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ドゥブレウイロサウルス1


 ドゥブレウイロサウルスは、ジュラ紀中期バス期にフランスのノルマンディー地方に生息したメガロサウルス類である。1994年にカルケール・ドゥ・カイン層から発見され,2002年に疑わしいポエキロプレウロン属の新種として報告されたが,その後尾椎の特徴などがポエキロプレウロンとは異なることがわかり、2005年に新属として記載された。頭骨の大部分と体の骨格の一部が発見されている。頭骨の研究から、メガロサウルス科の中でもエウストレプトスポンディルスやアフロヴェナトルと最も近縁とされている。

 大型の獣脚類としては、かなり頭骨が長く丈が低い。復元された頭骨の長さ50cmに対し、眼窩の位置での高さは15cmである。このように頭骨の長さが高さの3倍以上あるのは、他にはスピノサウルス科とアフロヴェナトルくらいであるという。頭頂骨にnuchal crestがないため、側面からみると頭頂骨が見えない。上顎骨にはpromaxillary fenestra とmaxillary fenestra がある。上顎骨の鼻骨突起(後背方突起)の前縁のラインが途中で屈曲している。この屈曲は獣脚類の中で最も顕著であるという。
 涙骨,前頭骨,鼻骨のいずれにも角やとさかなどの装飾はなく、シンプルな頭部である。(発見された涙骨は一部欠けていたが、涙骨角はないという。)トルボサウルス、アフロヴェナトル、エウストレプトスポンディルスと同様に、涙骨の鼻骨突起の前端は先細りになっているのに対し、頬骨突起(腹方突起)の先端は扇形に広がっている。下眼窩突起はない。進歩した獣脚類と異なり、後眼窩骨の腹方突起が眼窩の腹側縁まで伸びている。またトルボサウルス、アフロヴェナトル、エウストレプトスポンディルスと同様に、後眼窩骨の腹方突起は横幅が広く断面がU字型である。

 頭骨以外の骨格は断片的で、正確なプロポーションは不明である。前肢は1個の末節骨しか見つかっていない。その形状はバリオニクスに似ているという。後肢は大腿骨、腓骨の一部と1個の中足骨、1個の趾骨がある。スピノサウルス上科としてはユニークな特徴として,大腿骨の軸に対して大腿骨頭が90度以上に曲がっている(はさまれる角度が90度以下)。これは、ケラトサウルスやディロフォサウルスのような、より原始的な獣脚類と同様であるという。
 この恐竜はバリオニクスほどではないが,確かに顔が長く,もう少しでワニ顔になりそうな感じもある。実際にメガロサウルス類はスピノサウルス類と近縁である(スピノサウルス上科)。またポエキロプレウロンもドゥブレウイロサウルスも、マングローブの茂るような浅い海に面した海岸地帯に棲んでいたと考えられている。さらにポエキロプレウロンの腹部からは、胃石と思われる10個の小石とともに、当時のサメの一種ポリアクロドゥスの歯が見つかっていることから、メガロサウルス類は少なくとも食料の一部として,魚を食べたと考えられている。メガロサウルス類は海辺を徘徊しながら、陸上動物、翼竜、魚類,それらの死体など、利用できるものは何でも食べる肉食動物であったと想像される。これらとの共通祖先の中から,より魚食に適応して特殊化したスピノサウルス類が進化してきたというのは、ありそうなシナリオである。

参考文献
Allain, R. 2002. Discovery of megalosaur (Dinosauria, Theropoda) in the Middle Bathonian of Normandy (France) and its implications for the phylogeny of basal Tetanurae. Journal of Vertebrate Paleontology 22:548-563.

Allain, R. 2005. The postcranial anatomy of the megalosaur Dubreuillosaurus valesdunensis (Dinosauria, Theropoda) from the Middle Jurassic of Normandy, France. Journal of Vertebrate Paleontology 25:850-858.

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