この本を読み終えてから、少し合間を置いた。 それは、此処しばらく胸のうちに渦巻いていたモヤモヤした理不尽さや遣り切れなさが、 スコンと、其処に納まるような合点の良さに戸惑い、 それをそのまま伝えることへの危うさが、身体感覚としてあったように思う。 . . . 本文を読む
憲法9条…正直あんまり触れたくない話題だった。 改憲を声高に言い募る人たちの論調には、いつも胡散臭さがつきまとう。 だからと言って護憲という立ち位置にも偏狭さを覚える。 リアルポリティクスのど真ん中は、どちらに転んでも面倒な話題となってしまう。 . . . 本文を読む
旅の終わりの風景を、なんと表現したらいいのだろうか? あの白とびしたような色を失った風景は…この三日ばかり中村安希の歩いたユーラシア大陸からアフリカ大陸をめぐりポルトガルのロカ岬へ至る (それは沢木耕太郎の深夜特急の終着点でもあった)47カ国684日の長い旅の風景を、 息をつめて見つめ続けてきた。 . . . 本文を読む
入院一カ月を過ぎると色々みえてくるものもある。 同じ病棟でも長期入院は、高齢者が多く、それもおばあさんの姿が目につく。 先日、木曜日は毎週恒例の体重測定の日で、 館内アナウンスがナースステーション前に各自集まることを告げる。 . . . 本文を読む
すっかり春めいてきたみたいだ。 病院の窓越しに射す光も、心持ち柔らかくなった印象。 すくすく膨らむ野辺の若草のように、委縮して色を失っていた患部が 日増しに血色を取り戻し自己主張し始める。 「早く外へ連れてゆけ」と。 . . . 本文を読む
病室の窓から石鎚が見える。 大型スーパーの立体駐車場の建屋越しに山並みがポカリと浮かぶ。 今朝は、オレンジ色の空に棚引く雲を纏い山並みから朝日の昇る なかなか壮観な眺め。 そして窓の外には、一日すっきりした青空が広がる。 やっと退院の見通しがついた。 . . . 本文を読む
今日で、ちょうど入院して二週間。 当初の予定では退院して、以後は自宅から通院の段取りだった。 今日、縫合箇所の抜糸は行われたが、やっぱりというか退院は 後二週間ばかり先に延びそうだ。 . . . 本文を読む
政府が発送電分離への電力事業改革への骨子を発表したところだったので、非常にタイムリーな内容の読書体験となった。ドイツで出版されてベストセラーになった「ブラック・アウト」(停電)上下(角川文庫)は、EU電力自由化によるヨーロッパ中に張り巡らされた送電網を狙ったサイバーテロによる、電気、通信、上下水道等のインフラが完全に麻痺した過酷な状況を描いたハリウッド映画さながらのスリリングなサスペンス小説。 . . . 本文を読む
今日は雨。 入院してから一週間が経過した。 病院で過ごす時間は、あわあわと過ぎてゆく。 夢と現(うつつ)の境をたゆたうような、定かでない時間が流れている。 網膜の先に紗のかかったような半覚醒の状態で字面を追う。 そんな曖昧な認識が、そのまま文体に宿ったような不思議な世界と出会った . . . 本文を読む
入院生活三日目、時間は緩慢に流れる。 ただ安静にしていること以外、何もすることがない。 完全看護のシステムの下、病院スタッフが三度の食事と清潔で快適な生活を維持してくれる。 その上、病棟全体が音をたてない静かな環境を常に保持してくれる。 本を読む上で、これほど恵まれた環境は、またとない。 . . . 本文を読む
この本のことは何度か書こうと思っていた。
尖閣や竹島の領土問題が浮上してきたときは、ちょうどタイムリーな内容だと思った。
梨木香歩が、この本で主題として扱っているのは「境界」について。 . . . 本文を読む