「かもじ」という言葉を理解できるのは昭和20年以前生まれであろう。 「ウィッグ」と言えば若者も「あー、かつら」とお思い戴けるだろう。 広島県はこの「かもじ」( 髢)生産日本一なのである。 国内の7割が、矢野町で作られている。
こんなのは、花柳界や芸能界用。
これなどは、放射線治療で脱毛された方用だ。 嘗てこの町の住人は殆どが、「鬘づくり」に従事していた。 その理由は、土地は狭く急斜面であり、海は豊かであったが、浅野藩の政策で早くから干拓されたため、漁民は陸に上がった「カッパ」になったそうである。 そんな中、この土地にしかない「粘土」が発見され、その「粘土」が、髪の毛の脂分を取り除くのに最高の物だと知れ、一気に発展したと言う。 因みに、中世のヨーロッパでは、おしゃれ用の「鬘」が使用された。 舞踏会などでは、
こんな紳士が指揮棒を握り、円舞曲を演奏していたそうだ。 エジプトの王さまも
しっかりと正装に「鬘」をつけておられる。 江戸時代の大名も、薄毛を隠すために、「たしげ」と言われる方法で頭を整えたそうだ。 現代人と変わらぬ美的感覚であったようである。 しかし、時代と共に生産は減少、生産従事者は、ごくごく少なくなっているという。 残しておきたい技術遺産である。