岩手県・宮古土木センターを訪問して分かった事
「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」では11月21日、宮古市五月町の県の宮古事務所「岩手県・宮古土木センター」を訪問して鍬ヶ崎日立浜の地盤沈下修復工事や鍬ヶ崎防潮堤の「30mmアクリル製窓」についてなどを質問した。
宮古土木センターにて(2016.11.21)
またも回答は「静水圧」という思想
鍬ヶ崎防潮堤「30mmアクリル製の窓」について「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」及び市内の有志で、再三、岩手県についてこのアクリル窓の厚さは弱くて危険であるとして「窓つき防潮堤」そのものの中止を申し出ていた。文書による直近の申し出は9月、これまでの陳情書等による岩手県への問いかけの内容は以下のようなものである。この日は「窓」そのものの議論ではなく専ら強度に限った…
◆<質問> ・縦横それぞれ130センチ、50センチの窓に厚さ30mm(3センチ)のアクリル板は弱すぎる。強度にどのような根拠があるのか? 衝撃実験をして示してもらいたい。
・仙台のうみの森水族館の資料によると、アクリル水槽の高さ6.5メートルでアクリルの厚さ49センチとあります。防潮堤3センチ、水族館49センチ、この厚さをどのように理解したらいいのでしょう?
防潮堤窓(海側)アクリル未装着
<回答> 参考に次のような表を堤示した説明があった。
要するに「防潮堤の窓には津波襲来時のみ水圧がかかる(=短期加重)」「水槽には常に水圧がかかっている(=長期加重)」その差異だ、というもの。文脈からしてそもそもからおかしい事はだれでも分かる。まさに津波襲来時の圧力が問題なのだ。津波の衝撃力という事を忘れ、ただ深さだけに関係する貯水ダムなどの静止の水圧「静水圧」を、瞬間的に防潮堤にかかる津波圧力より上位におく思想である。力の大小ではなく設計思想としての優先的上位の事である。先きの震災の防潮堤崩壊の検証がまったく進んでいないということだ。
ここで言われている長期、短期とは劣化とか金属疲労とか使用目的とか、別の要素であって、それらはアクリルの耐圧強度の要件ではない。「許容応力」とは面の大きさだと思ったら「標準」とある…。何の事だろうか? 面の小さい方があなた方の「静水圧」に強い事は一応理解できるのだが… 。「たわみ」も防潮堤の数字はずさんすぎる(水槽は災禍が大きいから厳しいルール?)。「付け合わせ」とはメーカーの製造可能なアクリルの大きさが2メートル×2メートルまでという事らしい。水槽用は補正(接着)が必要だということ。
要するに、業界の「手引書」で30mmアクリルが大丈夫という事を強弁している。文脈がおかしいと言った防潮堤と水槽の並記や比較表の説明は「ただ設計条件を述べただけ」という事ではすまされない。岩手県県土整備部や地域振興局の思想を如実に物語っている。この表以外になにがあるか?と思う。
<結論> ・オープンな実証実験を要請
説明がこれ以上深まらず納得できないのでメーカー資料による説明だけでなく再度の実証実験をお願いした。宮古市民に対してオープンな実証実験の実施。また津波の運動の力(横圧力=衝撃力=加速度)は宮古湾の先きの津波のスピード時速50キロメートルを中心に実施する旨強調しておいた。瓦礫、漂流物を50キロメートル速度での衝突実験など巾広く進めてもらうということである。
流漂物、とりわけ漂流漁船、タンクなどの重量物についての議論があった。100トンクラスの大型漁船がアクリル窓を標的にする事はないという答弁であったが、そもそも防潮堤自体が破壊されるという認識がないようだ。