切られお富!

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<私の役者寸評。> ④ 二代目市川亀治郎

2005-05-27 19:00:00 | かぶき讃(トピックス)
このシリーズもなかなか進まず、ようやく第四弾で初の若手登場。五月の歌舞伎座の劇評でチラッとふれたという事もあって、今回はこのひと、二代目市川亀治郎。

梨園の世界では「亀治郎天才伝説」なるものがあるらしいのだけど、確かに将来楽しみな若手役者。ただ、このひとの「天才」は、海老蔵の持つ「天性の花」とは違った、オタク的学習能力の高さにあるのではないかというのが私の見方。

猿之助の弟・段四郎の息子であるこの人は、現在体調が思わしくないといわれる猿之助の名跡を継ぐ一番手と思われるのだけど、さすが澤瀉屋の血を継ぐ人だけあって、大変な勉強家で読書家らしい。

第一回亀治郎の会に「合邦」と「鏡獅子」を取り上げたのも凄いのだけど、さらに凄いのは名作「合邦」を取り上げるに当って、特定の先輩役者から教わるという通常のスタイルをとらず、現在入手可能なあらゆる「合邦」の映像を手に入れ検討した上、過去の劇評などあらゆる文献を渉猟、さらに文楽の竹本綱太夫に教えを仰いだり、中村鴈治郎に武智歌舞伎時代の「合邦」の話を聞きに行くなど、オタク的な探求心をいかんなく発揮していること。(おまけに、「研究」の成果を京都造形大学で講義、その講義録は彼の公式HPに掲載されていて大変なボリュームです。「合邦」好きには堪らない内容ですよ!)

また、自主公演では歌舞伎マニアックスなキャステイングぶりをみせているし、彼のアプローチには、落語における立川談志の位置を思い起こさせる面がある。(談志は落語より彼の語る落語論の方が面白いなんて言う人もいるけど、確かにCDになっている「五大落語家論」とか「夢の寄席」の初めの解説なんかは素晴らしいもので、聞いたことのない方は必聴です!)

とにかく、現代の若者による新しい古典へのアプローチの可能性を感じる人だし、データ収集・解析のセンスにもどこか世代的な共感を覚える面があって、大いに期待している存在ですね、わたしにとっては。平成の三之助や中村屋兄弟、染五郎といったあたりに比べると、今現在、地味な存在ですけど、要注目です!

しかし、次の「亀治郎の会」は京都でなく、是非とも東京でやってもらいたいなあ。

PS:歌舞伎座の売店で亀治郎のパンフレットが売っていました。(確か、1,000円)
来月歌舞伎座に行ったら買おうかな…。

市川亀治郎 公式サイト

<私の役者寸評。>

<私の役者寸評。>③ 十八代目中村勘三郎
<私の役者寸評。>②   五代目中村富十郎 
<私の役者寸評。>① 十二代目市川團十郎
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