マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

初めての大規模修繕工事

2007-03-07 15:11:27 | 外壁等

柏南ファミールハイツ高柳
(千葉・柏市)



初めての大規模修繕工事にあたって



南柏ファミールハイツ高柳は、東武野田線「高柳駅」から徒歩8分の住宅街に1992年5月に建設された。RC造3階建て4棟、総戸数96戸の集合住宅である。今年で築15年ということもあり、住民のほとんどが新築当初から住むファーストオーナーで、昨年8月からおこなわれた大規模修繕工事が、管理組合が初めて体験する大掛かりな工事となったが、大手ゼネコンに勤務する人が住民の中にいて修繕委員をまとめ、今年2月に滞りなく工事が完了した。



主な改修箇所



美観向上に合せて耐候性の向上・漏水防止を基本に、躯体保護を目的とした工事をおこなった。主な改修箇所は以下の通り。



■防水改修工事
防水工事は、4年前におこなった屋上を除く、階段室庇屋根・階段室床・バルコニー床を施工した。階段室庇屋根は、既存ウレタン防水に新規ウレタン防水材料を被せておこなう被せ工法を、階段室床・バルコニー床にはシート貼りをおこない、共に5年間の保証をつけた。



【階段室庇屋根防水工事】



階段室庇屋根防水工事:施工前
施工前


Koji0703_02
施工後


【階段室床防水工事】



階段室床防水工事:施工前
施工前


階段室床防水工事:施工後
施工後


■外壁下地補修工事
外壁塗装の下地(躯体)の劣化損傷の機能回復に重点を置き、タイル補修・壁ひび割れ補修・シーリング打ち替え補修などをおこなった。



【タイル補修工事】



タイル補修工事:補修前
補修前



タイル補修工事:下地補修
下地補修



タイル補修工事:補修完了
補修完了



■鉄部塗装工事
鉄部の腐食などを防ぐために、フェンス・ゴミ置場・駐輪場などの鉄部を施工した。



■その他の工事
道路アスファルト路盤舗装工事・植え込み擁壁洗浄なども合せておこなった。



日常生活・品質・安心を優先した工事計画



集合住宅の居住者は、大規模修繕工事が今後の自分たちの生活を快適にするために必要な建物全体のメンテナンスだと理解している。そして同時に、工事が日常生活にできるだけ支障をきたさないことと、「完璧な工事」を望んでいる。当然のことではあるが、工事費用や期間などの問題で実現するのは容易ではない。



今回の大規模修繕工事では、日常生活にできるだけ支障をきたさないように、4棟一斉に工事を始めるのではなく、駐車場の問題なども考慮して、できるだけ住民に負担が掛からない方法を考え、2棟ずつ工事をおこなうことを選択した。



また、大規模修繕工事を担当するすべての作業員を、工程ごとに固定し、同じグループが4棟全部を手掛けられるように事前交渉をした。これによって仕上がりの品質を均等に保ち、各工程に携わるグループに、工事に対する責任と自覚を持たせるように配慮した。



工事に携わる人間を固定することで、得られるメリットは他にもある。工事中は居住区内に、多くの工事関係者が半年近く出入りすることになるが、関係者が固定されれば、不審者の侵入に対してのガードにも繋がり、居住者も、出入りしている工事関係者が顔見知りであれば安心できるメリットが生まれる。当マンションの今回の工事ではその点を特に注力し、工事を進捗させた。





<アメニティ新聞294号 2007年3月掲載>




集合住宅管理新聞アメニティはマンションでの快適な生活をめざして、管理組合と居住者の皆さんが参加して手作りする新聞です。





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3回目の大規模修繕工事

2007-02-06 12:00:00 | 外壁等

東品川マンション東品川マンション(東京・品川区)



【3回目の大規模修繕工事にあたって】



東品川マンションは、京浜急行「青物横丁駅」から徒歩5分、02年12月に開業した、りんかい線「品川シーサイド駅」からも徒歩5分圏内の元なぎさ通り沿いに建設された築32年を迎える総戸数84戸、1LDK中心の分譲マンションである。



今回の大規模修繕工事では、単に美観の向上だけではなく、同マンションの耐候性・漏水防止・メンテナンス機能の向上などにも配慮し、建物自体を長持ちさせることを目的とした材料選定や改修方法でおこなわれた。主な改修箇所や状況は以下の通りである。



●防水改修工事(屋上屋根・バルコニー)



躯体を保護する意味で防水改修工事は重要な役割を果たす。今回の工事では、既存防水に新規防水材料を被せておこなう「被せ工法」を採用した。屋上屋根・バルコニー共に、ウレタン防水を使用することによって10年間の漏水保証を付けた。



●外壁下地補修工事



大規模修繕工事の最も重要な目的は、外壁塗装下地(躯体)の劣化損傷を機能回復させることにあり、今回の工事では下地補修に重点をおいて作業をおこなった。仕上げの美観性向上と併せて躯体の機能性向上もおこなえる塗料を検討した結果フッ素塗料を採用した。



●外部廻り鉄部塗装工事



外壁塗装と共に外部廻り鉄部の腐食などを防ぐために、鉄部塗装工事をおこなった。その他にゴミ置場・駐輪場なども併せて塗装工事をおこない、コスト削減をした。



●階段外部廻り鉄部塗装工事と取替え工事



同マンションの外階段は2箇所に設置されており、特に鉄部の腐食が著しい「北側階段」は取替える改修工事をおこない、「南側階段」は踊り場のたわみ直しをおこなった。塗装は鉄部の腐食を抑えるため階段部分は「亜鉛メッキ」とし、柱・梁部分は5年間保証の「重防食塗装」を採用した。



外階段(北側)・撤去北側階段・撤去完了


外階段(北側)・新規部材組み付け新規部材組み付け


●その他



今回の工事では外壁や屋根などの改修工事と共に、マンションの機能改善・向上の工事と、仮設足場が必要な改修項目を併せて工事範囲として実施した。エントランス廻りでは、スロープの拡幅および滑り止めタイルの交換。開放廊下手摺交換、廊下照明器具交換、各戸室名板交換なども一緒におこなわれた。住民にとっても、工事回数が減ることは大歓迎である。



【おわりに】



今回、3回目の大規模修繕工事をおこなったが、1・2回目の工事資料がほとんど残っていない状況からのスタートであった。設計監理を担当したベニーエステートサービスは、8年前に日常の管理業務を委託された。この間にマンション全体の劣化に関する情報を収集し、今回の設計監理に活かしていた。同社は大規模修繕工事後のメリット・デメリットを管理組合と事前に話し合い、細かい工事を今回の工事時期に合せることでスケールメリットを出すことなども提案した。また、施工業者の募集をおこない、応募があった16社の中から管理組合が最終的に施工業者をTOHOに決定するまでの間サポートもおこない、施工業者とお互いに協力しながら今回の工事を完了させた。さらに同社では「今後も工事後の経過観察を含めて、マンションの維持管理や長期修繕計画をサポートしていきたい」としている。



<アメニティ新聞293号 2007年2月掲載>




大規模修繕工事 耐震補強工事とその後

2007-01-10 01:00:00 | 外壁等

豊島ハイツ全景
豊島ハイツ

(東京・豊島区)



【マンション概要】



豊島ハイツは西武線沿線に建ち、東長崎駅からその全容を望むことができる。1974年に竣工した当マンションは、当時としては先進的な複合用途型マンションで、1階に大型スーパーマーケット、2階に8軒のグループクリニック、そして3~10階に150戸の住居が入っており、新築当時、東長崎駅前の一大開発事業であったことが伺える。



今回の外壁を中心とする大規模修繕工事は、築32年目であるが、2回目の工事である。竣工後10年目に第1回目の工事を実施した後、22年間、部分的な補修しか行われてこなかった。



そこで、今回の工事では、徹底的にひびわれや鉄筋露出部分などの躯体改修を行うとともに、経年して付着強度が弱くなっている仕上塗膜を剥離することにした。また、複合用途型マンション特有の構造的なバランスが悪い建物なので、耐震補強に対する検討も大きな課題となった。



【耐震補強工事の検討】



今後も安全に住んでいけるように建物を再生する上で、耐震性能は居住者の最大の関心事であった。当建物は1974年竣工であるので、71年の建築基準法改正後の建物であるが、81年に改正された新耐震法には適合していない。また、1階、2階部分には兵庫県南部地震で被害の多かった独立柱(壁の付帯しない柱)が多くあり、壁量の多い3階以上とは構造的なバランスが異なっている。したがって、1階、2階の耐震補強は、今回、是非とも実現したい工事であったが、1階に大型スーパーマーケットがあり、その内部は、営業障害の問題から工事を実現できる可能性は低かった。そこで、「まずはできるところから補強し、建物が倒壊する危険性を少しでも下げる」をキーワードに、住居部分の1階エントランス廻り、ならびに2階廻りの独立柱の補強をすることになった。



補強方法の検討は、外壁等総合改修工事の見積依頼に併せて、ゼネコンを中心にプロポーザル方式で行った。5社からの提案に対して数度のヒヤリングを行った上で、補強の効果、補強することによって他の部位に与える影響などを検討し、最終的には1階エントランス廻りと2階廻りの耐震補強工事が実現することになった。



耐震補強工事風景
耐震補強
(ポリエステル繊維巻き補強)



【外壁等改修工事】



外壁の旧塗膜は22年前のものであり、著しく付着強度が落ちていた。そこで、外壁改修工事にあたっては、原則として旧塗膜を全撤去する方針とした。また、当マンションはコンクリート躯体の上にモルタル層が塗ってあり、多くの場所でモルタル層の浮きが確認された。これらの浮きに対しては、ステンレスピンとエポキシ樹脂で筋結し、部分的にはモルタル層を十数m2にわたってハツリ落とした上で、再度、モルタルを付け直すなどの徹底的な補修を施した。



その他、外壁色を既存の白色からベージュとブラウン色のツートンカラーにしたり、共用玄関まわりの改善をおこなったりして、明るく新しいイメージのマンションに再生させた。



【その後】



今回の工事の成功は、建物に対する改善もさることながら、区分所有者の意識向上にもつながったようだ。本工事を終えて、区分所有者一人一人の「協力してより良いマンションにする」という意識が強くなったように感じる。



これらの効果であるかはさておき、1階大型スーパーマーケット側から、やり残した耐震補強への理解が得られ、来春には懸案になっていたスーパーマーケット内の耐震補強工事も予定されている。また、住戸内の工事がともなう排水管の全面的な更新工事の計画も今回の工事を機に始動させた。



今回の外壁を中心とする大規模修繕工事は、居住者が自分のマンションを足元から見直す良い機会となった。



((株)スペース・ユニオン 一級建築士 藤木亮介)



<アメニティ新聞292号 2007年1月掲載>




施工会社の責任施工方式による三回目の大規模修繕工事

2006-12-06 00:00:00 | 外壁等

若松二丁目住宅
若松二丁目住宅管理組合
(千葉県・船橋市)

1号棟外壁施工後 NPO日住協千葉県支部主催による工事見学会が、11月23日大規模修繕工事を終えた若松二丁目住宅において行われた。以下、工事の概要について、同住宅管理組合にご執筆いただいた。


建物概要

Koji0612_101号棟外壁施工後

「若松二丁目住宅」はJR京葉線「南船橋」駅から徒歩8~10分にある。旧公団(現・都市再生機構)による賃貸(1340戸)・分譲(576戸)併設の団地型住宅である。

昭和44年7月竣工、38年目を迎えた(階段室型・陸屋根)ラーメン構造2棟、壁構造14棟、管理棟(平屋)1棟で構成された緑豊かな団地で、幼稚園、保育園、小・中学校、大型ショッピング施設及び公園も隣接する住環境に恵まれた場所にある。

管理組合の取り組み

建造物担当理事並びに建物補修委員の協力を得て、管理組合で見積要領書を作成、施工業者13社(内2社は屋上防水のみ、他の11社は全体施工)の方々に外壁の中性化診断・他を依頼した上で、修繕工事の提案書並びに概略見積書の提出をお願いし、これをベースに見積要領書(作成に約6ケ月を要した)を作成、見積参加業者13社に見積依頼をした上で、7社に再見積をお願いし、南海工業(株)に大規模修繕工事をお願いすることとした。

大規模修繕工事の実施並びに予算化については、2年前に総会決議を経ていたことから工事を実施することに専念できた。当住宅としては将来建て替えの意志はあるが、今回工事に当たっては建て替えが出来なくても対応できるような内容を前提とした。

修繕工事の特徴等

工事施工業者による自主管理方式で、責任施工方式とした。

屋根:施工前
屋根施行前
屋根:施工後
屋根施工後

屋上防水工事は、平成元年に施工した防水ゴムシートは劣化していることから全面撤去し、露出した改質アスファルトシート上にアスファルトシートを二層・熱工法で密着させ、防水層及び躯体(建物本体)の劣化防止を目的に断熱材を防水層上に敷き詰める工法とし、結露の発生に対しても抑止できることにした。

ベランダ:施工前
ベランダ施工前
ベランダ:施工後
ベランダ施工後

ベランダ及び階段室は、ウレタン塗膜防水に換えて、防水効果を高め鉄筋の爆裂予防による躯体の保護及び、美観並びに居住性を良くする見地から、塩ビシート貼りとした。

外壁塗装は、高圧水洗浄(300kg/cm2)で壁の汚れ及び、密着度の低い部分の塗膜を剥がした上でシリコン樹脂塗料を使ったダブルテクト工法(シリコン樹脂の持つ耐久性とメンテナンスコストの低減並びに、工期の短縮に繋がる)を採用した。

4月3日に改修工事スタート、途中5月・7月と例年になく、雨天が続き工事期間の確保を心配する時期もあったが、細部に渡る手直し確認の上、10月16日に、南海工業(株)並びに住民の方々のご協力を頂く中で、無事故で改修工事を終了した。

表札・階段:施工前
表札・階段表示施工前
表札・階段:施工後
表札・階段表示施工後
階段:施工前
階段施工前
階段:施工後
階段施工後

若松二丁目住宅管理組合理事長 武川 光弘

<アメニティ新聞291号 2006年12月掲載>


単棟型階段室タイプ(32戸)の第1回大規模修繕工事

2006-11-08 09:00:00 | 外壁等

グリーンプラザつくば並木・建物全景 
グリーンプラザつくば並木

(茨城県・つくば市)



【立地環境】



つくばエキスプレスの開業で便利になったつくば市の中心部では、民間の単棟市街地型で比較的大型のマンション建設が盛んになってきました。それまでは、公団階段室タイプの団地型マンションが大勢を占めていました。「グリープラザつくば並木」もそのようなマンションですが、1棟で全32戸の小規模マンションです。敷地南側は専用テラス・庭に面して遊歩道が有り、その先はショッピングセンターの駐車場となっており、広く開けた明るい環境となっています。北側のマンション駐車場の先は隣地で、公務員宿舎の駐車場、さらに西側のアプローチは広い道路に面しており、建物廻りは全体に広く開けた感じを受けます。



【建物概要】



単棟型階段室タイプ、鉄筋コンクリート壁構造・4階建、8戸×4階段合計32戸、付属棟として管理・集会室棟、受水槽・ポンプ室棟の2棟。3・4LDKの典型的ファミリータイプ。最上階の4階住戸にロフトを備え、平らな屋上からロフトの丸屋根が建物の外観にアクセントを付けています。南面・両妻面のバルコニーは広めで凹凸があり、その変化が建物全体の陰影を作っています。築後11年でしたが、ヒビ割れや汚れなどが目立ち、修繕工事が待たれました。工事の際には同時に公団の10年瑕疵補修も実施する事となりました。



屋根
屋上・屋根


Koji0611_02南側バルコニー


【工事概要】



総合的修繕工事として、外壁等のコンクリート躯体修繕及び塗装塗替、バルコニー床・出窓屋根・庇・笠木等の防水、鉄部等金物塗装塗替、集合郵便受取替、西側庭園灯の移設・増設などの他、各部の補修改修工事を実施。工事着工は平成18年2月中旬、工事期間中は比較的雨が多く、天候の影響で約1ヵ月程の遅れとなり、7月中旬に竣工引き渡しとなりました。



  1. 外壁等
    調査時点で懸念されたヒビ割れの多くは表面塗材までで、躯体コンクリートからのヒビ割れは比較的少なく、又、発錆鉄筋によるコンクリートの破損(爆裂)箇所も同様に予想よりかなり少ない結果となりました。外壁仕上塗装はこれまでより耐候性と弾力性の高いシリコン系の複層塗材を使用。
    Koji0611_05
    全面にシートが掛けられた


  2. 防水関係
    屋上アスファルト防水とシングル葺屋根については漏水も無く、特に問題はありませんでしたので、部分的な補修と保護塗装にて済ましております。バルコニーについては床面を防水・意匠性の高い塩ビ製床シート貼りとし、排水溝や笠木・巾木はウレタン塗膜防水を施しております。その他、花台内部や庇・パラペット天端等の要所にはウレタン塗膜防水を施しております。
    バルコニー
    バルコニーの床シート・花台の防水


    玄関庇上
    玄関庇上の防水


  3. その他
    竪樋や鉄部の塗装、バルコニーなどのアルミ手摺の研磨清掃を行いました。1階エントランスの天井照明器具と集合郵便受は取替、北面出窓アルミサッシ下枠水切板の補修、敷地西側の庭園灯の追加などを行いました。従来よりマンション内で懸案となっておりました、公団の瑕疵補修については、公団基準に基づくヒビ割れ等の補修、屋上と1階床面の打継目地の設置、レンジフード給排気口の導風板設置が行われました。
    集合郵便受けと掲示板
    取り替えた集合郵便受けと掲示板


【工事結果と今後】



今回の工事では大きなトラブルや事故もなく、順調に終了する事が出来ました。特に外壁のヒビ割れなどが思いの外少なかった一方で、出窓アルミサッシの水切りの腐食が見つかるなどの想定外の状況も見られた。当初予定していた階段床の専用シート貼りは、現場の状況と予算的な配慮から中止となりました。このような部分では心残りとなっていますが、全体としては順調で、高品質なものができたものと思います。次回大規模修繕が想定される12年後程度までは十分に維持出来るものと考えられます。



(有)柴田建築設計事務所



<アメニティ新聞290号 2006年11月掲載>