行楽シーズンに入った週末とあって、宮崎からの帰りフェリーは混雑していました。コンビニのビニール袋に入れて持ち込んだ弁当を食べようと窓際沿いのテーブル席を探しましたがいっぱい。仕方なく40センチほどの高さで少し出っ張った窓枠に腰を下ろして弁当を広げたら、運よく3人掛けのテーブルがあきました。
晩酌は出張中に買った4合瓶の日本酒です。食べ始めると私と同じようにお弁当の入ったポリ袋を持ったおじいさんが通りかかりました。席を探しています。
私
「どうぞ」
おじいさん
「どうも」
テーブルはとってもちっちゃい半円形で、窓側が40センチあるかないかの直径のところになっています。椅子は窓に平行にこちらに一つ、向こうに一つ、そして半円のちょうど天辺に窓を向いて一つ計3席でテーブルを取り巻いています。
おじいさんは私と対面するように向こう側の椅子に腰掛けると直ぐに袋から缶ビールとお弁当を取り出しました。
こんな時、会話を切り出すのに気を遣います。相席はしていますが、しゃべりたくない人だっています。半面ずっと無言で間近に対面して食事を取るのも堪えかねます。またそのタイミングも難しい。席に着いたや否や話し出すのも気が引けます。かといってあんまり長い時間黙っていて、急にしゃべりだすのも変です。
おじいさんがプシュッとビールを開けてひと口ふた口、口に運んだ頃合いに声を掛けました。
「週末で混んでいるみたいですね」
「そうだね」
「よく来られるんですか」
「いやー年一回」
「どこ行かれるんですか」
「北陸」
「仕事ですか」
「いやー遊び、遊び」
これで会話が終わりました。
こちらが質問して、おじいさんが答えるばかり、会話が進みません。あまり話しはしたくないのだろうと切り上げました。
そこへ定年退職したぐらいの一人の男性が通りかかりました。同じくビニール袋を提げています。
男性
「あいてます」
私
「ハイ」
男性
「すみません」
私
「いいえ」
男性
「同席させてもらいます」
男性は半円の天辺の所に座ると、ビニール袋から発泡酒とパンを取り出し食べ始めました。
繰り返しますが、半円のテーブルの一方に私、その右隣り角度で言うとちょうど90度に男性、そのさらに右隣私から角度で言うと180度真正面に対面する格好におじいさんが腰掛けています。
「パンでもつかい」
あまり話したくないのかなと思っていたおじいさんが男性に声を掛けました。菓子パンでビールを飲んでいるのがどうも納得できなかったのでしょう。
男性
「いや、今日は山登りしてまして、買ったパンがあまったからもったいなくて」
それから、急に和やかな雰囲気になり、3人で会話が進みました。
おじいさんは71歳、福井に妻と二人暮らし。大阪発着で2万円と格安の指宿温泉ツアーの帰り。娘が二人いて一人はそばに、もう一人は大阪の枚方に住んでいる。孫が四人で枚方の孫は大学生。小遣い一万円をあげても喜ばないので、もうあげない。
事務系の会社員をしていて60歳で退職、その後65歳まで運送業の手伝いをしていた。胃を切っていて、心臓に爆弾も抱えていると言うが、日々は家庭菜園をしたりの悠々自適。
なぜ一人でと水を向けると、勝手がいい。妻も自分が帰ったら翌日から旅行に出かけると言う。
男性は昭和20年生まれの63歳。堺で妻と娘の3人暮らし。息子はもう独立したが、息子娘ともにもう30歳を超えているのに独身。これが悩みと言う。定年退職した後、嘱託で仕事をしている。若い頃にワンダーフォーゲルをしていて、定年後の趣味にまた始めた。霧島連山を登る船中二泊のツアーで代金は二等寝台で14000円、こちらも格安のツアー。
犬を飼っていて、夫婦の会話が無いから、犬がいると助かるそうだ。こちらもなぜ一人でと聞くと、妻は脚力が無いから仕方ないと。
私も仕事できててこのフェリーをよく利用していること。大学生の二人の子供がいること等々、色々しゃべった。
30分ほどで3人とも食事も終わりごろになった。
翌日の話になった。
おじいさん
「ナンバでポルノでも見てから枚方の娘のところに行くよ」
あっけに取られた私と男性ほぼ同時に
「ポルノですか」
おじいさん
「いやー、見るだけ見るだけ」
そらー、奥さんとは一緒に行けないですね。「見るだけ」とは言え恐れ入ります。
写真はその3人掛けのテーブル。大きな窓も分かるでしょうか。最初はそこに腰掛けて弁当を食べようとしました。
こんなちっちゃなテーブルで見知らぬ男3人が顔を突き合わせて晩御飯を一緒に頂きながらおもろい会話を楽しみました。飛行機や列車、バスでは味わえない船旅のよさです。写真の男性らは本文とはなんら関係ありません。
今朝、南九州出張から帰阪しました。出張中、更新もしないのに「えびす顔の造花問屋社長からの手紙」をご訪問いただきましたファンのみなさん、ありがとうございます。
これから先は宣伝です
造花のことなら、大阪で90年以上の歴史を誇る造花輸入問屋の(有)ニューホンコン造花へ。卸専門です。装飾造花、ギフト造花から菊、百合、樒(シキビ、しきみ)、榊(サカキ)など仏花、神様用造花まで扱っています。
(有)ニューホンコン造花のホームページです。
http://nhkf.jp
「元新聞記者が明かす 小さな会社 マスコミデビューの法則」(岡田 光司著、1500円 ISBN4-86000-104-4 C2034 ¥1429E)、梅田・旭屋書店で好評発売中
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私
「どうぞ」
おじいさん
「どうも」
テーブルはとってもちっちゃい半円形で、窓側が40センチあるかないかの直径のところになっています。椅子は窓に平行にこちらに一つ、向こうに一つ、そして半円のちょうど天辺に窓を向いて一つ計3席でテーブルを取り巻いています。
おじいさんは私と対面するように向こう側の椅子に腰掛けると直ぐに袋から缶ビールとお弁当を取り出しました。
こんな時、会話を切り出すのに気を遣います。相席はしていますが、しゃべりたくない人だっています。半面ずっと無言で間近に対面して食事を取るのも堪えかねます。またそのタイミングも難しい。席に着いたや否や話し出すのも気が引けます。かといってあんまり長い時間黙っていて、急にしゃべりだすのも変です。
おじいさんがプシュッとビールを開けてひと口ふた口、口に運んだ頃合いに声を掛けました。
「週末で混んでいるみたいですね」
「そうだね」
「よく来られるんですか」
「いやー年一回」
「どこ行かれるんですか」
「北陸」
「仕事ですか」
「いやー遊び、遊び」
これで会話が終わりました。
こちらが質問して、おじいさんが答えるばかり、会話が進みません。あまり話しはしたくないのだろうと切り上げました。
そこへ定年退職したぐらいの一人の男性が通りかかりました。同じくビニール袋を提げています。
男性
「あいてます」
私
「ハイ」
男性
「すみません」
私
「いいえ」
男性
「同席させてもらいます」
男性は半円の天辺の所に座ると、ビニール袋から発泡酒とパンを取り出し食べ始めました。
繰り返しますが、半円のテーブルの一方に私、その右隣り角度で言うとちょうど90度に男性、そのさらに右隣私から角度で言うと180度真正面に対面する格好におじいさんが腰掛けています。
「パンでもつかい」
あまり話したくないのかなと思っていたおじいさんが男性に声を掛けました。菓子パンでビールを飲んでいるのがどうも納得できなかったのでしょう。
男性
「いや、今日は山登りしてまして、買ったパンがあまったからもったいなくて」
それから、急に和やかな雰囲気になり、3人で会話が進みました。
おじいさんは71歳、福井に妻と二人暮らし。大阪発着で2万円と格安の指宿温泉ツアーの帰り。娘が二人いて一人はそばに、もう一人は大阪の枚方に住んでいる。孫が四人で枚方の孫は大学生。小遣い一万円をあげても喜ばないので、もうあげない。
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なぜ一人でと水を向けると、勝手がいい。妻も自分が帰ったら翌日から旅行に出かけると言う。
男性は昭和20年生まれの63歳。堺で妻と娘の3人暮らし。息子はもう独立したが、息子娘ともにもう30歳を超えているのに独身。これが悩みと言う。定年退職した後、嘱託で仕事をしている。若い頃にワンダーフォーゲルをしていて、定年後の趣味にまた始めた。霧島連山を登る船中二泊のツアーで代金は二等寝台で14000円、こちらも格安のツアー。
犬を飼っていて、夫婦の会話が無いから、犬がいると助かるそうだ。こちらもなぜ一人でと聞くと、妻は脚力が無いから仕方ないと。
私も仕事できててこのフェリーをよく利用していること。大学生の二人の子供がいること等々、色々しゃべった。
30分ほどで3人とも食事も終わりごろになった。
翌日の話になった。
おじいさん
「ナンバでポルノでも見てから枚方の娘のところに行くよ」
あっけに取られた私と男性ほぼ同時に
「ポルノですか」
おじいさん
「いやー、見るだけ見るだけ」
そらー、奥さんとは一緒に行けないですね。「見るだけ」とは言え恐れ入ります。
写真はその3人掛けのテーブル。大きな窓も分かるでしょうか。最初はそこに腰掛けて弁当を食べようとしました。
こんなちっちゃなテーブルで見知らぬ男3人が顔を突き合わせて晩御飯を一緒に頂きながらおもろい会話を楽しみました。飛行機や列車、バスでは味わえない船旅のよさです。写真の男性らは本文とはなんら関係ありません。
今朝、南九州出張から帰阪しました。出張中、更新もしないのに「えびす顔の造花問屋社長からの手紙」をご訪問いただきましたファンのみなさん、ありがとうございます。
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そうですか、船旅の楽しみ方、その極意...ですね。結構な長文でしたが、おもしろくてのめり込みました、流石に司元師匠です。
それにしても同席された方々のプロフィールを、よくぞまぁ詳細に記憶されている事...スペースさえあればきっとまだまだ書けるのでしょうね、きっと...
健忘症のワタシには逆立ちしたって無理な技でございます、しかしこの観察力と相手の話を聞き出す能力...
サイドビジネスで探偵など、おやりになりませんか?
最後のオチに持っていくにはどうしてもお二人のプロフィールが必要でしたし、一週間休んだ分をまとめて書いたようなものです。
「健忘症のワタシ」
いえいえ私も同じです。この会話の後、きっちりとメモしています。例えば、
S20年 サカイ 山のぼり 同席させてもらいます
71才 ヒラカタ むすめ ナンバポルノ
などです。
今後ともよろしくお願いします。