憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

箱舟   3(№3)

2022-12-17 13:21:06 | 箱舟 第一部

二日の間、彼女に何の異変もなかった。

 

だが、三日めの朝、彼女が発光しだした。

青白い炎、陽炎が、薄く彼女の体が取り巻いていた。

 

私はまだ、ラボに他の人員が着てない時間の彼女の変化を

他の研究員に連絡をいれ、

至急、ラボへの帰還を要請し、

彼女の監視カメラがきちんと画像をとりこんでいるのを確認すると

彼女の部屋に入っていった。
こんな時ほど、厳重なロックシステムが面倒になる。

認識と照合をくぐりぬけ、彼女の傍らに立ってみたものの、

私は、何をなすべきか・・・。

なんの材料も与えられていないままの私は

ただ、彼女の発光をみつめ、その動向を見守るしかなかった。

 

この発光が以前、病院であったように終息していくものだと思いながら

私は、彼女の変化を読み取ろうとしていた。

 

さらに彼女の側に近寄り、ベッドの上の彼女を注視していると

彼女の唇がかすかに動いた・・。

音声にならないなにかを私に伝えようとしている。

私は光る彼女の顔をもっと見つめようと彼女の顔を覗き込んだ。

 

その時だった。

 

閃光が瞬く。

 

私の記憶に残っている彼女の変化はそこまでになった。

 

なにがあったのか、理解できないまま、私の意識は途切れ

私はあろうことか、気を失っていた。

 

その間、一体なにがあり、

一体、どれだけの時間、気を失っていたのか?

 

私が意識を取り戻したのは

呼び出しをかけたスタッフの到着による。

異変を呈した室内の状態と

意識を失ってベッドの側に崩れ落ちた私は見つめたスタッフは

まず、私の安否を確かめると

私を揺り動かした。

 

「大丈夫か?」

かけられた言葉に覚醒した私が見たものはスタッフの困惑の表情だった。

 

「あ・・・」

私は自分の記憶をさらえ直す。

「彼女がまた・・発光・・」

私の言葉が止まった。

私の目の端のベッドの中に彼女の姿がなかった。

 

「あの?」

私の失神の間に彼女をどこか別の場所に移動させたのかと考えなおした。

だが、彼女のためのセッティングルームから

彼女を移動させることがまず妙である。

 

「あ・・彼女は?」

連絡を渡したスタッフの中で彼が一番にこのラボの近くに住んでいる。

その彼が一番に駆けつけたのは間違いがない。

他のスタッフはまだ到着していないと思うが、仮に到着していたとしても、

クリーンルームの中で私が倒れているのをみつけて、

それを後にして、彼女の移動を他のスタッフが行うだろうか?

まず、私を覚醒させてから、事情を聞くだろう?

 

私の考えの通りだった。

「びっくりしたよ。君が倒れてるし・・彼女の姿がないし・・」

彼の言葉に私はもう一度辺りを見回した。

確かに、やはり、彼女がいない。

 

彼の言葉の通りだとするのなら、

彼女は私というパスワードを使わずにこの部屋から出ることが出来ない。

 

「いったい?なにがあったの?」

彼の言葉の裏に、彼女の突然の消滅が語られている。

 

「判らない・・・大きな閃光を見たことまでは覚えてるんだけど・・・」

そのフラッシュにより、意識をうしなったのだろうことだけは

私にも、考え付くことだ。

 

「大丈夫?」

彼はもう一度、私の状態を確認する。

「ええ・・大丈夫」

私のことよりも彼女の消滅はどういうことなんだろう?

「モニター映像をみにいきましょう」

きっと、モニターはあの閃光の後の彼女の消滅?を保存しているはずだ。

 

「たとえば、ワープとか?」

彼の推理の一つを解き明かす鍵もモニターの保存映像の中にあるだろう。

煩雑な認識を潜り抜け、私は彼と二人でクリーンルームをでると

モニター画面の前にたった。

 

保存された画像を巻き戻し、画像を捉えなおすと

丁度、彼女が発光しはじめたあたりを表示した。

そのあたりから、通常に録画を再生しはじめ、

彼と私は画面をにらみつけた。

 

結果だけを言おう。

 

発光する彼女の傍らに私がにじり寄ったその直後に

閃光がモニター画面を、真っ白にしていた。

光のフローオーバーにより、

なにもモニターにとりこむことが出来なかった。

閃光が1分ちかく続き、その後

突如画面が実像を映し出した。

だが、

倒れた私の傍らのベッドの中には

もう、彼女の姿はなかった。



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