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コンザリクの三部作を読む

2015-09-22 07:38:38 | 日記
 コンザリクの三部作「第6軍の心臓」「スタリングラードの医師」「極限に生きる」を読みました。出版社はフジ出版社ですが絶版なので古本でしか入手できませんが、もし目に留まったらぜひお読みいただきたい本だと思います。

 コンザリクは色々な著作があるようですが、この三作は背景が独ソ戦で主人公というか中心人物が医師であること、その医師を取り巻く兵士や将校、しかもドイツ軍の兵士だけでなくソ連軍の兵士もからめながら話が進みます。

 独ソ戦について我が国で紹介されている本は、大所高所から作戦レベルについて語られた本ばかりで、ドイツ軍やソ連軍の一兵士の目線で描かれた本はほとんどありませんので、この三部作はそういう意味でノンフィクションではありませんが、末端の兵士の日常とくに極限の日常が描かれています。

 独ソ戦は、ドイツのヒトラーのナチズムとソ連のスターリンの共産主義との間の情け容赦ないイデオロギー戦争でしたので、一口には言えないような残虐な戦争であったようです。そのような背景の中、ドイツ人医師を中心人物にすることで、ナチズムに偏ることがなく客観的、ヒューマニズムともいえるような立場で物語がすすみますので、読後の受ける印象も陰鬱な感じを引きずることがないのが救いです。また、中心人物を取り巻く兵士たちが生き生きと描かれていているのですが、作者はその登場人物たちを情け容赦なく死亡させてしまったりするのでした。

 「第6軍の心臓」はスターリングラード戦まっただ中の野戦病院の医師を中心にした物語なのですが、スターリングラード戦は家一軒をめぐって殺し合う戦闘でしたが、ひょんなことでドイツ兵とソ連兵がばったりいっしょになってしまうなんてことがあります。そこでは兵士同士、煙草を吸いあって一時休戦のような場面も描かれボッとした感じを受けます。ただ、最後はドイツ軍が降伏するので、中心人物の医師も含めてドイツに戻ることができたかは不明なのです。

 「スタリングラードの医師」は戦争終了後スターリングラード近郊の捕虜収容所の医師が、最初は手術する道具もないなかで、収容所長のソ連軍将校やソ連人医師にすこしずつ信頼をされるようになり、収容所の病院をすこしづつ充実させて収容されている兵士たちの治療をおこないながら、同時にソ連人の重傷者の手術なども行なったりします。同僚のドイツ人医師がロシア人と愛し合うところなどもからめながら話は進み、中心人物の医師は第一陣で帰国できることとなったにもかかわらず、収容所の最後の一人が帰国するまで収容所にとどまることを決意したのでした。

 「極限に生きる」は中心人物となるドイツ人医師が、病原菌に対するワクチンを研究して自分の体で人体実験をしたのですが、ちょうど軍の召集と重なり、召集逃れの自傷行為とされて懲罰大隊に配属されます。犯罪者やらナチ批判などのために懲罰大隊に集められた兵士がロシア戦線に出征し、パルチザンの女性との恋愛模様もからめて、最後ソ連軍の攻撃で多くの兵士が死んで行く中、中心人物の医師は大けがをおいながらも生き延びるという話になっています。

 ということで、極限の状態の中でも理性を失わずに医師としてもくもくと役割を果たしていく態度に感銘を受けます。また、ドイツ軍兵士もソ連軍兵士も、そして日本軍兵士も末端の兵士は同じなのだなあと思うのでした。