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肉食の系譜
アルプカラクシ

アルプカラクシ・キルギジクスAlpkarakush kyrgyzicus は、中期ジュラ紀カロヴィアン(Balabansai Formation)にキルギスタンに生息したメトリアカントサウルス類で、2024年に記載された。新種のメトリアカントサウルス類とは、アベリサウルス類よりもずっと珍しいものである。アルプカラクシはアジアにおけるメトリアカントサウルス類の分布を、四川省やウイグルからさらに西方に拡大することになった。
アルプカラクシは2個体の標本が見つかっており、ホロタイプ標本はわずかな頭骨の骨(後眼窩骨、方形頰骨)、2、3の後方の胴椎、5個の仙椎、いくつかの肋骨、1個の手の指骨、1個の手の末節骨、部分的な腰帯(腸骨、恥骨、坐骨)、ほとんど完全な後肢からなる。パラタイプ標本は同じ発掘地で見つかった断片的な部分骨格で、ホロタイプよりも小さく、左右の恥骨、坐骨の断片、一個の脛骨からなる。このほかに参照標本として、いくつかの分離した歯と叉骨がある。組織切片の解析からホロタイプは成熟に近い亜成体、パラタイプは幼体と考えられた。
アルプカラクシの特徴はいくつかの形質の組み合わせからなる。後眼窩骨の眼窩上突起supraorbital brow が非常に発達していること、後方の胴椎の神経弓のくぼみに内部の含気腔に通じる孔があること、手の指骨II-1 の腹側の溝がほとんど閉じていること、腸骨の背側縁が後腹側に急に傾斜していること、恥骨/脛骨の比率が異常に高い(1.22 以上)、大腿骨の遠位端の前面に狭く深いintercondylar groove があること、などである。
後眼窩骨の最も顕著な特徴は極度に発達した眼窩上突起で、前方突起の後方2/3を覆っている。この突起は側面と背面に膨らんで、多数の小さな結節からなる顆粒状granulate の粗面をなしている。強く発達した後眼窩骨の突起は、一般にカルカロドントサウルス類にもメトリアカントサウルス類にも見られる。しかしカルカロドントサウルス類は通常、稜と溝からなる装飾をもつのに対して、メトリアカントサウルス類にはアルプカラクシのような顆粒状の構造がみられる。
後眼窩骨の前方突起の前端は太いが、涙骨や前前頭骨との関節面はなく、これらの骨と後眼窩骨は関節していなかったことを示す。この点はカルカロドントサウルス類やアベリサウルス類と異なる。後方突起は短くスパイク状で、上下方向よりも水平方向(内側外側)に幅広い点でシンラプトルと似ている。
この眼窩上突起の中で後背方に向いた三角形のような部分があるが、本文では特に強調していないようである。角質をつけてもそれほど大きな角状にはならないように見えるが。
参考文献
Oliver W.M. Rauhut , Aizek A. Bakirov, Oliver Wings, Alexandra E. Fernandes, Tom R. Hübner (2024) A new theropod dinosaur from the Callovian Balabansai Formation of Kyrgyzstan. Zoological Journal of the Linnean Society, 2024, 201, zlae090 h ps://doi.org/10.1093/zoolinnean/zlae090
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