終えました。
順番替えも・・・www
昔馴染みがもうすこし・・で、終わる。
宿業の中・・・
宿業・・・5 白蛇抄第7話
宿業・・26 白蛇抄第7話
で、白峰大神がでてくるわけだけど、
この物語だけを読んだ人は
なんのこっちゃ?
とってつけた?
と、感じるかもしれない。
これは、
邪宗の双神・・1 白蛇抄第6話
「しかし、気になる事が一つ、残ってしもうた」
「ん?なんじゃな」
八代神も実を喰らうのをふと止めて尋ね返した。
「鼎を助けた折の事じゃ」
ひのえが我気道に落ちた白銅の妹を救い出した事を言うのである。
「ああ。餓鬼に落ちたを救うた事か?」
「ああ・・・」
「で、気になる事というは、やはりひのえかの?」
「うむ。あれはその事で魂に業を受けておろう?」
「ああ、、山童がの」
酷いほどの山童の陵辱をひのえが一身に替わり、引き受けたのである。
「・・・・うむ」
ひのえが鼎の業を浚えたとなれば、その業はひのえの中に滞っている。
「そうか。そうなると、来世に業が出るの」
「何とかならぬか?」
八代神は首を傾げた。
「無理だの。魂に刻まれてしまう業はわしでも退けられぬ」
「やはり・・・そうか」
「ま、ただ」
「なんだ?」
「陵辱の憂き目は変えられぬが、相手を変える事は出来るの」
「相手?」
「それを河童にしても鬼にしても、いずれにせよ、陵辱はまぬがれん」
「物の怪でのうても良いのだろう?」
「それが陵辱ならの・・・が、」
「何だ?」
「人ならば性が馴染む。陵辱の果てに子を宿すやもしれぬ」
「鼎の様に初潮の前でなら?」
「餓鬼に落ちたら誰が救う?」
「う・・・」
付かれた疑問に白峰も言葉を無くしていた。
「まあ、よう考えて見よう。
ひのえの来世が生まれくるにまだまだあるわ。
ひのえもまだ、生きておるに」
という件・・・
このあたりの解決。
で、
酷いほどの山童の陵辱をひのえが一身に替わり、引き受けたのである
は、
- ー白峰大神ー 白蛇抄第3話(25)の 中の挿話。
宿業・・26 白蛇抄第7話
白峰は佐奈の言葉に一向に取り合おうともせず話し続けた。
「子への悔いをも、見事にお前は草汰を思いこして、
この白峰の存念をはらしてくれおった」
「存念?俺の草汰への思いまでも、
貴様の存念払いと言うか?」
「だから・・・もうよい」
この部分は
邪宗の双神・・1 白蛇抄第6話
の、中で振り返っているが
- ー白峰大神ー 白蛇抄第3話(25)の 中の挿話。
子供が思わぬ解決をしてしまうという話は
沼の神 白蛇抄第11話にも入る。
もうすぐ、楠の怪を抑えるうら若き陰陽師を、
法力を目の当たりに知る事になる。
「はああ。さすがですなあ」
これから起きる事を起きると既に信じて込ませる澄明がふしぎである。
妙に信を与えるも陰陽師の法力の深さか徳の広さか。
いずれにせよ頭を唸らせる物がある。
「はじまりましたな」
赤子の通る嬌声が響く。
「ちょい、ちょい」
甲高い声は笑いをふくんでいる。
「よいとなあ・・よいとなあ」
次三朗の低い声に赤子は片言でよいとなをあわせてゆく。
「ちょい・・ちょい」
頭はそとへとびだすと、仲間をよんだ。
おうように皆、次三朗の所作をみつめていたが、頭の声にふりむいた。
「俺らがてつなわなくとも、動くとよ」
一同からほううと大きな声が上がった。
なかから、若い衆がひとり、己の推察に惚れ惚れとした声でこたえた。
「だろうとおもいましたよ」
「そうかい?」
若い衆を軽くいなす。
「だって、そうでしょう?
木挽きが散々苦労しても切れなかった楠なのに、
次三朗さんがきたら、きれたんだ。こんどだって、そうでしょう?」
「そうだな」
「初めから次三朗さんがひいてやりゃあよかったんだ」
「そうかな?」
頭の目が「若造よ」と笑っている。
「そうじゃあねえんですか?」
頭になんで、若造と見られるかが腑におちない。
「まあ。そんなこたあどうでもいい。俺らも折角来たんだから
野辺送りにたってやらねえか?」
「はあ・・」
茶を濁された後味の悪さが
これ以上頭に食い下がるを無理とおしえている。
つづまった若い衆の返事ではあるが、それは了承である。
「いくか」
楠を引こうとする親子の側に集まり弔い送りをする。
方丈を振り返った頭には濡れ縁を下りる澄明の足先が
やけに細く哀しげにみえた。
本当はこんな事なぞみとうないだろうに。
陰陽師の宿命なのだろうが。
あたら、法力が高いばかりに、
知らぬでもよい悲しみが足先まで染めてゆく。
と、いって、この自分とてなにもしてやれはしない。
「次三朗さん。わしらもかみさんをおくらせてくだせえよ」
せめて、いくばくか、悲しみを共有する時をすごすだけしかない。
「はい」
誰にも知られる事なくきゆるはずだった異種婚の夫婦の絆を
赦された最初で最後だった。
楠を妻と認め普通の良人の悲しみに寄添おうとしてくれる情のぬくみが
次三朗に涙をわかせた。
「ありがとうございます」
頭を下げた次三朗の目下の土にぽとりとしずくがおち、
乾いた土の色を濃くした。
「さあさ。もう、きめたんだろ?
名残り惜しかろうが、いつまでも、こうしちゃいられまい?」
「はい」
赤子を育て行く糧も稼がねば成らない。
次三朗が生きてゆくと決めた裏には
いくつも振り捨てて行かねばならない悲しみがあった。
この子を育ておおすと決めた次三朗が
いつまでも、悲しみにかかわずらっていてはいけない。
「なあ・・・。生きて行くって事はつめてえもんだよ」
平気で己の情さえ断ち切らなきゃならないときもある。
切羽詰ったぎりぎりをわたらなきゃなんないときもある。
でも、そりゃあ、決して無情なんかじゃねえんだよ。
「なぁ。精一杯。生きてゆく事がかみさんにしてやれる尽くしだろ」
わかってんだよ。わかってんだよ。
次三朗さんがつれえのも、そんでも、頑張って生きなきゃって、
力いれようってのも、わかってんだよ。
頭は言いたい事なぞ上手く言えるような性質じゃない。
口下手で、お世辞にもかわいげのある面相だなんていえない。
みてもだめ。喋るも下手な男の次三朗に向かい合う心の声を
次三朗の方がよくわかった。
「ありがとうございます」
しゃきりと顔を上げた男は片袖でぐいと涙を拭うと坊をだきなおした。
楠を結んだ綱を伸びた背筋に廻すと、
よいとなの声を腹に貯めるように深く息をすった。
「はあああああーーー」
凛と透る声が静かな境内にひびきわたり。
大きく、高らかな節回し一声。
「よいとな」
どう覚えたか腕の赤子は榊を振りながら
「ちょい、ちょい」
と、唱和する。
片腕で軽く引いた綱が張り切ると
楠がするりと水の上の流木とみまがう動きで次三朗の寸分前に泳ぐ。
「あああ」
人足達の驚嘆の声は昨日びくとも動かぬ楠をしっておればこそである。
「よいとな・よいとな」
しゃしゃと榊が振られちょいちょいと声がはずむ。
筋張った腕に絡められた綱で次三朗を締め付けるまいとばかりに
楠は綱の緩みを追う。
軽く引けばその緩みを崩さぬように楠が追う。
「みょうと・・ですよね」
歩み寄ってきた澄明が頭にそっとつぶやいた。
「そうです。是が、最後の夫婦ごと」
頭の声に被さる楠の声が澄明の耳の奥底にとどいた。
―是で、思い、切った―
澄明の胸に楠の昇華の時がきこえ、
穏やかな笑みをうかべた澄明に頭はたずねずにおけなかった。
「なにを・・?」
思いなさる?
澄明の眼差しはまるで、久世観音のように柔らかく、
縋ってゆきたくなる錯覚をわかせる。
「愛しいものです」
思い込めて、命さえすてて、思い一つに生きた楠こそ愛しい。
これは、
人形浄瑠璃文楽や歌舞伎の物語
「蘆屋道満大内鑑」の四段目。「葛の葉子別れの段」から
葛の葉は、狐だったが
楠に換えて、他、妖狐(九尾狐)を挟んでみた。
子供というのは、
他を食ってしまう存在感があるが・・・
解決力?も納得させるものがある。
次は井戸の柊次郎 壱 白蛇抄第8話を掲げる予定です。
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