切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

渡辺保氏の劇評

2004-10-19 03:13:54 | かぶき讃(トピックス)
渡辺保氏のHPの劇評が更新されていた。

なんだかんだでこの人の劇評を読んでいる若い歌舞伎ファンは多い。(斯く言う私もその一人。)

正直なところ、芝居の好みはわたしと違うし、友人も「わたしの贔屓役者(大抵若手俳優!)がケチョンケチョンに書かれた!」などと訴えたりするが、結局のところ皆読んでいる。

なぜかと考えてみると、要するに歌舞伎に関する情報の大半が、素人入門向けか、無闇にややこしいことをいう学術書かの両極端で、中級歌舞伎ファン向けのものが不足しているからだと思う。

思えば不思議なことに、歌舞伎のヘビーユーザーに対するフォローは案外等閑にされていてる感じがあって、演目にしても素人向け企画や芸の継承が目的と思われる(観客にはもうひとつ面白くない)演目が出たりと、「見物が本当に観たいのはこれなんだろうか?」という疑問を持たざるをえないことも多い。(ねえ、松竹さん!)そんなわけで、歌舞伎ファンの情報源は歌舞伎座内での口コミか、奥村書店(歌舞伎座の近所の演劇書専門書店)のような溜り場に限定されてしまっているのが現状だ。

そんななか、渡辺氏が異端なのは、氏が歌舞伎役者との交流などを表に出さないこと。半ば歌舞伎界の住人面した連中の発言は、結局のところ「知り合いが舞台に立っている」というレベルのたかだか感慨めいたもの過ぎず、安からぬ金をつぎ込んでひたすら歌舞伎座通いをしている観客たちからは程遠いものだ。(もっとも、こんなことは映画、音楽、新聞ジャーナリズムに至るまで見られる、日本の自立出来ない批評空間全般の現象なんだろうけど。)

役者におもねらない辛口ぶりと、たんなる印象批評でなく型を基本とした批評で、個人的にも非常に勉強になる。

なんだか褒め過ぎてしまったが、あえて注文があるとすれば、東京以外の芝居(例えば12月の南座の顔見世やこんぴら歌舞伎)についても劇評を書いてほしいところなのだが…。

奥村書店HP
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