日本ほど法律を見直さない国もあるまい。
法律を改正するということは大それたことで、立法府である政治の場でもそんなことを言う人は危険人物とでも言われかねないほどタブー視されていたし、今でもそんな感覚がある。戦後のショックから未だに立ち直っていないようだ。占領軍は日本の軍国主義を平和主義に改造するために、理想的な平和主義をお手本とした日本国憲法を制定させるとともに、軍国主義の復活を恐れて憲法改正が容易にできない法律を制定した。日本国憲法は日本の自由意志で作成されたものではないにもかかわらず、戦後70年以上経過した今も憲法改正は実現していない。
現代社会には敗戦直後の占領軍政策の影響が深く浸透している。
たとえば、戦後の財閥解体後の財閥復活を封じるため、金持ちを排除する目的で行われた極端な累進課税である。税率そのものは徐々に修正はされつつはあるが、根本的な機能は変わっていない。しかし、このおかげで日本は貧富の差のない「一億中流社会」となったおまけがつくが、反対に大会社のほとんどが株式会社となり、個人所有の会社は中小のそこそこの会社しかない。会社が大きくなると個人所有のままでは膨大な税金をとられる仕組みになっているからである。
昔の建設省(現国土・交通省)は戦後復興のために作られた省であるが、
戦後の復興はすでに終了しているのに既得権として存在し続け、公共事業の名目で土建屋を儲けさせることに一生懸命であった。現在でもこの体質は根強く残っている。税金の源泉徴収も戦争中の軍事費を調達するためにできた制度であるが、これもいまだに既得権として放置されたままである。厚生年金も戦費調達のために始まったが、国民から集めた金を使い込んで、結局は現在の年金は破綻寸前である。
財閥は解体されたが、
これに替わって株式会社ばかりとなり、雇われ社長以下が会社員でどこを見てもサラリーマンばかりだ。会社の儲けは自分のものになるわけでもなく、接待と称して必要経費で飲み喰い遊び狂う。そのかわり源泉徴収で有無も言わさず税金を半強制的に納めさせられている。その他の自営業や農業に従事する人は税制面で優遇され、高額所得者は名ばかりの法人を立てて「節税?」に励む。集められた税金は土建屋さんに流れる。こんなところであろうか。
現在の政府に実質的な決定権がないのも、
戦後の占領下政策の後遺症を引きずっているようだ。当時の政府には決定権がなかった。実質の決定権を持つのは「GHQ」であり、政府はGHQの顔色を伺いながら政策を立案した。当時から政府のトップが決断を下すという行為は許されなかったのである。現在も許されていないようだ。国民(票)の顔色を伺いながらみんなで集まってああでもない、こうでもないと裏でコソコソと話し合っている様子はまるで占領下の政府みたいである。
「デモクラシー」は占領軍から与えられたものであり、
形だけ踏襲されたもので、みんな同じことが平等だと誤解されている(「みんな同じ」の究極はファシズムである)。運動会のかけっこで順位をつけるのは不公平だとか、みんなと違うことをするのが許されないとか、何でも平等でないと文句を言い、何でも多数決で決めるのが正しいという間違った考えがまかり通っている。
民主主義(デモクラシー)とは、
個人の能力を認めてこれを自由に発揮できる場と機会が何人にも平等に与えられ、少数意見であっても堂々と主張できる場と機会が平等に与えられることであろう。能力のある人がその能力を十分に発揮できず、みんなと変わったことをすると排除されるような個性が発揮しずらい社会環境にある。少数意見は封殺され、十分に議論されないままで多数決の暴力で押し切ろうとする。これはデモクラシーではない。
軍国主義の復活を廃絶するための占領軍政策も功を奏しており、
正常な愛国心や祖国愛、郷土愛、伝統、歴史、文化、権威などを重んじることにためらいがあり、いざというときの危機管理機能は失われたままである。独立国として正常な判断力・決定力を保持するためには、国としての誇りを取り戻し、少なくとも諸外国と対等の立場に立つ努力をすべきである。
ことほど左様に、
今の日本は戦後70年以上を経過したにもかかわらず、本質的なことは変わらず、戦後のショックがいびつな形で歪みとして残っている。日本の常識は世界の非常識と言われるほどにその歪みはますます拡大し独りよがりの幼稚な考えは通用しなくなっている。この現状をよく認識し早急に改革に着手すべきである。改革は一朝一夕にできるものではないし、特効薬も画期的な方法もない。悪いものを悪いと認識し、原理原則に基づいた具体的な改善策を打ち出し、少しずつでも継続的に自らを改善し、自浄作用をもつような組織を目指して地道に努力するしかない。そのためには、法律の改正、組織の改正、検査機能の充実、情報の公開が不可欠であろう。
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