父の買い物で気になっていることがある。
母が思うように動けなくなって以来、もっぱら我が家の日々の食事のための買い物は父の仕事となっていた。
もちろん、私が仕事が休みの日には、車で大型スーパーへ連れて行くことも多い。
だが基本的に、実家へ戻ってきてからの私は、食費を１ヶ月分まとめて家計に入れるという形をとり、自ら買い物をすることはなくなった。
母の食事は父がほとんど作っていたし、私も仕事で自宅にいないことが多いので自然とそういう決まりになっていた。
とにかく我が家の食費に関する家計は、これまでずっと父が取り仕切っていたのである。
・・・で、父の買い物。
父はカードを使わない。
いや、使っているのを見たことがない。
クレジットカードどころか、大型スーパー等のポイントカードすら出しているところを見たことがない。
聞くと、面倒くさい、気恥ずかしい、必要ない・・・などなど、だそうである。
いや、使えば便利だから・・・、ポイント貯めればトクだから・・・、と言っても、一向に聞いてくれる気配がない。
それまで一人でロクに買い物などしたことがなかった父ではあるし、７０歳を超えればそんなものかも知れない。
昔ながらのいわゆる現金主義で、見えないカネはどうも信用できないらしい。
そういえば家族旅行に行った時も、クレジットカードで払おうとした私を制して、「とりあえず、これで払っとけ。」と２０枚以上の万札を手渡された。
オイオイ、どこにそんなカネ持っていたんだ？？？
そんな大金をずっと旅行中に持っていたら、危ないったらありゃしない。
・・・・・なんてこともあった。。。
まあ昔ながらの人であるし、そこまでは許せるのであるが。。。
さらに・・・・・。
父は、買い物で「小銭」を絶対に出さないのである。
いやはや、それはいくらなんでも。。。
とにかくどんな買い物でも、お札しか出さないのだ。
ナンだのカンだのと言い訳はしているが、ただ単に細かい計算が嫌いなのである。
オマケに、他人がモタモタするのを嫌う人だから、自分がレジでモタモタすることは自身で許せないのである。
そうは言っても、昔の買い物クイズ番組ではあるまいし、毎回”ピタリ賞”の会計なんてあるはずがない。
最近は、レジ前に小銭の寄付箱なんてものが設置してあるトコもあるが、１円玉や５円玉ならともかく、毎回１００円玉や５００円玉だって使わないのだから、そんなモノまで入れられたらたまったものじゃない。
まだ、「釣りはいらん！」なんて言い出さないだけマシなのであるが。。。
そうなるとどうなるかと言えば・・・・・。
まあ、こういうことになるのは必然ですわなぁ。。。
かれこれ母が買い物に出られなくなって、４年くらいか？
それから今までの間、ずっと小銭は溜まる（貯まる？）一方。。。
１円玉、５円玉、１０円玉、５０円玉、１００円玉、５００円玉・・・・・。
ちゃんと仕分けしてあるところが、またある意味凄い！？
何とかして！ってくらい、ある。
始めは一ヶ所にあったのだが、置ききれなくなってテーブルの上やら物置の中やら、もうどこにいくつあるのかすら不明。
家の中のいたるところに、ビンや缶や箱や・・・、一体いくつあるのだろう？
築四十年以上のボロ家。
ロクに防犯がしっかりした家でもないし、これでは泥棒に持っていってくれ、と言っているようなもの？
まあ、たいした額ではないのだろうが・・・。
父曰く、「少しくらい持っていってもらった方がスッキリしていいや」だと！
そんな笑える話かい？これは。
見えないところも覗いてみると・・・。
宝探しみたいだな、この家は。
まあ私が夜中に小腹が空いた時、ちょいと拝借してコンビニなんて行ったりできるという利点もあるが。
もっぱら有意義に使わせてもらっている私。。。
何かいつもお金に囲まれて、お金持ちになったような気分かも？
いえいえ、実際はとことん貧乏なのだ。
気分だけで。。。
小金持ち。
でも、これは結構あると思うゾ。
５００円玉だし、茶筒にいっぱい。
１０万円以上はあるかも？
父を問い詰めたら、どうやら本当はそろそろ銀行へ持って行きたいのらしいが、どうにも多すぎて持って行くのも恥ずかしいのだとか。
１円玉、５円玉は寄付してもいいらしいが、やはりそれも多すぎて持っていくのが恥ずかしいようだ。
やれやれというか、オイオイというか。。。トホホ。
四十九日が終わって落ち着いたら、これで旅行でも行こうかなどと言っていた。
旅行というより、自分が行きたい所に、私に連れて行けということらしい。
ハイハイ連れて行きますよ、世界中のどこまでも。
他人のお金で行けるなら。。。
ワーイ！！
でもまさか、この小銭の山を担いで持っていくのだけは勘弁してもらいたいものだ。
