モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

その43 菊・キク・きくの常識と意外性の歴史

2008-07-20 08:16:36 | ときめきの植物雑学ノート
白妙菊を書くために調べていたら、自分に大きな誤解があったことに気づいた。

そして、キクの歴史は意外なことがけっこうある。

春のウメ、サクラに対して秋のキクというのが日本の季節感をあらわす代表的な花で、
3種とも日本固有の植物かと思っていたが、そうではなかった。


※キク科の花 ダイヤーズカモマイル

1.キクには、野生種が存在しない
現在のキクは、5~6世紀の頃の中国で自然交配で出来た園芸種のようだ。
親は、白花のチョウセンノギク (※1) と 黄花のハイシマカンギク (※2)が交配してできたと
推定されている。

文献では、 シマカンギク (※3)或いはハイシマカンギクとあり正解はわからない。
だから現在のキクには原種というものがなく、両親がいるだけだ。
この両親から生まれた第一子が原種と言えば原種だが・・・・(答えは最後に)


2.日本には、奈良時代中期から平安時代初めに中国から伝わる
このときに、奇数の数字が重なる日はおめでたく5節句というものも一緒に伝わる。

1月7日(人日、じんじつ、七草)、3月3日(上巳、じょうし、桃の節句)、
5月5日(端午、たんご、菖蒲の節句)、7月7日(七夕、しちせき)、そして、
旧暦での9月9日は、重陽(ちょうよう)の節句

キクの花びらを浮かべた菊酒を飲むと長寿ができるという不老長寿の薬として伝わり、
貴族階級では、ブームとなったようだ。

また、キクを見て楽しむという“鑑賞の習慣”は、このときに中国から伝わってきた。
ヨーロッパでは、花の観賞という美意識が育つのが15世紀以降であり、
それ以前に日本では鑑賞の価値を習慣化していたようだ。これも意外かな?

ウメも8世紀半ばに原産国中国から伝わってきているので、キクと同じ頃に日本に入ってきた。
ということは、現在のウメ、キクのおおもとは中国だったということになる。

3.花といえば、平安以前はウメ、平安からサクラ。キクは鎌倉時代から
秋を代表する花としてキクが確立したのは、鎌倉時代の初め後鳥羽上皇(1180-1239)が
菊の花の意匠を好み、「菊紋」を天皇家家紋とした頃から。
日本を代表する花にもこのように時代差があったのだ。これも意外。

4.「菊」は漢名で、「菊」が残る
平安時代の辞書「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」では、漢名の菊に対して
和名は「カハラヨモギ」または「カハラオハギ」としている。
これは別に意外ではないか!

5.中国産の「菊」は、日本で独自に品種改良され世界に誇る園芸品種となる。
江戸元禄時代以降に園芸品種としての菊の改良が特に進み、直径30cmにならんとする大輪菊が栽培された。
この時代植木屋が集まっていた巣鴨から染井(ソメイヨシノの染井=駒込)が
園芸種栽培の中心で、開国後にここを訪れた外国人は園芸水準の高さに驚いたようだ。

6.プラントハンター、フォーチュンもびっくり
イギリスのプラントハンター、フォーチュン(R.Fortune 1812-1880)(※5)は、
1860年及び1861年に再来日し、キクの品種を大量に集めロンドンに送った。

フォーチュンの驚きは、
江戸の団子坂で菊人形にふれ、翌日は染井、王子の植木村を訪問しているが、
この植木村(ナーサリー・種苗園)の規模の大きさは、ロンドンをも上回り、
彼をして
“世界のどこに行ってもこんなに規模の大きな売り物の植物を栽培しているのを見たことがない”
と言わしめている。
江戸末期の日本の園芸市場は世界最高水準であり、これを支える花・植物を愛する日本人が多数いた。
ということがフォーチュンの驚きだった。

中国のキクの品種は、日本のものよりは早い1789年にヨーロッパに入っていたが(※4)
単純な八重咲きのためか、人気にもならなかった。
フォーチュンにより日本種が入り交配されることによりヨーロッパでもキクブームが起こった。
いまでは、バラ、カーネーション、キクが世界での三大花となるまで成長した。

井伊直弼が暗殺されたのが1860年であり、尊皇攘夷で荒れていた時期に、
フォーチュンが王子まで動き廻っていたことも驚きだ。プラントハンターは命がけだ。

7.蛇足
「以ての外(もってのほか)」は、 ”思いもよらない”という意味で使われるが
これが“もってのほか”だった。

子供の頃は秋になると菊の酢の物など食べたものだ。
山形の菊が入った漬物“晩菊”は、お茶漬けにすると最高だが、
「もってのほか」は東北地方で栽培される食用菊の名前だった。

この由来は、狩に出かけたお殿様が、百姓屋で振舞われたお茶うけの菊びたしに
「これはうまい。百姓にはもってのほか」といったそうだが
それにしてもひどい逸話で、 “もってのほか”という以外ない。

8.蛇足2
現在のキクの親は園芸種で雑種であることがわかった。
野生のキク科の植物もあり、これが死滅する可能性があるそうだ。
何故かといえば、
キクの園芸種は、野生種と交配し新しい種が誕生しやすい遺伝子構造を持っているようだ。

この雑種が誕生する原因として挙げられているのは、
野原などに自生する野生種に、墓参りでもって行ったキクの花の花粉が交配するからのようだ。

野生種を守るには、お墓にキクの花を持っていかないか、お墓を地代の安いところに作らせないか
野生種を空調設備が管理できる実験室に移植するかなどなど奇策があるが
とんでもないことを考えざるを得ないようだ。
“もってのほか”といいたい・・・・


※ キク科の花 ローマンカモマイル

<脚 注>
(※1)チョウセンノギク(出典:'Botanic Garden')
チョウセンノギク(Dendrantbema zawadskii var. latilobum kitamura)は、
中国北部、モンゴル低地、朝鮮半島などに自生する頭花の直径が8㎝にもなる大きな白い花を咲かせる。
http://www.botanic.jp/plants-ta/chonog.htm

(※2)ハイシマカンギク(出典:独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所)
ハイシマカンギク(D.indicum var. procumbens Nakai)は、中国中部に広く分布し、茎は地上をはって長くなりところどころで根を出すので匍匐性がある。鮮やかな黄色の花をつける。中国では、薬用で漢名では甘菊という。
http://flower.naro.affrc.go.jp/kaki_iden/c3_kiku/kiku_yasei_show/detail_html/00030.html

(※3)シマカンギク(出典:'Botanic Garden')
シマカンギクDendrantbema indicumは、草丈30~80㎝で、黄色の直径2.5cmの頭花をつけ、近畿以西の本州、四国、九州、台湾、朝鮮半島、中国、ベトナム北部までに分布する。
http://www.botanic.jp/plants-sa/sikang.htm

(※4)中国からキクを持っていったヒト
1789年フランス人ブランカール(P.L.Blancard)は、中国から大輪菊を持ち帰り、これがイギリスキュー植物園に伝えられ、オールドパープルの名で栽培される。

(※5)フォーチュン(R.Fortune 1812-1880)は、
1843年に中国からポンポン咲きの品種を、1861年には中国と日本から新しい大輪厚物品種をイギリスに送る。
ちなみにフォーチュンの経歴は、
ロンドンの園芸協会のプラントハンターとして1843年7月に香港に派遣され、
茶の木、製法、マニラでのランの収集などで知られる。
そして、発酵させて作る紅茶の製法と茶の栽培法をインドに持ちこみ、紅茶大国イギリスの基礎をつくった。

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休日の一品 鶏もも肉のソティー、バジル風味&トマトソースかけ

2008-07-19 10:15:39 | 男の料理

(写真)鶏もも肉のソティーがバジルで愉しめ、ソースで楽しめます


サバのソティで作ったドレッシングがよかったので、
これをソースとして使ってもいけるのではないかと思い、
鳥もも肉で作ってみた。

サバの場合は塩・コショウとフェンネルで焼き上げたが、
鶏肉なので、塩・コショウとバジル(乾燥粉末)で味をとることにした。

ソースの材料は、前回同様に赤ワインのビネガー、ヴァージンオリーブオイル、ケイパーとオリーブのパスタソース、
塩・コショウとラッキョウ、トマトの角切り。
これを小さいフライパンで沸騰するまで煮るというか炒める。

ドレッシングで使うよりは、ビネガーのカドがとれ、味としてコクが出た。

鶏肉は、最初に塩・コショウ・バジル(粉末)をし寝かせておくが、
オリーブオイルで蒸し焼き的に皮がカリカリになるまで焼き上げる。
出来上がったら、ソースをかけ生のバジルの葉を散らし完成。

これは結構いけます。
今回2回目なので、30分で出来上がり、
前日つくり置きした野菜スープを冷蔵庫で冷やした冷野菜スープとの相性も結構でした。

(写真)冷野菜スープ(つくり方は最後に記載)


<材 料>(4人分)
鶏肉ももブロック      2枚(500g)
塩             適量
コショウ          適量
バジル(乾燥粉末)       適量
オリーブオイル        大さじ2杯
バジルの葉          4枚
ネギ             1本

<合わせ調味料>赤ワイン酢          大さじ2杯
ヴァージンオリーブオイル   大さじ2杯
ケイパーとオリーブのソース  大さじ2杯
(ない場合は、ケイパー大さじ2杯)
塩              適量
コショウ           適量
ラッキョウ          5~6個
トマト            中ぐらいの1個

<作りかた>
下準備
1.鶏肉に塩・コショウ・バジルをしねかせておく。
2.あわせ調味料を作る。
・ボールに赤ワイン酢をいれ、そこにヴァージンオイルを注ぎ混ぜる。
・ケイパーとオリーブのトマトソースを入れ混ぜる。
・トマトは1cm角に切る。らっきょうも荒いみじん切りにし、ボールで混ぜる。
・最後に塩・コショウで味を調える。
3.付け合せのバジル・ネギを切っておく。

調理
1.フライパンにオリーブオイル大さじ2杯をひき、鶏肉の皮のほうから入れ中火で蓋をし焦げ目が出るまで焼く。空いたスペースでネギも焼く、ネギは片面焼きあがりの時に取り出す。鶏肉は両面が焼けたら取りだしさらに盛る。
2.あわせ調味料を小さなフライパンで軽く沸騰するまで煮る。味を見て塩・コショウで調整する。
3.出来上がったソースを鶏肉の周りにまわしかけし、刻んだバジルをかけ完成。

<評 価>
1.サバは小骨を取るのが大変でしたが、肉は簡単で時間短縮になります。
2.酒のつまみになります。鶏肉の片面がやけたら赤ワインをかけると余計ワインに合うつまみになります。
3.ソースはスパゲッティにかけてもいけそうです。
4.ソースには、ラッキョウ、ピクルスなど酢漬けのものは何でも合いそうなので、目先をトッピングで変えることが出来そうです。

<参考:野菜スープ>
1.材料は、豚ばら肉のブロック、野菜(タマネギ、ニンジン、セロリ、パプリカ、キャベツなど)、きのこ(シメジ、エノキ、エリンギ)、タイムを4~5本縛って入れる、調味料は塩・コショウのみ。
2.基本は、炒めて大鍋に入れ、水1000~1500ccで一緒に煮込む。煮崩れするキャベツは、出来上がる前に入れる。煮込み時間30分(沸騰したら超弱火)、ここで塩コショウで味をとる。さらに30分超弱火で煮込み完成。
3.残りは、スープストックとして使用。麺類、パスタ類のスープとして使用。

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白妙菊、ダスティー・ミラー(Dusty mille)の葉と花

2008-07-19 06:26:17 | その他のハーブ

(写真)つぼみが美しい白妙菊の花


白妙菊は冬の花壇の王子様だ。
誰がいなくとも明日を期待させるものがあり、銀灰緑色の葉はこうごうしいほど輝いている。
弱い冬日にマッチした葉色のようだ。

しかし、夏場は強い光と周囲の緑に覆いかぶされ、
キャンバスの下地のようになってしまっている。
カラーコーディネイトでの隙間家具ならぬ隙間プランツのようだ。

そんな白妙菊も、
自己の存在を主張するかのように、
キク科の家系を誇示する濃い目のイエローの花を咲かせる。

しかし、咲いた花よりもつぼみのほうが美しい。

花が咲き実がなるのをゴールとすると、
多くの植物とは正反対で、ゴールよりもスタートのほうにさかのぼるほど気にいることが多い。
そんな珍しい植物だ。


菊といえば日本原産かと思いきや、白妙菊は、地中海沿岸地帯が原産地で、
さらに~ ~常識の錯覚が結構あることがわかった。
続きは後で、・・・・

(写真)銀灰緑色の葉を背景とした花


白妙菊(シロタエギク)・ダスティーミラー(Dusty mille)
・キク科キオン属の耐寒性がある常灰白色の多年草。
・学名は Senecio cineraria(セネシオ・シネラリア)。英名は Dusty mille(ほこりをかぶった粉屋)、 Cineraria、Silver ragwort。和名が白妙菊(シロタエギク)。
・原産地は、地中海沿岸地域
・草丈は50~60㎝で、横にも広がる。春先か花後に思い切ってカットする。
・茎・葉には白い繊毛があり、美しい銀灰緑色となる。
・開花期は5~6月というが今年は遅れ気味で、6~7月。茎の頭に花序がつき濃い目の黄色い花が咲く。
・根元から茎が分岐し太い株になる。
・花壇の縁取りなどに適している。


名前の由来
・senecio=cinerarii=cinerariaeラテン語で老人の白髪white hair=gray hairを意味する"senex"に由来
・cinerea=cinerariaラテン語で灰色gray、灰色がかったgrayish、灰色のashy grayを意味する"cinerarius"が由来』
・両語とも老人の白髪を意味するが、ハゲではないということを強調しているのだろう??

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イタリア風サバのソティ水菜添え

2008-07-18 07:20:06 | 男の料理

生きのいいサバが目に入ってきた。
これを手がけたことがないイタリア風にしてみよう。
ちょうど、フェンネルかオレガノのどちらかを使ってみたいと思っていたので。

スーパーで調味料を探したが、以外にないことがわかった。
パスタコーナーに“ケイパーとオリーブ”のパスタソースの瓶詰めがあったので、
これをゲットした。

ケイパーはスモークサーモンなどに添えられている灰緑色のビーンズのようなもので、
サーモンの味を引き立てるピリッとした役割を果たしている。
食材として使うのははじめてで、どんな味になるか多少緊張する。

これで、あわせ調味料が簡単になった。

あわせ調味料は、
赤ワインのビネガー、ケイパーとオリーブのトマトソース、ヴァージンオリーブオイル
塩、コショウを混ぜ合わせ、
これに、トマト、ラッキョウを切り混ぜ合わせておく。

後は、サバに塩コショウをしオリーブオイルで焼くだけ。
今回は、 “魚のハーブフェンネル”を一緒にフライパンにいれ香り付けとして使用。

彩として水菜を使用。
完成です。

これ以外と簡単で、あわせ調味料は、パスタにもいけそうです。
唐辛子を入れてペペロンチーノ風にしてもいいかな~

(写真)サバのイタリア風ソティ


<材 料>(4人分)
サバ            2匹(4枚)
塩             適量
コショウ          適量
フェンネル         1枝
(ない場合は、カレー粉を軽くまぶす)
オリーブオイル       大さじ2杯

<合わせ調味料>赤ワイン酢         大さじ2杯
ヴァージンオリーブオイル  大さじ2杯
ケイパーとオリーブのソース 大さじ2杯
(ない場合は、ケイパー大さじ2杯)
塩             適量
コショウ          適量
ラッキョウ         5~6個
トマト           中ぐらいの1個

<作りかた>
下準備
1.サバに塩・コショウをしねかせておく。
2.あわせ調味料を作る。
・ボールに赤ワイン酢をいれ、そこにヴァージンオイルを注ぎ混ぜる。
・ケイパーとオリーブのトマトソースを入れ混ぜる。
・トマトは1cm角に切る。らっきょうも荒いみじん切りにし、ボールで混ぜる。
・最後に塩・コショウで味を調える。
3.フェンネルをきざんでおく。
4.付け合せの水菜を3センチ程度に切って取りおく。

調理
1.フライパンにオリーブオイル大さじ2杯をひき、サバを皮のほうから入れ、フェンネルの刻みをサバにふりかけ中火で焦げ目が出るまで焼く。
2.両面が焼けたら、取りだしさらに盛り付けあわせ調味料をサバの周りに円を描くようにかける。
3.水菜を盛り付ける。

<評 価>
1.サバの生臭さが消え、香ばしさと酸っぱさと軽くピリッとする刺激性で、ごはんの甘さが引き出されます。フェンネルの効果でしょうか。
2.これはごはんに会う肴ですね。
3.水菜の茎は、シャキッとしてマッチしましたが、葉の部分からは苦味が感じられアンマッチでした。水菜の味が鮮明に残るぐらいくどい味ではないということでしょうか?
4.夏場の胃が疲れたときに良さそうなメニューだと思います。
5.ソースはサラダのドレッシングみたいなものなので、使い回しが効くかもと思い、次のメニューを考えています、


<ケイパー(caper)参考サイト>
ケイパーの栽培日記
http://www.geocities.jp/tozzer/herb/capperi.htm
ケイパーの花を見たい場合は
http://www.nippon-shinyaku.co.jp/herb/flower/00_08/
酢漬けのケイパーを見たい場合は
http://www7b.biglobe.ne.jp/~spice/caper.html

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ウッドセージ(Wood sage)の花

2008-07-17 07:22:40 | セージ&サルビア
(写真)ウッドセージの花


ウッドセージは、ヨーロッパ南部の森林、荒地、草原などの乾燥したところに自生し
耐寒性がある丈夫な植物だ。

名前にセージがついているが、セージ(アキギリ属)ではない。
ニガクサ属に所属し、近縁にはウオールジャーマンダーがある。

しかし、葉にしても、花にしてもセージらしい。

ウッドセージの花は、
セージ特有の口唇形であるが、良く見ると口の中の筒状が長い。
ミツバチがもぐりこむと自家受粉するが、下唇が役に立っていない感がする。
でも、この下唇が愛嬌があって印象的だ。

オレガノもホップの変わりに使われたが、
ウッドセージもホップの変わりに使われたようで、ピリッとした苦味が特色だ。
ただ、常用は避けたほうが良さそうだ。

(写真)ウッドセージの葉


ウッドセージ(Wood sage)
・シソ科ニガクサ属の耐寒性がある多年草。
・学名は、Teucrium scorodonia。英名はウッドセージ(Wood sage)、ガーリックセージ(Garlic sage)、ガーリックジャーマンダー(Garlic germander)
・原産地は、ヨーロッパ南西部の乾燥した草原。
・草丈、30cm程度で、葉の縁がチリチリと縮れている緑色の美しい葉
・開花期は7~9月に白色の小花を多数つける。
・日当たりが良く水はけが良い土壌で乾燥気味に育てる。


名前の由来
・属名のTeucrium(テウクリウム)は、トロイの王テウクロスの名前にちなみ、王が利尿・消炎・殺菌作用を発見したという。
・ウオールジャーマンダーと近縁種で、ティーなどでの長期使用は避ける。

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るり玉あざみ エキノプス・リトロ(Echinops ritro)の花

2008-07-16 08:05:50 | その他のハーブ

るり玉アザミは、手を刺すとげがついた歯状の切れ込みがある葉で
アザミそのもののように見えるがアザミではない。

といっても、アザミと同じキク科ではあるが、アザミ属ではなく違った属に所属するので
アザミという名がついているがアザミではない。


るり玉アザミには二回驚かされた。

一回目は、緑色をしたトゲトゲの玉が出現した時で、“玉(タマ)”の意味がわかった。
まるで、ヤマアラシのようでもあり、緑色をしたウニのようでもある。

(写真)トゲトゲの緑の“玉”が出現


(写真)進化の不思議な光景


二回目の驚きは、緑から青紫になり開花したときだ。
“熟成した”という感じが出てきており、この色合いが“瑠璃色”なのだろう。

“るり玉アザミ”とは良く考えたいい名前だ。

“瑠璃(るり)”は、アフガニスタン産のラピスラズリのことであり
深い紫色の青色をさす。
熟して開花するまでわからなかったが、まさにアザミのような深い青色をしている。

この球の形態は、
草食動物からの捕食を逃れるために進化したのだろうか?
(確かに緑色の時期はトゲトゲしている。)
或いは、多くの昆虫をひきつけるためにアザミ以上に蜜を吸う面積を拡大したのだろうか?
雄しべと雌しべの形態もアザミとは違うようであり、興味が尽きない。

学名での属名のエキノプスは、ハリネズミを意味しるり玉あざみの形状から来ている。
和名にしろ学名にしろ特徴を良くとらえたネーミングになっている。

(写真)るり玉アザミの立ち姿


るり玉あざみ エキノプス・リトロ(Echinops ritro)
・キク科エキノプス属の耐寒性がある2年生か多年草。
・学名はEchinops ritro(エキノプス・リトロ)、英名はsmall globe thistle 和名がルリタマアザミ。
・原産地は、東ヨーロッパおよび西アジア
・草丈1m以上になり茎にアザミ同様に白色の綿毛が生える。
・葉は、濃緑色で羽状全裂し鋸歯縁でとげを持つ
・開花期は7~8月で頭状に鮮やかな青色の頭花をつける。
・切花、ドライフラワーとして利用する。
・夏の暑さは苦手だが、日陰では育たないという気難しさがある。
・多湿も苦手で、水をやりすぎたりすると立ち枯れ病にかかりやすくなる。
・株分けで殖やす。
・2年に1回は植え替えを行い、その際に株分けする。3~4月が適期。
・現在は観賞用だが、根は抗炎剤として使われていたようだ。


名前の由来と伝播
・属名のエキノプス(Echinops)は、ギリシャ語のechinos(ハリネズミ)ops(似る)からなり、頭状の球状の花からくる。
・イギリスには1570年に伝わったというから、チューリップがオスマントルコからヨーロッパに伝わった時期にるり玉アザミも入ってきた。日本には昭和初期に伝わる。

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オレガノ(Oregano)の花

2008-07-15 06:49:04 | その他のハーブ

(写真)オレガノの花


オレガノは歴史が古いハーブで、 “幸せをもたらすハーブ”として尊敬されているが
姿かたちに特色がなく、今的な言葉で言えばタレント性が感じられない。
ストレートに言えば、山路にある雑草といったところが似つかわしい。

メキシコを含めて地中海性気候で育つハーブの印象として
派手系のメキシコ原産のハーブに対して小アジア・地中海沿岸のハーブは地味系が多い。

しかし、人間社会での有用性は薬草としても、香り付けの香草としても優れており、
見かけで才能はよくわからないということを地で行っている。

オレガノを形態で区分すると、3タイプがある。
オレガノの仲間3グループ
(1)オレガノ、ワイルドマジョラムと呼ばれるオリガヌム類(本稿)

(2)スィートマジョラムを代表とするマヨナラ類

(3)オレガノケントビューティなどの観葉植物のアマラクス類

(写真)オレガノ立ち姿


一般的にオレガノと呼ばれるのは、
オリガヌム類のワイルドマジョラムであり、緑色の葉と野性的な香りがする。
この香りには殺菌効果があるので食品の保存材としても使われてきた。

また、ホップが使われるまでビールの苦味付けとして利用されていたという。
地ビールの製法で、どこかにまだ残っていそうだが・・・・
これなら飛んでいくのだが。

オレガノは、耐寒性があるので育てやすい。
タネから育てる場合だけ注意が必要で、これは参考書を読んでいただきたい。

キッチンハーブとして使う場合は、
オリガヌム種のグリークオレガノ(O.vulgare subsp.hirtum)がお奨めで、
育った苗も、香りにばらつきがあるので、
いい香りがするものを選んでこれを株分け、さし芽などで増やすと良い。

(写真)オレガノの葉


オレガノ(Oregano)
・シソ科ハナハッカ属の耐寒性がある丈夫な多年草。
・学名は Origanum vulgare。英名がOregano、Wild marjoram、和名はハナハッカ。
・原産地は、ヨーロッパ南部からアジアの東部。
・草丈は、50~60㎝
・開花期は7~9月で円錐状の花穂は直立して白い花を咲かせる。ピンク、紫の花色もある。
・乾燥には強いが直射日光に弱く葉色が悪くなるので、場所に留意する。
・開花後枝を刈り込むと秋に新しい枝が出る。葉を増やすには刈り込むと良い。
・ミントのような香りがし、トマトとの相性がよいのでイタリア料理の必需品。

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その42 植物学の謎 パープルルースストライフの受粉システム

2008-07-14 07:31:18 | ときめきの植物雑学ノート

パープルルースストライフの謎

(写真)花一杯のパープルルースストライフ


パープルルースストライフは、不思議な花のようだ。
あの進化論の巨人“ダーウィン(Charles Robert Darwin, 1809- 1882)”も、この花を観察して悩んだという。
(凡人である私には何で悩んだかがよくわからないが・・・)

つまりこういうことだ
パープルルースストライフには、1本に三種類の花が咲くそうだ

三種類とは、花の色とか花びらの形の違いではなく、
ダーウィンが悩むぐらいだから進化にかかわることで
一つのパープルルースストライフに、雌しべ(花柱)と雄しべの長さが異なる3種類の花がある。
ということだ。

長さが違うということは、蜂が飛んできて3種類のどれかの雄しべの花粉がつくと、
その長さにあった雌しべ(花柱)でないと受粉することができないので、
当然、自家受粉しにくいような雄しべと雌しべの長さになっているので、
よその花でないと授粉できないということで他家授粉の確率が高まる。

確かに、他家授粉を優先させる方法として雌しべ・雄しべの長さが異なるという方法はわかるが、
3種類もあるということが何なのかわからない。

進化の考え方として
大きな環境変化があったときは、あらゆるものが同時多発的に出現し
その中から環境に適合したものが生存できるという適者生存説があるが

パープルルースストライフの3種類も何らかの理由がありそうだ。
或いは、異なる環境で能力を発揮する可能性を秘めているのかもわからない。


現在のパープルルースストライフは、沼地、湿地などで増殖しており、
この種が存在しなかったアメリカ大陸でも増えているようなので、
環境に適合する優位な子孫繁栄の方法であることが証明されているが、
複雑にした理由は何なのだろう?
謎でもある。

わが庭の咲き始めのパープルルースストライフをつぶさに観察したが、
1cm未満の花であり裸眼では、雄しべ・雌しべの長短を見極めるにはいたらなかった。

咲き始めに3輪だけ咲いたことも3種類の花に関係しているのであろうか??
新たな疑問が沸いてきた。

(写真)写真)確かに違いそうだ・・・雄しべ、雌しべ


花を楽しむための雄しべと雌しべの観察

子孫を残すということは、ある意味で花々が生存の戦略とマーケティングを展開しているようだ。

その基本を“受粉”で整理すると
1.自家受粉は、受粉の確率が高くコストが安い。
2.他家受粉は、媒介者を必要としそのために余分のコストがかかり受粉の確率も低い。
ということになる。

次に“生存”ということで整理すると次のようになる。
3.自家受粉は、遺伝的な多様性を高めない。
4.他家受粉は、遺伝的多様性を高め、適応性が高まる。

このように整理すると、どちらを選択するのがベストであろうかと考えるようになる。
植物も長い歴史の中でこれを考えてきたのではないだろうか?
と思う。

(写真)花粉放出中のノアザミ


5月に咲いたノアザミは、
雄しべが大量に作った花粉を自家受粉しないように
花粉が放出し終わった時期を見計らって受粉できるように熟成するという。
徹底しているのは、残った花粉をかき出す機能まで雌しべが持っているというから驚きだ。
これを“雌雄異熟”というそうだ。
ノアザミの場合は、雄しべが先に熟して花粉を放出するので“雄性先熟”というが、
時間差攻撃というところだろうか。

パープルルースストライフの場合は、
自家受粉を避けるために、雄しべと雌しべの距離を大きくとっているが、
これを“雌雄離熟”といっている。
しかも3種類あるというから自家受粉の可能性がありすぎるのではないかと思うが
どうだろう。

他家受粉の場合は、
蜂・蝶などの流通業者に花粉を運んでもらう運賃の支払いと接待をしないといけないし、
きていただくためのプロモーションを展開しないといけない。
来てもらうというこの部分が花々の競争で、魅力的でなければ生き残れなくなる。

自家受粉、他家受粉にしろ
自分の遺伝子を大量にばらまきたいというのが遺伝子の持つ本質で、
利己的、わがままだという説が提示された。
なるほど納得。と自己正当化したくなる説であり、
リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』 (The Selfish Gene、1976)は、一世を風靡した。

しかし、
ばらまくにはコストがかかるし魅力ある自分にしなければならないという社会の仕組みがある。
美しい花をじっと見ているとこんなことが透けて見えてくる。
だいぶ目が悪くなってきたのだろうか、霞んで見えているかもしれない・・・・・

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パープルルースストライフ(purple loosestrife)の花

2008-07-12 07:36:55 | その他のハーブ
今日は、強烈なことでは初めての夏日になりそうだ。

こんな日に出かけると、帰ってくると植物がダウンしていることが多い。
朝たっぷりと水をやっただけでは足らない。
そこでチョッとテクニックを使ってみることにする。

大事な鉢には、受け皿に軽石をたっぷりと敷き、その上に鉢を置く。
そしてこぼれるまで水をたっぷりとあげる。

さらに、鉢をまとめて日陰に置いておくと水分の蒸発量を抑えられるので、
旅行にもいける。
まずは、1泊からテストですが・・・・

つい、水辺に咲いている花が咲いたので余談からはいってしまった・・・


(写真)パープルルースストライフの花


昨日までつぼみというふくらみがなかったが、
天気のよさにつられたのだろうか、3輪だけパープルルースストライフの花が咲き
様子を見ているようだ。

1㎝に満たない赤紫の花が、今は3輪だけだが
茎の天辺まで咲きあがり林立する姿は見事という以外ない。

水辺に生息するので湿った土壌を好むが、わが庭では、いつしか乾燥に耐えられるようになっており、
真夏日一日ぐらいの脱水状態でも耐えている。


和名ではエゾミソハギというが、ミソハギとはチョッと異なる。

ミソハギは、旧盆頃に咲き、お盆の花として使われるので、
ハギに似た禊(ミソギ)に使う花ということでミソハギと呼ばれるが、
別名ボンバナ(盆花)、ショウリョウバナ(精霊花)とも呼ばれる。

エゾミソハギとミソハギの違いは、葉を見れば直ぐわかる。
エゾミソハギは、茎を抱くように十字に葉が生えているが、
ミソハギは、互い違いで十字に対生している。

どちらにしても、禊(みそぎ)とは恐れ入った。
だいぶ穢れてきているので、はやめの禊を促しているのであろうか??

(写真)和名エゾミソハギの立ち姿


パープルルースストライフ(purple loosestrife)
・ミソハギ科ミソハギ属の耐寒性がある多年草。
・学名は、Lythrum salicaria。 英名がパープルルースストライフ(purple loosestrife)、和名はエゾミソハギ、別名センクッサイ(千屈菜)
・(ミソハギは学名Lythrum ancepsで、ボンバナ(盆花)、ショウリョウバナ(精霊花)とも呼ばれる。)
・原産地は、ヨーロッパ、アジア中央部、アフリカ北部、日本と温帯地方に幅広く分布。
・湿地帯に生息するので、乾燥に弱い。
・草丈50~120cmだが、春先の摘心で50cmぐらいにおさえる。
・開花期は、7月から10月。花の色は赤紫で穂状にビッシリつける。
・秋に葉が紅葉する。
・全体を乾燥させ煎じて飲むと、下痢止めとなるが薬効に注意。

名前の由来
・属名のLythrum(リトルム)は、ギリシャ語の血に由来し、種小名のsalicaria(サリカリア)はヤナギを意味し葉の形がヤナギに似ているところからついた。

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カラミント(lesser calamint)の花

2008-07-11 06:20:02 | その他のハーブ

(写真)線が面をつくるカラミントの花


カラミンタ、カラミンサ、など語尾が違った言い方がされるが、
カラミントは、葉・香り・効果ともミントに似ている。
しかし、ミントはハッカ属、カラミントはカラミンタ属と異なる。

カラミントのことを、英名では“lesser calamint(レッサーカラミント)”と呼ぶ。
レッサーパンダが有名だが、この場合はジャイアントパンダに対して呼ばれているように、
“レッサー”は、何かよりも小さい・劣っていることを意味する。

何かといえば、ミントと較べて劣っていることをさしているが、
能力的には侮れない実力があるという。
古では強心剤として使われていたようなので、気休め以上の効果は有していたのだろう。

ということは、
よくわからない場合は手を出さないほうが良いということだろう。
これ以上心臓だけを強くして長生きしてしまったら困ったことになってしまうかもわからない??
リスクが何かということを吟味しない限り、リスク回避は出来ない。
これ鉄則ですね!!

(写真)スノーマンを連想させるカラミントの花


カラミントの花は、ミントよりはタイムに近い印象を受ける。
シソ科の特徴である口唇形の花の形は、ミント、タイム、カラミントとも全て共通だが
そんなイメージがある。


木陰の半日陰で縦一列に白い花が咲くその姿は、
ミントの香りとともにさわやかな冷涼間をもたらしてくれる。
木陰の魅力を高める夏にふさわしい一品かと思う。


カラミント(lesser calamint)
・シソ科カラミンタ属の耐寒性多年草。
・学名は、Calamintha nepeta (L.) Savi 。英名は、lesser calamint。
・原産地は、南欧からトルコ、コカサス、ウクライナ地域
・草丈は50cm。葉からは、ミントの結構強い芳香がする。
・開花期は初夏~8月、細い枝に白い花が密集して咲く。
・半日陰でも生育する。
・やや乾燥したアルカリ性の土壌が適している。
・花後に思い切った刈り込みをする。(1/2~1/3)
・株分け・さし芽などで殖やす。
・料理での利用は、生の葉を少量きざんで、マリネ、サラダ、魚介類の料理に入れる。

(写真)カラミントの花序


名前の由来、発見者などのボタニカル・ノート
属名のカラミンタ(Calamintha)の名前の由来は、ギリシャ語での“美しい”と“ミント(はっか)”の合成語に由来する。

カラミントのコレクター・採取者は、
えらく長々しい名前の英国人 Milne-Redhead, Edgar Wolston Bertram Handsley (1906-1996)だ。
エドガー・ミルン-レッドヘッドは、1933年8月に英国グロスターシャ州のがけの上で
カラミントを発見し採取した。

彼は、アフリカなどで数多くの新種を発見した著名なコレクターであり、
環境保護活動者としても知られている。
ケンブリッジの大学卒業後にキュー王立植物園にもぐりこんだが、しばらくは地位も給与もない時が続き、
植物好きの情熱がアフリカの植物相調査で花開いた。

学名の命名者
カラミントの学名の命名者は、イタリアの植物学者 Savi, Gaetano (1769-1844)
ピサ大学教授およびピサ植物園の園長でもあり、
トスカーナ地方の薬用植物を記載した『Materia medica vegetabile toscana』(1801年)
は美しい銅版画だそうだ。
植物画には関心があるので是非見たいと思っているが・・・・
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