切られお富!

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『ローマの休日』と映画の著作権問題。

2006-06-11 02:16:22 | アメリカの夜(映画日記)
報じられているように、映画の著作権の保護期間を巡って対立が起きているわけだけど、そもそも、著作権法が改正されて、映画の著作権の保護期間だけが50年から70年になったのは、はっきりいえば、業界の圧力(政治力?)。旧作版権で商売をしている映画界にとってこれは死活問題だったからで、以前このブログで、「旧作版権に頼っている映画会社は情けない」というコメントを頂きましたが、それは著作権ビジネスの実情とはかけ離れたご意見なわけですよ。


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格安DVDの販売差し止めを申請 米映画会社 (朝日新聞) - goo ニュース

「格安DVDの販売差し止めを申請 米映画会社」
2006年 5月26日 (金) 00:20

>映画「ローマの休日」と「第十七捕虜収容所」の廉価版DVDの販売会社に対し、米国の映画会社パラマウント・ピクチャーズ・コーポレーションが「作品の著作権は自社にある」として、製造・販売の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請した。映画の著作権の保護期間は04年1月1日施行の改正著作権法によって、50年から70年に延長された。この2作品をはじめ、名作が多い53年作品の保護期間が03年末で切れたかどうかの解釈が司法の場で争われる。

>パラマウントホームエンタテインメントジャパン(東京都港区)によると、同社の「ローマの休日」のDVDは4179円(税込み)だが、日本では500~2000円(同)の廉価版が7社前後から発売されている。このうち、大型書店などで大規模に販売していた1社に対する仮処分を、今月12日に申請した。

>パ社の説明では、「わが社の著作権が侵害されている」との警告に対し、この1社は「解釈の違いだ」と主張したという。

>文化庁著作権課は、04年1月1日に施行された改正著作権法によって、03年末まで保護期間があった映画は、保護期間がさらに20年間延長されたとの解釈をとる。「03年12月31日午後12時と改正法が施行された04年1月1日午前0時が接着しているため、改正法が適用される」という説明だ。

>しかし、「53年に公開された作品は、03年末で保護期間がいったん終了して、パブリックドメイン(共有財産)になった」と判断、廉価版などの販売をする事業者もいる。53年公開の映画に人気作品が多いという事情も背景にある。

>北海道大の田村善之教授(知的財産法)は「文化庁の解釈が一般的だ。しかし、そもそも、利用と保護のバランスを考えたときに、70年間も映画を保護する必要があるのかという本質的な問題はある」と話している。

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そもそも、立法段階の杜撰さが生んでる部分もあるんだけど、業界の要請から始まっていることなので、条文はともかく(!)、「文化庁の解釈が一般的」という話になるのは当然なのでしょう。

で、こんなことを書くと反発を買うんだろうけど、法律というのは世の中の多数派や力の強い業界の要請に従うものなので、こればっかりは仕方がないんじゃないですか?

だいたい、著作権法が複雑なのは、例外がいっぱいあるからで、その例外の最たるものが映画だったりするわけですし…。

役人が書いたにしてはべらんめえ調の名著「著作権の考え方」(岩波新書)が喝破しているように、世界的に映画業界やテレビ業界有利に著作権法は整備されているし、アメリカにいたっては、前記の本いわく、「著作権の保護水準が最も低い」くせに、「アメリカがたくさん作っているものは外国でコピーできず、外国が作っているものはアメリカでコピーできるようにする」という「国際著作権戦略」をとっている!

この件、裁判の行方次第では、ハリウッド権益を守るために、アメリカの政治家が「国際問題」にしかねないわけだけど、さて、どうなるか?

まあ、文化庁の見解が裁判所の判断になるんじゃないかな?判例ってそんなもんだし…。

*参考 「シェーン」も廉価版提訴 米映画会社など (朝日新聞) - goo ニュース

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