切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

<訃報> 作家 車谷長吉(2015/05/17)

2015-05-24 23:59:59 | 超読書日記
あんまり好きじゃなったんですが、西村賢太に比べたら、よっぽどたくらみがあって作家っぽかったな、と。死因がいまいちよくわからないんだけど、ご冥福をお祈りいたします。

西村賢太登場以前は私小説復権の旗頭はこの人でした。ただ、この人の純文学本道っぽいスタンスが似非隠者っぽくて、わたしは最初抵抗あったんですよね。

映画でも有名な『赤目四十夜瀧心中未遂』は、いかにも下降志向のインテリ臭がきつくて、わたしは好きになれなかったですし。

なので、対談集『反時代的毒虫』(ま、この芝居がかったタイトル自体で読まず嫌いしていたんだけど…。)を読んだとき、「『赤目~』は全部創作」との人を食った発言で、ちょっと見直した気がしたものです。

思えば、慶応独文出身で、広告代理店での勤務経験があり、妻は元「ミス東大」ですから、板前修業をやろうがどうしようがインテリに決まっているんで、むしろ、大学時代にカフカを原書で全部読んだという文学的背景の方が、この人を語る上では重要なんじゃないしょうか。だから、この人のフェイク感って、カフカ的大ぼらだと思えば、かなり納得いくんじゃないのかな、私小説として読むよりも。

で、西村賢太との違いでいえば、車谷長吉が広告代理店的(といってもバブル期のセゾングループっぽい広告ですが・・・。)だとすると、西村賢太はサブカルっぽい私小説かと(サブカルだから、高田文夫も褒める!)。

というわけで、最初に読むべきは『反時代的毒虫』だと思うんだけど、品切れ中みたいですね。でも、未読の方はこの江藤淳から始まる対談集を手始めに、初期の短編をどうぞ。ちなみに、わたしは『~毒虫』のなかの水上勉、中村うさぎとの対談が好きです。

しかし、奥さんは今後どうするんだろう・・・。

反時代的毒虫 (平凡社新書)
クリエーター情報なし
平凡社
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