皆様にはいかがお過ごしでしょうか?
時節柄いっそう健康第一のほど、まずもってお願い申し上げます。
手紙で失礼いたしますが、ご存知のように□□□屋(屋号)は津波に流され、今年は例年のお盆行事ができなくなりました。とり急ぎ、その事だけでも皆様にお伝えしたいと考えて、ここに折れくぎのようなお手紙を差し上げる次第です。よろしくお汲みとり下さい。
大津波 春の大惨事からはや五ヵ月近くになり、テレビや電話にかじりついていた当時の緊張の記憶がすでに薄れてきております。ニュースなどでは復興の兆しも伝えられておりますが、どうでしょうか、被災された方々にとってはそれほど変わっていないというのが正直な気持ちではないでしょうか。ある程度時間をかけながらゆっくりと進むことになると思います。気を利かして得るものがあっても、瓦礫の一片にすぎないと思います。有史以来の大津波ということでした。回復にも時間がかかると思います。かけるだけ時間をかけて、自分を取り戻していってほしいものだと願っております。
お 盆 今年は残念なお盆になります。これまでの毎年のご参拝やご焼香には、あらためまして深く感謝申し上げる次第です。お盆に皆様とお会いするのが大きな楽しみでもありましたが、それもかなわなくなりました。私もお飾りや松明かしを懐かしみ今年の夏はこちらですごす所存です。皆様におかれましても、それぞれのお盆の場所から蛸の浜の方角をお念じ下さい。◯◯の墓所は無事でありました。心公院は、波が蛸の浜の坂を越えたものの直接の被害はないようです。そのため◯◯家の位牌も無事で、お寺のいつもの場所に鎮座しております。
ちなみに、家庭仏壇用の位牌については、新しいものを購入、いま心公院の和尚さんに過去帳を写していただいております。秋になってからこちらの自宅の仏壇に移すことにいたしました。ご旅行のついでにはお立ち寄りください。
鍬ヶ崎 私どもの津波の知識はそれこそ先祖の方々からの口伝えで、小さい頃から、想像を大きくふくらませては、恐怖にちぢこまり、諭されては心に深くうなづいてきたように思います。習い性で、立ち位置からの逃げ場所をいつもおし測って育ってきたように思います。お盆と同じで津波の覚悟は鍬ヶ崎とともにありました。しかし、今回の津波の現実は想像力や覚悟をはるかに超えました。私自身は語るにふさわしくありませんが、居合わせた人々はいかばかりだった事でしょうか? 古色蒼然とした鍬ヶ崎の町並みはひとたまりもありませんでした。鍬ヶ崎が無くなったという言葉がぴったりです。今は、いちめんのやけのはら状態です。
いつの日になるか、復興を祈らずにはおられません。
平成二十三年八月
◯ ◯ △ △ 拝