切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

色っぽい鴎外(「身上話」「牛鍋」)

2015-07-01 20:22:27 | 超読書日記
森鴎外の短編というと、「山椒大夫」とか「高瀬舟」みたいな教科書に載るようなものとか、「阿部一族」みたいな無骨なものを連想してしまうんだけど、さりげない作品の中に変な色気があるって、案外知られてないのでは。ということで、つらつらと・・・。

大江健三郎&古井由吉の対談本でも取り上げられていた「身上話」。わたしは両巨匠の推薦で初めて読んでみましたが、女性が思わせぶりでよいんですよ。

女性を描かせたら、鴎外より漱石の方が良いと思っていたんですが、実生活では鴎外の方が艶福家でしょ。その片鱗をみた感じ。漱石だと、男をなじる女の闊達さが現代的で魅力的だと思う一方、鴎外の「雁」のお玉は「昔見た絵の中の女」って印象で、わたしはあんまり立体感を感じたことがありませんでした。でも、「身上話」は掌編だけど違います。「青年」で主人公・小泉純一(「郎」は残念ながら付かない!)の童貞を奪う坂井夫人の狡さをちょっと思い出した。

そして、クラシック評論家の許光俊氏が推薦している「牛鍋」。これも、思わせぶりで、技巧的でお洒落な一篇。なんにも描いてないのに、女の情念みたいなものが伝わってくる。

「鴎外=淡白な近代小説」って先入観は、そろそろ捨て去ってもいい頃なのかも。

PS:「牛鍋」は青空文庫で読めます。「身上話」もそうならないかな?

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