切られお富!

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七月コクーン歌舞伎 「桜姫」

2009-08-20 00:00:00 | かぶき讃(劇評)
久々のコクーン歌舞伎でした。いままでで一番の大胆演出だったんじゃないのかな?簡単に感想っ。

劇場に入ってまず驚いたのは、正方形の舞台に周囲を取り囲む客席。もちろん、花道もありませんし…。

つまり、野田秀樹の最近の芝居のような、舞台美術を極力減らしたシンプルなスタイル。小劇場の芝居って感じでしたね~。

さて、内容ですが、通常歌舞伎では豪華絢爛たる舞台になる序幕が、雛人形よろしく台に乗った形で登場。これが意外にさまになってて面白かった。人物関係がよくわかるんですよね。

それに、七之助の桜姫が随分キレイになった!

七之助の女形というと、えらの感じがどうしても男の角ばった感じが出てしまって、もうひとつ「女」じゃないなあ~という印象だったのですが、今回は普通にキレイなお姫様でしたよ。化粧の方法が変わったのかな?このたりはちょっと謎だったりするんですが…。

で、姫と釣鐘権助の濡れ場のくだりは、橋之助の太ももが妙に色っぽかったのと、上から布の筒がズボッと降りてくる美術が面白かったですね~。

そのあと、いろいろあって姫と清玄が漂流する河原の場面。今回の勘三郎の清玄は妙に毒気が抜けていて漂泊者という雰囲気がありました。なんだか、寺山修司っぽい河原って感じもしましたけどね~、演出的に。

それから、淪落した桜姫のくだりに入っていくんですが、わたしは、ここ、いまいちでした。今回の七之助もお姫様でいたときはよかったけど、遊女になった途端、なにやらリアルでなくなってしまった感じ。

ここは玉三郎だと、俗っぽさが出て面白いところなんだけど、さすがにこういう世話物っぽいところって、若い役者には難しいんでしょう。生生しい実在感に乏しくて、ある種人形みたいに感じてしまったなあ~。

そして、飛んでしまうけど最後!

通常だと、「自分の生んだ権助の子供を殺して、お家再興」というのがこの芝居の結末なんだけど、今回は子供を殺さないんですよね。(最後、子供を抱えて立ち尽くす桜姫…。)

で、たぶんオペラの音楽が流れておしまい。

なんだか、スペインあたりを舞台にしたオペラって感じの結末だったんだけど、わたしはこの解釈好きにはなれなかったですね~。

「桜姫東文章」という芝居の桜姫って、本能の赴くままというか、勘で生きている女のスピード感、心変わりが面白いとわたしは思っているのですが、今回の串田演出は、「運命を背負う女」というような趣で、なんだか重い!

もちろん、その方が「人間臭い」という解釈もできますが、わたしは軽薄さとか深い心理の欠落だって、充分「人間臭い」と思っているクチなので、ヴェルディのオペラのヒロインみたいな桜姫は、正直好みじゃない。

これって、ひょっとしたら、前の月の現代版「桜姫」(南米文学オマージュみたいな芝居だったんでしょ、観てないけど。)との関連で意味づけられている結末なのかな~とも勘繰りましたが、どうなんでしょうねぇ~。わからな~い!

というようなわけで、とりとめもなく書きましたが、美術的、演出的な実験性には感心したものの、トータルだとやっぱりわたしは通常のあっけらかんとした桜姫が好き。

歌舞伎座さよなら公演で、玉三郎&仁左衛門でやらないかなあ~なんてことを思いつつ劇場を出ました。

別に観に行ったことは後悔してないんだけどねぇ~。

ただ、桜姫だけには悩んで欲しくないだけ。

以上、感想でした。

なお、桜姫に関しては、以前書いた武田百合子の記事をどうぞ。

これがわたしのこの芝居に対する基本イメージです!

・わたしの「姫君」~武田百合子と歌舞伎。


PS:映画だと、鬼才・神代辰巳監督が「清玄・桜姫伝説」を換骨奪胎して撮った傑作『やくざ観音 情女仁義』なんていうのもあります!ご参考に!

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