Q
2回目の大規模修繕工事を前に劣化調査が行われ、コンクリートのひび割れや鉄筋曝裂(コンクリート内の鉄筋が錆びて膨張し表面のコンクリートが盛り上がったり剥落する現象)・中性化が報告されました。窓の四隅部分やバルコニー先端部・手摺壁頂部などのひび割れや外壁や天井の各所に鉄筋曝裂が発生し、コンクリートの中性化が外壁で平均8ミリで、共用廊下天井が13ミリでした。各所のひび割れは気付いていましたが、鉄筋曝裂が思いのほか多くあり驚いています。1回目の大規模修繕工事でもかなりのひび割れや鉄筋曝裂を補修したようですが、1回目の大規模修繕時より多く発生し、中性化も進行していました。
この様に、大規模修繕で直してもコンクリートのひび割れや鉄筋曝裂はなくならないのでしょうか?また、経年と共に増加していくものなのでしょうか?
A
鉄筋コンクリートの建物は、大規模修繕工事で補修しても、また経年と共にひび割れや鉄筋曝裂(爆裂ではなく曝裂の造語を使うことが多い)が発生し、なかなか防止はすることは出来ません。又、コンクリートの中性化(空気中の炭酸ガスによりコンクリートのアルカリ分が中和される現象・コンクリート強度には影響はありません)も経年と共に進行していきます。しかし、これらを完全に防止は出来ませんが、抑制することは出来ます。
コンクリートのひび割れについては、新築後数年間はコンクリートの乾燥と共に発生する収縮によりひび割れますが、その後は日射や外気温により温められ膨張したコンクリートが、気温が下がると収縮する現象の繰り返しや、地震の揺れなどにより発生します。外壁の外断熱工事をする事によりコンクリートの膨張収縮を軽減できますが、コスト高でなかなか実現できません。一般的に行われているひび割れ再発対策は、外壁の塗装材を弾性のある材料にし、細いひび割れが生じても弾力性のある塗料が追従し塗装表面にひび割れが表れないようにしています(コンクリートのひび割れを少なくしているのではなく、塗装表面にひび割れが伝わらないようにし、ひび割れからの雨水の浸入を防止しています)。
鉄筋曝裂は、鉄筋周囲のコンクリートが中性化する事により、コンクリートのアルカリ分による防錆力がなくなり、鉄筋が錆びて発生します。しかし、中性化の深度は基準の鉄筋の深さ(30~45ミリ)まで進んでいることは稀です。では何故発生するかというと、新築時に鉄筋が基準の位置に配筋されていない(コンクリート表面から鉄筋までの距離が浅い)ことが主因です。この再発対策としては、コンクリートの中性化の進行を抑制することです。抑制方法はコンクリートの表面を緻密で膜厚の厚い塗装や防水で覆い、炭酸ガスのコンクリートへの進入を抑制する事です。
これらの補修工事を定期的に行い、致命的なコンクリートの劣化を抑制することにより、建物を延命する事ができます。
strong>【回答者】
NPO日住協法律相談会 専門相談員
一級建築士・山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年8月号掲載)
集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
https://www.mansion.co.jp/mihonshi
2回目の大規模修繕工事を前に劣化調査が行われ、コンクリートのひび割れや鉄筋曝裂(コンクリート内の鉄筋が錆びて膨張し表面のコンクリートが盛り上がったり剥落する現象)・中性化が報告されました。窓の四隅部分やバルコニー先端部・手摺壁頂部などのひび割れや外壁や天井の各所に鉄筋曝裂が発生し、コンクリートの中性化が外壁で平均8ミリで、共用廊下天井が13ミリでした。各所のひび割れは気付いていましたが、鉄筋曝裂が思いのほか多くあり驚いています。1回目の大規模修繕工事でもかなりのひび割れや鉄筋曝裂を補修したようですが、1回目の大規模修繕時より多く発生し、中性化も進行していました。
この様に、大規模修繕で直してもコンクリートのひび割れや鉄筋曝裂はなくならないのでしょうか?また、経年と共に増加していくものなのでしょうか?
A
鉄筋コンクリートの建物は、大規模修繕工事で補修しても、また経年と共にひび割れや鉄筋曝裂(爆裂ではなく曝裂の造語を使うことが多い)が発生し、なかなか防止はすることは出来ません。又、コンクリートの中性化(空気中の炭酸ガスによりコンクリートのアルカリ分が中和される現象・コンクリート強度には影響はありません)も経年と共に進行していきます。しかし、これらを完全に防止は出来ませんが、抑制することは出来ます。
コンクリートのひび割れについては、新築後数年間はコンクリートの乾燥と共に発生する収縮によりひび割れますが、その後は日射や外気温により温められ膨張したコンクリートが、気温が下がると収縮する現象の繰り返しや、地震の揺れなどにより発生します。外壁の外断熱工事をする事によりコンクリートの膨張収縮を軽減できますが、コスト高でなかなか実現できません。一般的に行われているひび割れ再発対策は、外壁の塗装材を弾性のある材料にし、細いひび割れが生じても弾力性のある塗料が追従し塗装表面にひび割れが表れないようにしています(コンクリートのひび割れを少なくしているのではなく、塗装表面にひび割れが伝わらないようにし、ひび割れからの雨水の浸入を防止しています)。
鉄筋曝裂は、鉄筋周囲のコンクリートが中性化する事により、コンクリートのアルカリ分による防錆力がなくなり、鉄筋が錆びて発生します。しかし、中性化の深度は基準の鉄筋の深さ(30~45ミリ)まで進んでいることは稀です。では何故発生するかというと、新築時に鉄筋が基準の位置に配筋されていない(コンクリート表面から鉄筋までの距離が浅い)ことが主因です。この再発対策としては、コンクリートの中性化の進行を抑制することです。抑制方法はコンクリートの表面を緻密で膜厚の厚い塗装や防水で覆い、炭酸ガスのコンクリートへの進入を抑制する事です。
これらの補修工事を定期的に行い、致命的なコンクリートの劣化を抑制することにより、建物を延命する事ができます。
strong>【回答者】
NPO日住協法律相談会 専門相談員
一級建築士・山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年8月号掲載)
集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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