いまや国民作家という感じの村上春樹の新刊。早速読んでみました。といっても、考えてみたら『アフターダーク』は発売日に買って読みかけたのだけど、積読状態のままになってるし、てのさんに読むといったきり、『象の消滅』は読んでいないしで、わたしも結構いい加減な読者だな…。
で、この本。短編集なんですが、大傑作とまでは思わないんだけど、悪くない。でも、もうひとつ食いたりない気も…。
最初の作品「偶然の旅人」の冒頭で作者・村上春樹自身がでてくるという仕掛けがそのあとの作品まで何か微妙な後味を残すんだけど、この辺計算ずくなんでしょうね。「偶然の恋人」ではトミー・フラナガンの話が出てくるのだけど、こういうジャズの好きな人(というか音楽の好きな人!)をくすぐるくすぐり方がやっぱり抜群にうまい。それと、プーランクのピアノ曲って聴いたことがないので聴いてみようかなって気になりましたね。あと蛇足ながら、「ハナレイ・ベイ」のなかに出てくる会話で、「エルヴィスの時代とは違う」という言葉に、「エルヴィス・コステロってかなりのオヤジですよね」ってバカっぽい若者が答えるところもちょっと笑える。(でも、コステロを知ってて、プレスリーを知らないってありえないとは思うけど。)
肝心の作品の方に話を戻すと、最後の書き下ろし作品「品川猿」っていうのがちょっと問題作だけど、あとの作品は割合嫌いではない。ただ、どの作品も死の匂いが漂ってくるものばかりだなあとは思う。(ここのところ、そういう傾向が強まっていませんか?)
「偶然の旅人」のノンフィクションノベルみたいなスタイルはちょっとカポーティの「手彫りの柩」を連想したけど、どうなんだろう?
あと、問題作だと思う「品川猿」。この小説って安部公房が例の読者を見下したような寓話調で書いていたら、すぐに本を投げ出すんだろうけど、村上春樹だとなんとなく腰の低い書き方をするので、強引な展開でも一応付き合おうかなという気がするから不思議。(でも、強引でしょ、この作品の展開!)
ところで、唐突に「腰の低い」という言い方をしたけど、この人の小説って、いつもいい聞き役の登場人物が出てきて、「やれやれ」っていう口癖をいうっていうイメージがありますよね。
まあ、これから読む人も多いだろうから、ネタバレ的なことは書かないで、ざっくりとした感想だけを言わせてもらうと、短編五作というボリュームと最後の「品川猿」の強引さが食い足りなさを残すんで、他の作品は悪くないなあと思う。特にわたしの好みは「偶然の旅人」と「ハナレイ・ベイ」という最初の二作かな。でも前の短編集『神の子どもたちはみな踊る』には及ばないか…。
PS;この本を読んだら、『象の消滅』を読もうという動機が改めて生まれました。でも積読本がいっぱいあるにはあるんだけど…。
で、この本。短編集なんですが、大傑作とまでは思わないんだけど、悪くない。でも、もうひとつ食いたりない気も…。
最初の作品「偶然の旅人」の冒頭で作者・村上春樹自身がでてくるという仕掛けがそのあとの作品まで何か微妙な後味を残すんだけど、この辺計算ずくなんでしょうね。「偶然の恋人」ではトミー・フラナガンの話が出てくるのだけど、こういうジャズの好きな人(というか音楽の好きな人!)をくすぐるくすぐり方がやっぱり抜群にうまい。それと、プーランクのピアノ曲って聴いたことがないので聴いてみようかなって気になりましたね。あと蛇足ながら、「ハナレイ・ベイ」のなかに出てくる会話で、「エルヴィスの時代とは違う」という言葉に、「エルヴィス・コステロってかなりのオヤジですよね」ってバカっぽい若者が答えるところもちょっと笑える。(でも、コステロを知ってて、プレスリーを知らないってありえないとは思うけど。)
肝心の作品の方に話を戻すと、最後の書き下ろし作品「品川猿」っていうのがちょっと問題作だけど、あとの作品は割合嫌いではない。ただ、どの作品も死の匂いが漂ってくるものばかりだなあとは思う。(ここのところ、そういう傾向が強まっていませんか?)
「偶然の旅人」のノンフィクションノベルみたいなスタイルはちょっとカポーティの「手彫りの柩」を連想したけど、どうなんだろう?
あと、問題作だと思う「品川猿」。この小説って安部公房が例の読者を見下したような寓話調で書いていたら、すぐに本を投げ出すんだろうけど、村上春樹だとなんとなく腰の低い書き方をするので、強引な展開でも一応付き合おうかなという気がするから不思議。(でも、強引でしょ、この作品の展開!)
ところで、唐突に「腰の低い」という言い方をしたけど、この人の小説って、いつもいい聞き役の登場人物が出てきて、「やれやれ」っていう口癖をいうっていうイメージがありますよね。
まあ、これから読む人も多いだろうから、ネタバレ的なことは書かないで、ざっくりとした感想だけを言わせてもらうと、短編五作というボリュームと最後の「品川猿」の強引さが食い足りなさを残すんで、他の作品は悪くないなあと思う。特にわたしの好みは「偶然の旅人」と「ハナレイ・ベイ」という最初の二作かな。でも前の短編集『神の子どもたちはみな踊る』には及ばないか…。
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「品川猿」って春樹ファンに評判いいんですか?ちょっと意外です。わたしは強引な展開だと思うんだけどなあ…。
それと、コステロのくだりってちょっと狙いすぎかなってきもするけど、確か「ダンス・ダンス・ダンス」にもスライ&ザ・ファミリーストーンのバッジを女の子にあげるとかってくだりがあって、オヤジっぽいこだわりだななんて思ったんですよね。(そういうのも嫌いじゃないけど。)
今後もよろしくです。TBの方も読ませていただきました!