノ君の希望>
なつかしい
尻尾を引きずる
チラノ君
二足歩行へ
進化したいよ
なつかしい
尻尾を引きずる
チラノ君
二足歩行へ
進化したいよ
・チラノ君の顔
・ステゴザウルスの親子
2.古紙等による人物造形
彼女は多摩美術大学卒だそうだが、卒業制作で古紙を利用した人物造形だったそうで、そのテーマを引きついでいる。実物大の大きなものと小さなものがある。
大きなもの例を下記に示す。
この像には、その人の性格を示すような活字がどこかにある。また顔は、肌の色を示すような工夫がなされている。
・顔の作り方 顔全体に小さな顔が貼られている。
大きなものは集めて群像表現するようになっているが、より小さな像を並べていろいろなJR線のある時間頃の群像を作っている。
<スマホの結界>
体温を
感じるほどに
近いのに
スマホの結界
強固に囲む
体温を
感じるほどに
近いのに
スマホの結界
強固に囲む
これは山手線の夕方だったかな?
3.ヤマザキマザック常設展示品とのユニット展示
このユニット展示が非常に面白い。高級インテリア展示におもちゃ箱をひっくり返したように作品が紛れ込んでいる。また澄まして作品を見ている造形がある。
その例を示していく。
(1)高級インテリアへ空間で遊びまわる動物たち
動物たちが、素敵な部屋でパーティをやっています。
<(参考) 人間のいないクリスマスパーティ>
いらっしゃい
最高の部屋へ
パーティスタート
コロナのいない
クリスマスイブ
いらっしゃい
最高の部屋へ
パーティスタート
コロナのいない
クリスマスイブ
人間はパーティができないんだって だったら人形でやっちゃおう。 生物がいないと、コロナもいません。
この写真と詩を独自に作りましたが、富田さんが同様な写真、同様なコンセプトでツィッターを出していたので、参考とします。この雰囲気を伝えるのは重要と判断したので出します。
https://twitter.com/TomitaNatsumi/status/1341971383144730624
こちらでは、ドードーとペリカンかな? 立派な机で騒いでいます。
(2)展示を観る不思議な人々、小さくなれば何を始める?
なんか怪しい男性、ガレの作品を眺めています。
こちらはおばあさんが、鑑賞しているカップルとショーケースの向こうで話しています。
そして、小さくなって何をしているのかな?
<年を越える儀式>
面接だ
懺悔しないと
座れない
貴方はどんな
悩みが増えた
面接だ
懺悔しないと
座れない
貴方はどんな
悩みが増えた
今年一年を振り返りましょう。 そうしないと歳を越えるテーブルには乗れません。
(3)こっそりと動きまわる小動物
大きな動物に眼をとられていると見落とすかもしれませんが、壁にこっそりと小動物がいます。
まず、壁を這いまわっているヤモリ。
そして、ひっそりと網を張ったクモ。
(4)私たちだっているんだよ。
光の通路のようにショーケースが並んでいて、いろんな動物がおもいおもいにはしゃいでいました。
・光の通路
・鼠
・蛇
・カメレオン
4.終わりに
海外でもこういったスクラップを構成した作品は見たことがあるが、富田さんの作品は 日本の女性らしい細やかさできれいに可愛く作っていることに独自性があると思う。
古紙の人物構成作品もすぐには見つからない活字探しを楽しむということで、日本人は楽しめる。また雰囲気から現代の時代性を感じることができる。日本語を知らない外国人でもニュアンスは感じることができるのではないか。
富田菜摘さんの作品はなかなか面白いと思うが、今回はマザック美術館の常設展示と組み合わさって、両者の魅力をそれぞれ引き立てていたと思う。
こういった異質のもののジョイント展示は、今後もっと計画されてほしい。
所蔵が富田さん自身になっているものが多いので状況を見てみたら、コンパクトなものは商業ベースに乗ってかなり売れているようである。ちょっとアートにという人には確かにいいなと思う。
(でも大型作品はやっぱり接地面積が大きいとしんどいなと思った。室内でしか維持できず(多分雨に弱い)クリーニングが難しいので、ちゃんとした所有者でなければ、美術品として保つのは難しいだろう。
今回の富田さんの作品展示会は、私も本当に面白いと思いました。廃材を使っているけれどもきれいで可愛く、ウィットいっぱいの作品ばかりでした。
本文中にも書いたように、商業ベースでも中小作品が版画が売られているように成功していて、小さな作品ならば数万円、小型の多分ここではドードークラスの作品ならば数十万円で購入できるようです。
鼠くらい手元にあってもいいかなっておもいませんか。
ヤマザキマザックのメインルームは、日本に珍しいロココの絵画が並んでいます。また欧州の近代以降の画家の作品がカタログ的に集められています。そしてインテリアとガレ等のアールヌーボーのガラス作品が並んでいます。
早速私のブログにコメント有難うございましたm(__)m
前回の縄文文化から弥生文化になって如何にモダンかされたか興味深く拝見させて頂きましたが、
今回の富田菜摘さんのスクラップワールド、いやぁ〜ホント面白いですね!
勿論廃材を使ってオブジェを作った作品は様々なアーティストも手がけておりますが、
作品の細々とした所までウイットに富み行き届いた作り込みは素晴らしいの一言(^○^)
そしてアンティークの家具との組み合わせや目立たないけど壁を這うヤモリ等々、彼女の感性の非凡さが十分表れています。
またまた面白い展示をご紹介頂き重ねてお礼申し上げますm(__)m
ヤマザキ ナビック美術館は常設展示ではロココの絵画が多いですね。2、3回行ったことがあります。