切られお富!

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文楽二月公演 第三部「曽根崎心中」

2010-02-22 19:30:00 | 恋する文楽
少し、簡単に感想。

「曽根崎心中」といえば、近松門左衛門が実際の事件を元に描いた心中物の人形浄瑠璃。

醤油屋の手代・徳兵衛と、遊女お初が露天神で心中するまでが描かれています。そして、この作品がきっかけで、心中ブームが到来するという、エポックメイキングな作品でもあり、ちょうど江戸幕府ができて百年目の1703年(元禄16年)に発表というのも記憶されるべき事項かもしれませんね。

まず、生玉社前の段でいうと、お初と徳兵衛が二人で座って話をするくだり。

お初の人形は、常に徳兵衛の方をじっと見て話を聞いているんですよ。

この「じっと」の部分のニュアンスが人間国宝・吉田蓑助の人形の特徴なんじゃないかしら?

で、お初だけ、手を引かれて舞台上手に連れて行かれてしまうくだり。ここも最後までお初は徳兵衛をじっと見ながら連れて行かれてしまう。

こういうところって、ボーイフレンドに夢中な若い子のニュアンスそのものだって気がします。(因みに、設定上は、お初十九歳です!)

そして、切場、天満屋の段。

今回、住大夫の過去のVTRや今の綱大夫・清治のCDを鑑賞して再復習したのですが、今回の嶋大夫の語りとの違いをいくつか感じました。

やはり、住大夫~綱大夫のラインだと、無骨で鋭いリアリズムを基調とした語り(特に、むかしの綱大夫は切っ先鋭いなあ~。今の枯れ具合と全然違う!そして、清治の三味線!!!)。

嶋大夫は、師匠筋は一緒なのにタイプの違う美声の歌う調子で、だいぶ印象が違い、わたしは面白かったですね。ただ、悪人を語るところは、少し俗に流れるきらいがあったかな~。住大夫だと、悪を切っ先の鋭さで描くのに、今回の嶋大夫は愚痴っぽいチャリ場みたいなニュアンスになっていたような・・・。

まだ、越路大夫のVTRを見直していないので、確定的なことは言えないけれど、嶋大夫みたいな芸風は貴重ですよ。住大夫は素晴らしいけど、みんな住大夫系になってしまってはね~。

そして、人形の方では、徳兵衛を足元に隠した蓑助のお初は、視線が宙を漂い、悲しげに目をつむる・・・。

普段、出さない人形の足が出てくる有名なくだりだけど、足もさることながら、ここも人形の目ですよ。

勘十郎の徳兵衛は、吉田玉男さんに比べると、やっぱり若い男の人形ですね。玉男さんだと、若いんだけどスっとした色男というか、近松の原作より大人の色男に見えた。

さて、天神森の段の心中のくだり。

ここは、玉男さんの本で、最後の演出のパターンをそのときどきに応じて変えているといっていましたよね。

今回は、二人とも死んで重なっておしまいでした。どんなパターンがあるのかは、玉男さんの本をご参照ください!

最後に、今回は、買ったきり読んでいなかった小林恭二の『心中への招待状』(曽根崎心中を詳細に分析した新書)を読んで舞台を見ました。

結構参考になることも多いのですが、九平次というキャラに対する批判は納得がいかないなあ~。わたしは、映画版『曽根崎心中』(梶芽衣子主演)の橋本功の九平次が忘れられないんでね~。

というわけで、簡単な感想でした!

<関連記事>
・坂田藤十郎、1300回目の曽根崎心中・お初を観た!

               ★    ★    ★

近松門左衛門=作
野澤松之輔=作曲
曾根崎心中(そねざきしんじゅう)

  生玉社前の段
  天満屋の段
  天神森の段

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