機械式駐車場を撤去し、防災倉庫にしたい。また備蓄品は各自で用意すべきとの声も。どのように進めたら良いか?
Q
私たちの団地では高齢化が進み、駐車場を利用する人が激減しています。平面駐車場は残して、メンテナンス費用のかかる機械式駐車場を撤去し、倉庫を建てる。そして、倉庫には災害時のための備蓄品(非常食、飲料水、簡易トイレ等)を購入して保管するという案が理事会で出ています。どのような手続で進めれば良いでしょうか。
また、一部の理事からはそのような備蓄品は居住者が各自で用意すべきもので管理費を使うことは問題はないか、組合員ではなく管理費の支払い義務を負わない賃借人に管理費で購入した備蓄品をただで提供することに問題はないのかという意見も出ていますが、どのように考えたら良いでしょうか?
A
機械式駐車場の撤去が、共用部分の「変更」なのか「処分」なのかかが問題となります。処分行為となれば区分所有者全員の同意が必要となりますが、機械式駐車場を撤去して、倉庫とすることは共用部分変更に該当すると考えられます。但し、軽微な変更ではないので、区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。
区分所有法17条2項は共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときはその専有部分の所有者の承諾が必要と規定しています。この特別の影響とは当該変更行為の必要性、有用性と当該区分所有者の受ける不利益とを比較考量して、受忍すべき範囲を超える程度の不利益を受ける場合とされています。過去の裁判例でも「増築工事により専有部分の日照・採光・眺望に影響があるとしても、その影響が若干であり、居住環境を著しく悪化されるとは認められない場合には特別の影響を及ぼすものではない」と判断されています(大阪高裁平成4年1月28日判決)。
機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることが専有部分の居住環境を著しく悪化させることは通常は考えられないし、機械式駐車場が使えなくても平面駐車場は使えることからの特別の影響には該当しないと考えられます。したがって、本件では総会の特別決議が得られれば機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることはできます。
それでは、災害時の備蓄品を管理費で購入して、管理組合が保管することはできるのでしょうか。管理組合の主たる業務が共用部分の維持管理にあることは当然です。しかし、管理組合の業務はそれだけにとどまりません。避難訓練を行うことや消火器を購入することが管理組合の業務に含めれることには異論がないと思います。
防災に強いマンションを作ることは広い意味で共用部分の維持管理に資することなので、災害時の備蓄品を管理組合で購入して、保管することは許されます。手続としては備蓄品の購入代金を予算案の中に入れて、予算案を総会の決議(普通決議)で承認してもらうことになるでしょう。
専有部分を賃貸することが許される以上は賃借人の存在は当然の前提であり、賃借人は管理費の支払い義務を負う者ではありませんが、規約や細則を遵守する義務を負っており、共用部分を維持管理する担い手であることは組合員となんら変わりません。居住している人を災害から救うことは広い意味での共用部分の維持管理に資するので、備蓄品の提供を賃借人に行うことは問題ありません。
回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」掲載)
集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
https://www.mansion.co.jp/mihonshi
Q
私たちの団地では高齢化が進み、駐車場を利用する人が激減しています。平面駐車場は残して、メンテナンス費用のかかる機械式駐車場を撤去し、倉庫を建てる。そして、倉庫には災害時のための備蓄品(非常食、飲料水、簡易トイレ等)を購入して保管するという案が理事会で出ています。どのような手続で進めれば良いでしょうか。
また、一部の理事からはそのような備蓄品は居住者が各自で用意すべきもので管理費を使うことは問題はないか、組合員ではなく管理費の支払い義務を負わない賃借人に管理費で購入した備蓄品をただで提供することに問題はないのかという意見も出ていますが、どのように考えたら良いでしょうか?
A
機械式駐車場の撤去が、共用部分の「変更」なのか「処分」なのかかが問題となります。処分行為となれば区分所有者全員の同意が必要となりますが、機械式駐車場を撤去して、倉庫とすることは共用部分変更に該当すると考えられます。但し、軽微な変更ではないので、区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。
区分所有法17条2項は共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときはその専有部分の所有者の承諾が必要と規定しています。この特別の影響とは当該変更行為の必要性、有用性と当該区分所有者の受ける不利益とを比較考量して、受忍すべき範囲を超える程度の不利益を受ける場合とされています。過去の裁判例でも「増築工事により専有部分の日照・採光・眺望に影響があるとしても、その影響が若干であり、居住環境を著しく悪化されるとは認められない場合には特別の影響を及ぼすものではない」と判断されています(大阪高裁平成4年1月28日判決)。
機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることが専有部分の居住環境を著しく悪化させることは通常は考えられないし、機械式駐車場が使えなくても平面駐車場は使えることからの特別の影響には該当しないと考えられます。したがって、本件では総会の特別決議が得られれば機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることはできます。
それでは、災害時の備蓄品を管理費で購入して、管理組合が保管することはできるのでしょうか。管理組合の主たる業務が共用部分の維持管理にあることは当然です。しかし、管理組合の業務はそれだけにとどまりません。避難訓練を行うことや消火器を購入することが管理組合の業務に含めれることには異論がないと思います。
防災に強いマンションを作ることは広い意味で共用部分の維持管理に資することなので、災害時の備蓄品を管理組合で購入して、保管することは許されます。手続としては備蓄品の購入代金を予算案の中に入れて、予算案を総会の決議(普通決議)で承認してもらうことになるでしょう。
専有部分を賃貸することが許される以上は賃借人の存在は当然の前提であり、賃借人は管理費の支払い義務を負う者ではありませんが、規約や細則を遵守する義務を負っており、共用部分を維持管理する担い手であることは組合員となんら変わりません。居住している人を災害から救うことは広い意味での共用部分の維持管理に資するので、備蓄品の提供を賃借人に行うことは問題ありません。
回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」掲載)
集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
https://www.mansion.co.jp/mihonshi