平均寿命の不思議
平均寿命とは今生きている人の死亡状況から割り出された各年齢の平均余命のゼロ歳児の平均余命を平均寿命という。現時点の死亡年齢の平均が現時点の平均寿命であり、過去に死亡した人は統計にはいらない。それでは、現在50歳の人の平均余命はと言うと「平均寿命-50歳」ではない。50歳まで生きた実績があるので、すでに50歳までに死亡した人の数は計算に含まれないため平均余命は平均寿命より長くなる。日本での最高齢を記録すると統計がないためその人の平均余命は毎年「ゼロ」となってしまう。何だか笑い話である。
それでは、現在生まれた人が平均寿命まで果たして生きるかと言うと、
そうではない。この統計は現在生きている人の統計で、将来も死亡状況が変化しないことが前提である。現在生まれた人が現在生きている人と同様の健康状態を維持しないと平均寿命以下で死亡し、平均寿命は徐々に低下してゆくことになる。平均寿命は天変地異の変化や戦争などによっても影響を受けるが、日本の平均寿命も第2次世界大戦の影響を受けているのではないかと思う。戦後60年である。当時戦争に関わった人が20歳以上とすれば、戦死した人達が生きていれば80歳以上であり、現在生きている80歳以上の人達は「戦争」という厄災をくぐり抜けてきた選ばれた人達でもある。年々延びている平均寿命を支えているのは医療の発達による若年死亡率の低下とこの80歳以上の人達の長寿ではないかと思う。
平均寿命の男女格差はなぜだろう。
一般的に男性が低いのはわかるが、日本の場合はあまりにも格差(約7歳)がありすぎると思う。推測するに、やはり第2次世界大戦の影響で、男性は健康な者が徴兵され戦死していったが、女性は徴兵されることなく、戦争中の劣悪な環境下でより健康な者が生き残ったと言えるのではないかと思う。よって、女性の死亡年齢が男性を大きく上回っていると思う(あくまで私的な推測である)。高齢になれば死亡率が上昇するのは当然であり、80歳以上は現時点での死亡状況に大きく影響を及ぼしている世代で、その死亡率が低いのだと思う。この考え方が正しいとすれば、毎年平均寿命が延びていることを戦後世代は手放しで喜べない。
確かに平均寿命は医療の発達によるところが大きい。
乳幼児死亡率を低くすれば平均寿命は格段に伸びるし、医療の発達により、がん、心臓疾患、脳血管疾患の3大死因による死亡率を低くすれば平均寿命は伸びる(日本の死亡率は最低ランクの7/1000)。しかし、これは男女の差はあれ、ほぼ平等に適用される条件だと思うし、現在生きている人が対象であれば、世代間の影響の違いも少ないはずである。戦後均質に社会環境が向上しているとすれば、世界にも誇れる日本の平均寿命の高さと、異例の男女格差はやはり第2次世界大戦の影響ではないかと推測できそうである。そう考えると、この平均寿命の統計は第2次世界大戦の影響がなくなる10年から20年後には大きく変化してきそうである。当分その変化を支えるのが戦後生まれのいわゆる「団塊の世代」ではないかと思う。
現在の青少年は身体的にひ弱な部分がある。
厚生労働省でも指摘している通りであり、身体能力、運動能力ともに低下している。このまま行くと将来の日本人の平均寿命はどんどん下がって行くのではないかと心配になる。平均寿命が延びた、また延びたと喜んでいる場合ではなさそうである。何度も言うが、平均寿命は現在生きている人達の死亡状況から統計を取ったものであり、自分達が現時点の平均寿命まで生きられる保証はない。特に若年世代は育った社会環境が大きく変化しているため平均寿命が変わることを覚悟する必要がある。そのためにも心身共に健康で疾病に対する予防を怠らず、身体を鍛え、生命を脅かす原因は早期に取り除き、医療技術を向上し、戦争や厄災のない平和な社会を築く努力を継続して行かなければならない(当然であるが戦争や厄災で大量の死者が発生すればその時の平均寿命は一時的に一挙に劇的に短縮される)。
ちなみに、老化の原因については,次のような説がある。
(1)一定の細胞分裂をすると老化して死ぬよう遺伝的にプログラムされている。
・・・・タイマー遺伝子の存在、よってクローンの寿命は新生細胞より短い
(2)分裂を重ねるごとにエラーが蓄積していき機能不全に至る。
・・・・不良細胞の増大、ガン細胞、特異体質、免疫機能の低下
(3)時間とともに生体分子間の架橋結合が増え,細胞の機能を損う。
・・・・細胞が固化し堅くなる、柔軟性がなくなる
(4)神経細胞の死滅によって生体のホメオスタシス機能が衰え,修復ができなくなるため。
・・・・神経性と体液性による浸透圧調節、体温調節の不全
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