切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

初春大歌舞伎 夜の部 「助六」「連獅子」他(歌舞伎座)

2008-01-13 00:14:25 | かぶき讃(劇評)
今年はちゃんと舞台の感想を書こうと思ってるんですよね。(毎年そんなこと言ってるけど・・・。) 三ヶ月も舞台を観てないと、生の舞台の有り難味が再確認できましたからね~。まあ、余計な話はともかく、感想です。


①鶴寿千載

前にやったときは、梅玉・時蔵コンビで雄雌鶴の役だったけど、なんだかよくわからない演目だったなあなんて思った記憶が・・・。

・前のこの演目の感想

今回は前半が松竹梅の舞を歌昇、孝太郎、錦之助、後半の老夫婦(?)を富十郎、芝翫という構成だった。

歌昇はきりっとしていたし、孝太郎は久々に見たせいか心なしか綺麗になったように見え、錦之助はすっきりとしていてカッコよかった。

後半は、白髪頭の人間国宝二人が、動きの少ない踊りで、とりあえず品格はあった。

まあ、時間も短かったし久々に生で歌舞伎役者をみたので、感想というより、ああ、舞台はいいなあ~なんて思ったな。(だから、大甘ってわけでもないけれど!)

それと、歌舞伎座は音の響きがいい!(三味線や鼓もさることながら、笛なんかもね。)

②連獅子

幸四郎・染五郎の「連獅子」もぼちぼちトウが立ってきた!なんて思ってしまうのも、この演目が親と若い役者がやる演目というイメージになってしまっているからなんでしょうね。

染五郎は子供の初お目見得もやったことだし、いつまでも青年役者じゃないはずなんだけど・・・。

さて、この舞台の感想ですが、さすがにこの親子も慣れているだけあって、じつにスムーズな「連獅子」でしたね。安定感があって、危なげない。

でも、考えてみれば、親獅子が子獅子を千尋の谷に突き落とす話でしょ。そういう激しい厳しさみたいなものは、ちょっと希薄だった気もしなくはなかったなあ~。

間狂言の「宗論」はあんまり好きじゃないんだけど、松江、高麗蔵が溌剌としていて、芝居としてどうかというより、爽やかさで嫌味を感じなかった。でも、落語の「宗論」も含めて、この話ってくだらなすぎだって、いつも思うなあ・・・。

さて、最後の獅子に扮して頭を振り回すくだりは、染五郎が突然やけに元気で、ここだけ急に、若手っぽい連獅子になった。でも、幸四郎は疲れ気味に見えましたけどね。

③助六由縁江戸桜

どうも「助六」も有り難味が薄くなってきた。珍しい演目って感じがここのところしないですものね。

でも、画像に使った河東節の看板は市川團十郎家ならでは。まあまあ、おめでたい演目です。

今回の團十郎の「助六」の前回との違いは、前回は菊五郎劇団系の「助六」だったけど、今回は吉右衛門劇団系のメンバーだってことか。

前回の「助六」は菊五郎劇団系のエンターテイメント性が色濃く出てしまっていて、賛否両論だったけど、今回は地味ながらコクのある「助六」だった気がします。

わたしが特によいと思ったのは、梅玉の白酒売。品があって、江戸和事って感じが嫌味がなかった。そして、錦之助の福山のかつぎは爽やかな口跡でスッキリしてましたね。襲名公演の頃の錦之助は、ガチガチの緊張ぶりが客席にも伝わってくるようだったけど、南座顔見世での襲名公演が終わって、余裕が出てきたんじゃないですかね。今後に期待したいな。(嫌いじゃないタイプの役者なので。)

また、口上は怪しかったけど、渋い貫禄があったかんぺらの段四郎。何をやらせてもうまい、通人の東蔵。亡くなった松助の通人はコミカルだったけど、東蔵は江戸落語に出てきそうな古風さがありましたね。(おちゃらけは除いて。)

さて、この舞台の中心、助六、揚巻、意休について。

まず、助六ですが、病後の團十郎の舞台には二つ傾向があって、ひとつは開き直ったような、やりたい放題の歌うような調子の舞台(たとえば、「河内山」)、もうひとつは以前に比べてしっとり落ち着いた印象を与える舞台(「勧進帳」など)。

で、今度の「助六」はというと、後者の印象で、以前の唸るような台詞回しは多少引っ込んで、落ち着いた印象を持ちました。もっとも、わたしは團十郎独特の唸るような台詞回しもじつは結構好きで、非常にに珍しい舞台スタイルだと思っているんですよね。

たぶん、この團十郎のスタイルに近いのは落語の三代目春風亭柳好くらいしかいないんじゃないかって思っているんですけど、この説はいつかゆっくり書いてみたいなあ~。

海老蔵の成長が團十郎の特色を考えるのにとても役立っているんですが、海老蔵の助六は、触ると切れるような鋭さを持っているのに対して、團十郎の場合は太平楽な江戸和事の助六なんですよね。

その印象が、今回の落ち着いた舞台で、さらに際立ってきた気がします。

ただ、わたしの観た日は、風邪でもひいていたのか、ちょっと声がかすれ気味ではありましたけど・・・。

次が、福助の揚巻。

この役は女形の大役だし、大ベテランがやる印象があったので、まだ若い福助でどうかとも思ったけど、團十郎相手に大健闘。好感を持ちました。(普段言ってることと違う?)

大袈裟になるかと心配していたら、意外と押さえ気味に芝居を受けていたし、大ベテランがやるのと違って、溌剌とした若くて動きのいい揚巻!雀右衛門や藤十郎の揚巻の重さとも、玉三郎の冷たい貫禄とも違う新しい揚巻ではありましたね。

ただ、花道の出の笑いがちょっといやらしかったとのと、床几に座って意休に悪態をつく場面が意休をちょっと嫌いすぎなんじゃないかとも思いました。意休に対する悪態は、一応客ですから、押さえ気味にきついことを言うのが本当だと思うんですけどねえ~。

そして、最後に意休の左團次。もう、このひとには文句なしです。今現在、この役はこの人以外考えられない感じ。

でも、意外なところで、三津五郎、勘三郎、吉右衛門あたりにもこの役をやって欲しい気がするのはわたしだけかな?

あと、忘れていたけど、助六のお母さん・曽我満江の芝翫は、息子(福助)同様、押さえ気味で下品にならず、よい武家の奥方振りでした。一幕目の雰囲気が残っていたな。

そんなわけで、歌舞伎観劇、復活第一弾、満喫させてもらいました。今月はこの後も予定が続きます。忙しい!(仕事があるのに・・・。)
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