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シャオティンギアと始祖鳥の位置付け


 シャオティンギアは中国遼寧省西部のジュラ紀後期の地層から発見された、始祖鳥に似た獣脚類で、徐星らによって2011年Natureに報告された。この論文では、この新属新種の記載だけにとどまらず、始祖鳥アルカエオプテリクスの系統上の位置についてかなり重点をおいて議論しており、既にあった論議に一石を投じた内容となっている。そのためNature のArticleに採択される価値が認められたのだろう。
 歴史的な発見から150年もの間、始祖鳥アルカエオプテリクスは最も原始的な鳥(アヴィアラエ、広義の鳥類)として位置づけられてきた。しかし最近のいくつかの発見により、その地位には疑問が投げかけられるようになった。そして今回、著者らは新属シャオティンギアを含めた定量的な系統解析を行ったところ、アルカエオプテリクス、シャオティンギア、アンキオルニスはアルカエオプテリクス科にまとめられ、これらはアヴィアラエではなくデイノニコサウルス類に属するという結果が得られた。すなわち鳥類の祖先よりも、ヴェロキラプトルなどのドロマエオサウルス類に近縁な動物ということになる。

 著者らは頭骨の形態学的特徴について、始祖鳥類、デイノニコサウルス類、基盤的アヴィアラエを比較して考察している。
 アルカエオプテリクスの頭骨は、アンキオルニス、シャオティンギア、他のデイノニコサウルス類と同様に、細長い吻と丸い後頭部による三角形に近い輪郭をしている。エピデクシプテリクス、サペオルニス、ジェホロルニスを含む多くの基盤的アヴィアラエでは、頭骨はより高く、短く丈の高い吻をもち、オヴィラプトロサウルス類に類似した状態を示す。アルカエオプテリクスの眼窩はアンキオルニス、シャオティンギア、他のデイノニコサウルス類と同様に比較的大きく、下側頭窓は前後に狭く後方に強く傾いている。それに対してオヴィラプトロサウルス類と基盤的アヴィアラエでは、眼窩は比較的小さく、下側頭窓は前後に幅広く、あまり後方に傾いていない。さらに外鼻孔の位置もアルカエオプテリクス、アンキオルニス、シャオティンギア、他のデイノニコサウルス類では低く、オヴィラプトロサウルス類と基盤的アヴィアラエでは高い。
 アルカエオプテリクスの前上顎骨は、デイノニコサウルス類を含む多くの獣脚類と同様に、丈が低く上顎骨よりもずっと小さい。一方、オヴィラプトロサウルス類と基盤的アヴィアラエでは、前上顎骨は丈が高く、上顎骨よりも大きい。アルカエオプテリクスでは、アンキオルニス、シャオティンギア、デイノニコサウルス類を含む多くの獣脚類と同様に、前眼窩窩の長さが高さより大きいが、オヴィラプトロサウルス類と基盤的アヴィアラエでは逆になっている。アルカエオプテリクスでは、アンキオルニス、シャオティンギア、デイノニコサウルス類と同様にpromaxillary fenestraが大きい。一方オヴィラプトロサウルス類とエピデクシプテリクス、サペオルニス、ジェホロルニスのような基盤的アヴィアラエにはpromaxillary fenestraがない。アルカエオプテリクスの涙骨には長い前方突起があるが、これはデイノニコサウルス類の特徴である。他の多くの獣脚類、特にオヴィラプトロサウルス類と基盤的アヴィアラエでは、前方突起はずっと短い。さらにアルカエオプテリクスの下顎は、アンキオルニス、シャオティンギア、基盤的デイノニコサウルス類と同様に長くほっそりしている。一方基盤的アヴィアラエは、下顎が比較的頑丈で、外側下顎窓が大きく、歯骨の背側縁が凸形で腹側縁が凹形にカーブするなど、オヴィラプトロサウルス類に似た下顎をもつという。
 また胴椎の含気孔や仙椎の数についても、アルカエオプテリクスはデイノニコサウルス類と同様で、基盤的アヴィアラエとは異なっている。
 このようにアルカエオプテリクスは、多くの特徴についてオヴィラプトロサウルス類と基盤的アヴィアラエよりもアンキオルニス、シャオティンギア、基盤的デイノニコサウルス類によく似ている。一方基盤的アヴィアラエは、多くの点でアルカエオプテリクス、アンキオルニス、シャオティンギア、基盤的デイノニコサウルス類よりもオヴィラプトロサウルス類と似ている。このことからアルカエオプテリクス、アンキオルニス、シャオティンギア(つまりアルカエオプテリクス科)はデイノニコサウルス類に含まれるという説が支持されるとしている。

 この頭骨の形態に関する部分を読むと、エピデクシプテリクスがオヴィラプトロサウルス類的な顔をしていることが、かなり影響しているという印象である。論文の分岐図には頭骨のイラストが並んでいるが、直観的にみてデイノニコサウルス類は眼窩が大きい小型の肉食恐竜的な顔であり、アヴィアラエはオヴィラプトロサウルス類とともに歯はあっても「くちばし顔」をしているような気がする。

参考文献
Xing Xu, Hailu You, Kai Du & Fenglu Han (2011)
An Archaeopteryx-like theropod from China and the origin of Avialae. Nature 475, 465-470 (28 July 2011) doi:10.1038/nature10288
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群馬県立自然史博物館:スピノサウルス展



 「砂漠の奇跡」の展示物が中心とはいえ、群馬県立が所蔵する他の標本なども見られて楽しめるイベントでした。(「北関東初上陸」って。幕張では展示されました、というのと同義なのでいわない方がよい。)
 「スコミムス」だった頭骨が「スピノサウルス類」になりました。



 長谷川先生の記念講演会で使われたDal Sassoのスピノサウルス上顎部分。歯は復元してある。



 あれ?テリジノサウルス類の末節骨(アルゼンチン)とあるが、これはメガラプトルの末節骨のレプリカです。私はついこないだミネラルフェアでパレオサイエンスから買って、特徴を確認したばかりです。そこで高桑先生に訊いたところ、展示業者が提供する一揃いのセットに含まれているとのこと。問題があるが、展示の都合と研究者の意見は一致しないこともあるということでした。大変ですね。



 このドロマエオサウルス類の頭骨は、産地が「東アジア」とある。



 モノロフォサウルスの標本は1体しか報告されていないはずですが、これは形が違うようにみえる。眼窩の上の辺りが変形しているが、後眼窩骨などが外れているだけで、これが実物の形で1993年の論文の図は復元した形なのか。あるいは未発表の第2標本が存在するということなのか、どうなのでしょう。



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神流町恐竜センター:恐竜展2011



 立ち上がる姿勢のタルボサウルスは、「関東初公開」という微妙なコピーですが、佐賀で最初に展示されたということです。もともと科博にあったタルボを組み直したもので、頭骨だけ質感が異なるとか。



 このカルカロの顔は、昔のゴンドワナ展以来です。「砂漠の奇跡」のときの生体復元もよかったが、これもやはり良い。



 デルタドロメウスは頭骨が見つかっていないのに、「頭骨だけ」を展示するのはいかがなものか。原始的なコエルロサウルス類と考えられた頃の復元とあるが、アロサウルスと比べてみようといわれても。。。コエルロサウルス類と想定して製作されたのでそれなりの特徴が盛り込まれている、それを読み取れという非常に難しい問題になる。タルボ、ティラノ、ギガノトの全身骨格を配置したので、ここには同じくらいの大きさの肉食恐竜の頭骨を並べたい、ついては「砂漠の奇跡」のときの展示品をなるべく活用したい、という展示上の都合でしょう。

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