どんこの空(そら)に 。

きっと何かが足りない~それを探す日記~

最高到達点の先。

2015-08-28 | Sandstorm




2015年、4月。
旅路。
何度も、何度でも繰り返し、空を見上げる。
何度目かの旅。
ひとりで、ふたりで、そしてみんなで、何百もの旅をしてきた。
そして未だ、旅の途中で。
この約4ヶ月前の旅は、この自分自身の人生の中でも、最高に恵まれた旅だったように思う。
晴れ渡り、青く透き通る山の空気。
その向こうにそびえ立つ荘厳な雪山。
少しずつ茜色に変化してゆく美しい世界。
そして雲海に沈む夕陽。
真夜中には、少年時代に見たあの満天の星空をふたたび見た。
極寒、真っ暗な中、苦心してカメラにも収めた。
一転、翌日の朝のピーカンの雪景色は、心のファインダーに強烈な記憶を刻み込む。
以前、車イスの母と共に訪れた公園では、満開に咲き誇る花を見た。
母と訪れた数年前は、まだ花は蕾の時期だった。
また来ようと言っていた約束は、もはや7年近くの年月が経ってしまった。
残念ながら、母はもうこの世にはいない。
地上では、父とゴルフも楽しんだ。
75。
父とは、あと何回ゴルフをできるだろうか。
そして海。
海辺の旅館で美味しい地元の旬を食した。
最後に、念願の天空の楽園へ。
神様、ありがとう。
天空の楽園は、最高の天気だった。
最高の姿で、たった一度のチャンスを迎えてくれた。
地上では、藤田光里プロがツアー初優勝した日であった。




















パソコンが壊れ、スマホが使いこなせず、写真が落とせず、なんだかんだで4ヶ月が経ってしまった。
細かい小さな感情は、もはや忘れてしまった。
反面、最近分かってきたこともある。
それはあの旅が、これまでの旅の中でも最高の美しい記憶をこの心に刻んでくれた旅だったということ。
雲上の異世界では、これ以上ないと思わせるくらいに、運とタイミングにも恵まれた。
もっと高いところに行ったことはある。
モーグルにハマっていた頃には幾度となく何度も訪れた雪山だが、これほどに天空の世界の美しさを感じることができたのはある意味奇跡に近い旅だったように思える。
最近、地上では、今やとても窮屈で暗く陰湿なニュースに溢れ、そんなものに囲まれて、そんな人に囲まれて、そんな常識に縛られて、一体毎日何をやっているのだろうと思わされる毎日だ。
あの日に刻まれた心の最高到達点は、雲ひとつない真っ青な天空に、今でもその目に見えるだけいっぱいの光を湛えている。


























2015年4月。
黒部アルペンルートから日本海経由で王ヶ頭へ。
撮った写真は1000枚を越える。
当初、王ヶ頭が先で長野県側の扇沢から黒部アルペンルートを立山へ抜ける予定であったが、紆余曲折あって結局、富山県側の立山から最初に黒部アルペンルートを巡り、黒部湖で折り返して再び立山へ戻り、日本海沿いに車を走らせてぐるっと遠回りして王ヶ頭へ向かうという道行きになった。
仕事の都合、なかなか希望の日時で予約の取れないホテル、車の回送代などの予算、諸々を考慮してのことだ。
後々考えれば、その遠回りの日程により、行く先々の天候に恵まれる結果となったことは、本当に運が良かったと言える。





















車で名古屋を出発し、立山駅から室堂までその日のうちに上がる強行日程。
当初の予定から一日遅れの名古屋出発だったためだ。
ただ、前日は全国的に雨。
もし当初の予定通り前の日に最初に王ヶ頭へ向かっていたら、この旅はまた違ったものになっていただろう。
ただこの日も、黒部アルペンルート入口の立山駅付近では雨に降られた。
しかし、天気ばかりは時の運。
仕方ないと半ば諦めていた。





















室堂にて。
弥陀ヶ原を過ぎて雲を抜けたら、空は快晴。
まさに雲上。
そこは別世界。





















黒部アルペンルートは、今回で二回目になる。
前回は扇沢から入って立山へ抜け、車は回送してもらった。
あの時は初秋の季節だったが、ずっと天気は芳しくなく、残念ながら夕陽も、星空も、大パノラマも、もちろん雪景色も見えなかった。
それだけに、今回こそは・・・の気持ちは強く。。。
初日にこの雲海に巡り会えたときは、ことさら嬉しかった。





















日の入りを待つ人達。
色的には感じないが、標高2500米オーバー、まだ4月の室堂の寒さは半端ない。





















暮れていく室堂。
白銀の世界は、だんだん茜色に染まって。





















やがてここは、漆黒の闇となる。
その前の儚くも美しい一瞬の耽美な世界。





















雲海に沈む夕陽。





















静寂の中で。
たとえ人間がいなくても、この太陽も、雲も、山も、そして空も、この瞬間のそこにはあるはずだ。
美しい、と感じるのはただ人間の感情でしかない。
それは決して偉大とか貴重とかという類いのものではなく、ごく当たり前のことでしかないのかも知れない。





















それでも人は山にのぼる。(当ブログ2012年2月14日記事)





















日没。
マジックアワー。
やがて紺碧の世界に。





















夜景。
立山ホテルに戻り、夕食後に屋上に上がる。
同じ南西の方角を見ると、すでに雲は綺麗に消えていた。





















あの月が地平線に落ちるのを待てば、今夜は絶好の星空撮影のチャンスになるはずだ。
限られた旅の日程、月の位置、そして天候・・・。
何年も旅をしたとしても、そういうタイミングに巡りあえるチャンスは、そうは来るものではない。
あとはちゃんと撮影できるかだけ。
カメラの設定、準備するもの、テクニックなどだいたいの下調べは入念にしておいた。
ただ、なにせ初撮影。
ちょっとした現場の状況判断がわからない。
細かなその場の対応などできるはずもない。
経験不足。
最後の手段は、数打ちゃ当たる戦法。
それしかなかった。
下調べしておいただいたい近い設定数値で、あとは少しずつ設定を変えながら何枚か撮っていくのだ。
重要な設定値は、絞り、シャッタースピード、ISO感度。
この3つを撮りながら一枚ずつ変えていく。
ただ、一枚撮るのにシャッタースピード(約15秒~30秒)を含め約1分としても、30枚撮るのに30分では到底無理。
氷点下の気温、真っ暗の中でのカメラの設定変更は、相当シビアな状況だった。
それよりも困ったのは、真っ暗な中、最終的にピントが合っているか確認ができなかったこと。
こればかりはいくら一眼レフのデジタルカメラとはいえ、数値で調整できるものではない。
そこまでやっていては、夜明けが来ても設定条件を網羅することは無理だ。
ちゃんと綺麗に撮れているという確証も保証もなく、真夜中の0時過ぎから約1時間半の悪戦苦闘。
結局全部で約30枚撮って、ちゃんと撮れていた写真はわずか4~5枚だけだった。
それでもまず、作戦は成功というところ。





















立山ホテル屋上より、東の空を臨む。





















無数に散りばめられた夜空の星々。
とにかく、肉眼で観ることができただけでも十分満足。





















まだ一度も観たことがないという父に、この満天の星空を見せるのが旅の目的のひとつだった。
ただ・・・、父は美しい星空よりも寒さに耐えきれなかったようで・・・。
目が慣れたかどうかの早々に、ホテル内へ退散。
あの老眼と白内障で、どこまで見えたか。。。
少々残念。





















紙媒体に現像してみて綺麗な写真と、画像として綺麗に見える写真とは微妙に違うことがわかった。
この写真も、現像してみると全体に白っぽくなってしまう。
またひとつ学んだ。





















2日目の朝。





















雪の大谷。





















まだ開通してから一週間も経たない時期。
雪の壁は20メートル近くあり、迫力満点だった。





















昔話(当ブログ2009年1月23日記事)





















大観峰と青い空。





















黒部平にて。
前回の旅では、悪天候で全く見られなかった風景。





















黒部ダム。
当然食べたダムカレー?(笑)。





















黒部湖。
まだ一面に氷が残っていて、前回乗船したフェリーは、まだ稼働していないようだった。
ひとまず今回は、ここで黒部アルペンルートは折り返し。
弥陀ヶ原まで戻って、弥陀ヶ原ホテルで2泊目をする。





















弥陀ヶ原ホテルの部屋からの幻想的な景色。
まるで天上界に龍がいて、下界をじっと見下ろしているかのよう。





















富山平野の街並みがまるで絵画のように見えた。





















雲の下から夕陽が現れた珍しい瞬間。
やがてまた、下の雲に沈んでゆく。





















ファインダー越しに、しばしの間、時間を忘れて見入ってしまった。





















灼熱を感じさせる太陽。
まさしく光と熱と生命の源。





















落書きのラブレター(当ブログ2008年10月8日記事)


さよならのラヴレター(当ブログ2009年3月30日記事)


リフレイン(当ブログ2013年12月26日記事)


ふりだしにもどる(当ブログ2010年5月7日記事)


コイン落としゲーム(当ブログ2009年11月28日記事)





















やがて陽は落ちていった。
暮れてゆく空。
頭の中の記憶と官能、そして美しい想い出とともに。





















いつしか龍も消えて。





















休題(当ブログ2008年11月7日記事)





















3日目の出発前。
弥陀ヶ原ホテルの部屋から。





















弥陀ヶ原ホテル。





















バスにて下山後、立山駅にて。
行きの時は雨だったが、帰りは晴れ。





















砺波チューリップ公園へ。
この日は、砺波チューリップフェアの初日。





















砺波チューリップ公園は2回目になる。
前回は黒部アルペンルートとは関係ない旅程の時で、まだチューリップフェア開催前の3月だった。
車イスの母を連れ、まだ蕾ばかりのチューリップ畑を歩いた。
考えてもみれば、もう7年以上前である。
母はもうこの世にはいないが、満開に咲き誇るチューリップをいつか見たいと思っていた。





















Sad Emotion(当ブログ2009年12月15日記事)


にらめっこ(当ブログ2007年11月19日記事)


雨あがり(当ブログ2010年7月10日記事)





















プリンセスチューリップの二人。
やさしい笑顔を振りまいていたが、初日なだけにまだ緊張感もあるのかな。





















コモンセンス・ジレンマ(当ブログ2008年10月29日記事)


某月某日(当ブログ2013年11月5日記事)





















4日目はゴルフ!
前日は富山の高級旅館に泊まり、朝から太閤山GCへ。
憧れの滞在ゴルフ・・・とはいうものの、実際は父のキャディ係のようなものですわ。。。(笑)
お願いだから、まっすぐ打ってね。
父上さま!





















天気も気温も程好く、最高のゴルフ日和。
スコアは、キャディ兼世話係とすれば、まずまずか。(笑)





















桜吹雪(当ブログ2012年4月17日記事)





















海の旨いもんが食べたくて、この日の晩は少々遠回りして、日本海沿いの生地の老舗旅館へ。
庭園があって良い感じ。
ゴルフ疲れと、それ以外予定を入れなかった一日だったので、本当に心からゆっくりできた。





















王ヶ頭、山本小屋前。
天気、快晴。
5日目にして、この旅一番の目的地は、もう目の前。





















念願の王ヶ頭ホテル。





















ハイシーズンは何ヵ月も先の予約すら取りづらい超人気宿泊施設。
旅の初日に立ち寄る予定だったが、仕事の都合やビーナスラインの開通時期による送迎バスの都合、はたまた部屋の空き状況の関係で、ぐるっと遠回りの旅の最終日の道行きになってしまった。
ただ、それが結果的に大正解。
雲ひとつない360度の大絶景が拝めることとなった。
この王ヶ頭での一日は、これまでの旅の中でも最高到達点と呼べるほど印象深いものだった。





















王ヶ頭より、北アルプスを臨む。
写真では収めきれないほどの大パノラマ。
ほぼ360度、見渡す限りの空に、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、白根山から富士山まで見渡せる贅沢。
日本の中心に立っているような気分になれる場所。
標高なら黒部の室堂の方が高い。
雄大さならカナダのウィスラーやブラッコムだろう。
だが、私が今まで訪れた場所で、一番贅沢な気分にしてくれた場所というならば、きっとここだろうと思う。





















噂には聞いていたが、この王ヶ頭ホテルのホスピタリティの高さは、この場所を特別な場所にしてくれる大きな要因でもあるに違いない。
ここが、これまでの私自身の長い旅の最高到達点。
今のところは、だが。





















うまくいかないのは(当ブログ2011年6月7日記事)


煩悩の旅(当ブログ2011年5月24日記事)


光る満月(当ブログ2013年5月24日記事)





















王ヶ頭頂上より南西を臨む。





















龍を鎮める(当ブログ2014年1月8日記事)


美しき河のほとりにて(当ブログ2007年11月25日記事)





















6日目の朝。
早朝の王ヶ鼻ツアーには起きられず。(笑)
ただ、まだ出発までには時間があったので、一人で王ヶ鼻まで歩くことにした。
一人で歩いたことが、またこの旅を深くする。
目的地までの道。
心洗われる感覚。
今現在でも印象深く残る官能。
まるで王ヶ鼻まで、世界の果てへ向かっているように思えた。
日本古来の山岳信仰。
そこに立ち尽くしている石地蔵は、みな静かに今だ噴煙上がる御嶽山を仰ぎ見ていた。





















王ヶ鼻にて。





















そこにはすでに先客が。。。
少しだけ、ひとりでないという安心感。
そこから地上を見下ろす。
あらためて人は小さな存在だ。
そう思った。
地上では、いまやとても窮屈で暗く陰湿なニュースに溢れ、そんなものに囲まれて、そんな人に囲まれて、そんな常識に縛られて、一体日々何をやっているのだろうと思わせられる毎日だ。
皆、大切なものを守るために。
それが正しいかどうかなんて、誰にもわからない不安の中で。
王ヶ鼻。
ここはすべてを超越している。
そんな風に思えるほどの、360度の地平と雲ひとつない空。
そこは燦々と降り注ぐ光に溢れていた。





















月空(当ブログ2009年2月9日記事)


覚悟(当ブログ2011年5月3日記事)





















これでこの長い旅は、ひとまず終わりとなる。
思えば、はや46歳になってしまった。
特に、ここ数年、日々睡眠不足の顧みない毎日を続けていると、頭の中の記憶媒体がどんどん劣化してきているのに気づいた。
昨日食べたランチから、幼い頃の体験まで。
私は、自分が若い頃どういう人間だったかということを、どうやら随分忘れてしまっているようである。
約10年ほど前からこのブログを始めたが、改めて過去の記事を読んでみて“ああそうだった”とか“ああそうそう”と思い出すことがいかに多いことか。
特にここ最近それがひどい。
少なくとも、その記事を書いていたときは頭の中にあったということ。
それがいまや、自分自身の記事を読んで、自分が思い出しているのだから少々悲しい。
以前の上司や彼女の名前すら、思い出そうとするのだが出てこないことがある。
これはマズい、と自分で思った。
食いもんが悪いのか、生活が悪いのか。
とにかく何かを変えなければ、このまま自分は、どうしようもない日々ただ息をしているだけの時間を繰り返すまま人生を終わってしまうのではないか。
そんな不安に突然駆られる。



これまでも自分は、他の人達には当たり前に持ちえている何かが足りないと感じていた。
思考を形づくっているものや、感情の源泉となる何か・・・。
それでも今は、それ以下ではないか。
何も残らない日々をただ過ごしているだけなのだから。
ふいに、自分の日記のようなもの・・・このブログ、をこの機会に読み返してみた。
自分で言うのもなんだが、結構面白いことを書いているなぁとも思うものもあった。
旅の最高到達点と感じるこの4月の立山、黒部、王ヶ頭旅行ではあったが、この自分自身の心の最高到達点はいつだろうか。
こんな毎日。
もしかしたら、もうずっと前から下り続けているだけのような気もするし、そうでないような気もする。
たとえそうだとしても、まだこれから先に高い山に辿り着けるかも知れない。
いや、そうでありたい。
そう願う。
それには、今この瞬間もきっと何かが足りない。
そう感じる限り、良いか悪いか、この“日記のようなもの”も、細々と続いていくのだろうと直感している。





















立山~黒部~王ヶ頭 (2015年4月21日~4月26日)

























〈その他のスナップ〉



























賭ける、懸ける(当ブログ2009年3月20日記事)





















進化論(当ブログ2011年2月26日記事)









キャビアとキャピタリズム(当ブログ2015年8月18日記事)









暗示(当ブログ2011年2月8日記事)









空蝉(当ブログ2009年2月18日記事)







落書きのラブレター、その後(当ブログ2009年12月1日記事)























半人前のひとりごと(当ブログ2009年12月3日記事)











瞳の奥に(当ブログ2011年2月21日記事)





























最高到達点の先。





















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