連日の猛暑日。
夕方6時。
歯医者へ向かう途中。
ひとっこひとり見かけない。
十字路に出ても、はるか先まで動かない風景。
ずっと見慣れた住宅街も、それはまるで無人の惑星。
死に絶えた町。
いつか観た映画だったか。
ただセミだけがけたたましく鳴いていて、他には何も聞こえない。
何分か歩いたが、見かけたのは猫、ネコ、ねこ・・・。
動いているものを見たのは、それだけだった。
公園の脇では、何匹かたむろしていた。
ここは猫の惑星か。
そんな風情だった。
歯医者では、エアコンの効いた待合室に何人かいた。
少し安心。
若先生とは、最近の暑さの話になった。
昔はこんなに暑くなかっただろうという話。
連日の36度、37度は異常だとか。
アスファルトの町。
数限りないエアコンの温風。
それとも温暖化の影響か。
温暖化が進めば、人間は屋外に出られなくなる。
いや、もうすでにこの町は、誰も外には出てきやしない。
人間は弱くなった?
いや、それは日本人だけだろうか。
毎日毎日、熱中症で亡くなる人のニュース。
そういう自分も学生時代まで、エアコンなしの部屋で生きていた。
たぶん今では、3日も耐えられないだろう。
思えば知恵があった。
そして工夫があった。
帰り道。
夕凪のあと。
窓を開けて涼をとることを忘れてしまった人たち。
寂れゆく銭湯。
なつかしい神社。
誰もいない縁側の家。
見慣れていたはずの町が、もはやそうではないことに気付く。
夕涼みをしているのは、やはり猫だけだった。
たぶんここはいずれ、猫の惑星になるのだろう。
熱中症で死んでいるのは、人間だけだろうか。
そうだとしたら、原因は暑さだけではないのかも知れない。
夏は熱中症と食中毒と、どちらが危険か。
人間と猫と、どちらが賢いか。
わかんにぁ~。