切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

梅雨時の短編小説(「短夜」永井荷風)

2015-06-26 23:59:59 | 超読書日記
ぼちぼち7月になっちゃうんで、梅雨時の短編小説でお茶を濁そうかと。以前、荒俣宏が『短編小説の快楽』という本の、金井美恵子、中沢新一との鼎談のなかで、好きな短編のひとつに永井荷風の「短夜(みじかよ)」をあげていたのを思い出し、読んでみたんですが、梅雨時の話という設定だったんですよね。岩波文庫『すみだ川・新橋夜話』の「新橋夜話」のなかの一篇。「しんばしやわ」じゃなくて、「しんきょうやわ」ですよ。ということで、ちらほらと・・・。

荷風の花柳界を扱った小編集「新橋夜話」のなかの一篇「短夜」は幻想的な作品で男と女の対話から成るんですが、「すみだ川」、「腕くらべ」、「墨東綺譚」なんかと比べると、かなり技巧的でバタ臭い短編だと思いました。

荒俣氏いわく

「短夜」は現世の波にもまれるばかりで、真の男女の情交を味わえずにいる男たちへの、最大の慰めといえる。編者はこれを読み返すたびに全身がわななく。涙があふれてくる。

都会隠居にぜひとも必要なのは、肉体の交わりを忘れさせるほど心打つ物語を、果てしなく語ってくれる伴侶なのである。(以上、『大都会隠居術』より)

とのことですが、そこまで感動するかは、読者次第。

「大都会隠居」というより、「孤独死予備軍」独身者のわたしとしては、こういう短編を梅雨時の晩に読むのも一興だとは思います。晩酌付きで・・・。

すみだ川・新橋夜話 他一篇 (岩波文庫)
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大都会隠居術 (光文社文庫)
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