切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

本日、国立小劇場で文楽観てました!

2010-12-04 23:59:59 | 恋する文楽
毎年恒例十二月の若手中心公演。「本朝廿四孝 勘助住家」はなかなか渋かったなあ~。でも、客席は満員御礼!東京は文楽にやさしい!

今回の演目は二つで、最初が「由良湊千軒長者」。安寿と厨子王の話ですが、話というよりさわりくらいのものなので、可もなく不可もなくというところか。

で、今回はやっぱり「本朝廿四孝」の方でしょ。

山本勘助一家をめぐるくだりですが、「吉野川」や「十種香」と違い、あんまり上演されないし、たまに上演されてもストーリーがよくわからない!ということで、今まであまり印象に残っていなかったのですが、幾つか美点があるということにはじめて気づきました。

そのひとつは、今回上演された「桔梗ヶ原の段」「景勝下駄の段」「勘助住家の段」といずれも左右対称の演劇空間になっているという点。ストーリーの一貫性より、幾何学的なルール重視という印象すら受ける近松半二の劇作法がわたしには面白く感じられましたね(変な喩かもしれないけど、ピーター・グリーナウェイ監督の映画『数に溺れて』や『建築家の腹』みたいな感覚!)。

それと、筍堀りの場面から勘助住家に戻る美術の変化とその爽快感!雪景色から忠臣蔵九段目を思わせる緑色の襖の座敷への場面転換の色彩感覚がどうにも心地よい!

で、今回の演者をベースに感想をいうと、横蔵(のちの山本勘助)の人形を遣った吉田玉女、浄瑠璃の竹本文字久大夫が、久々にそのダイナミックな芸風を見せてくれてわたしは楽しめました。このふたりって、偉大すぎる師匠(吉田玉男、竹本住大夫)を持つ故の迷いみたいなものが感じられて、最近もうひとつ目立ったところがなかった印象ですが、今回は粗削りながら「未完の大器」という感じの大きな舞台を見せてくれたと思います。

他では、最近贔屓にしている豊竹呂勢大夫と珍しいコンビの三味線鶴澤燕三の「景勝下駄の段」が安定感があって、よかった!特に、若い呂勢大夫の老母の語りに説得力があって、感心しましたね。あと、吉田和生の勘助母の人形、桐竹勘十郎の慈悲蔵の人形の後半の凛とした感じとか…。

というわけで、わたしは存外楽しめたんだけど、やっぱり、このくだりは難解で、もう一回見直したいなあ~というのが正直なところ。NHKあたりで放送してくれるといろいろ発見がありそうなんだけど、やってくれないだろうなあ~。せめて、「芸能花舞台」とか…。

ま、とりあえず、感想はこんなところで!

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