医療の質とリーダーとしての役割について
病院のリーダー的立場にある人物が効果的なsafety cultureを構築できていないことで、手術ミスから治療の遅れに至るまで、多くの実際の有害事象の一因となっていることが明らかなってきている。不十分なSafety Cultureが有害事象の重大な要因である。
*Smetzer J, et al. Shaping systems for better behavioral choices: lessons learned from a fatal medication error. Joint Commission Journal on Quality and Patient Safety. 2010;36:152-163
リーダーシップの不十分さは、様々な形で有害事象の一因となる可能性がある、下記ほんの一例。
・患者安全に関するイベント報告のサポートが不十分
・安全性の脆弱性を報告したスタッフ、その他の人々へのフィードバックや十分な対応の欠如
・イベント報告をしたスタッフの心理的安全性を担保できていない
・報告された安全に関する問題の優先順位付けと対策実施を結局行わないこと
・スタッフの燃え尽き症候群や、過剰な負担に対処できていない etc
*引用文献:The essential role of leadership in developing a safety culture, A complimentary publication of The Joint Commission, Issue 57, March 1, 2017.
Safety Cultureの3要素(James Reasonsが言うには)
Just culture – people are encouraged, even rewarded, for providing essential safety-related information, but clear lines are drawn between human error and at-risk or reckless behaviors.公正な文化 - 安全に関連する重要な情報を提供することが奨励されるが、ヒューマンエラーとリスクのある行動やReckless(無謀な)行動の間には明確な線引きがあること。
Reporting culture – people report their errors and near-misses. ちゃんと自分のミスやヒヤリハットを報告できる文化
Learning culture – the willingness and the competence to draw the right conclusions from safety information systems, and the will to implement major reforms when their need is indicated. 正しい結論を導き出す意欲と能力、そして必要性が示されたときには大規模な改革を実施しようとする意欲と行動。
The Joint Commission からの提案*
リーダーとしての組織構築で重要な事、相互の信頼性が高く、責任感(当事者意識)が高く、少しでも危険な状況を把握し、システムをさらに改善し、常に評価し続ける姿勢。
特に大事な11個の戦略
1.有害事象、ヒヤリ・ハット、安全でない状態の報告とそこから学ぶ事ができる透明性高くで非懲罰的な雰囲気が絶対的に重要である。
2. リスクに基づく明確かつ公正で透明性のあるプロセスを確立、人為的なミスや、設計が不十分なシステムから発生するエラーを認識し、本来非難に値する安全でない行為や無謀な行為とは分けて考える。
3. 組織内の信頼を高めるために、経営者を始めとするすべてのリーダーは、適切な行動を自らも模範とし、常に威圧的な行動を根絶する努力をする。
4. Safety Cultureをサポートする方針を確立し、実施し、すべてのチームメンバーと目標を共有する。
5. 有害事象や緊急事態を報告したスタッフ、危険な状況を特定できたスタッフ、または安全性や質改善のための優れた提案をしたメンバーを特に認めて活かす。
6. AHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality)の「患者安全文化に関する病院調査(HSOPS)」、または SAQ(Safety Attitudes Questionnaire)などの別のツールを使用して、自施設のパフォーマンスに関するベンチマークを作成する(測定しなければば何も始まらない)
7. 組織全体の安全文化調査結果を分析して、品質と安全性の改善の機会を見つける。
8. 安全性評価や調査から得られた情報に応じて、安全文化の向上を目的とした部署単位でのの質・安全性改善活動を展開し、実施する。
9. 安全システムを強化するために、品質改善プロジェクトや組織プロセスにSafety cultureのトレーニングシステムを組み込んでしまう。
10. システム(投薬管理や電子カルテなど)の強みと脆弱性を積極的に評価し、さらなる改善のための優先順位をつける。
11. 18~24ヶ月ごとに組織的な評価を繰り返し、目標達成状況を確認し、改善を持続させる。
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